「ヤングスキニーはロックだった!」 “バンドが好き”の気持ちに真摯に向き合ったZepp DiverCity公演

ヤングスキニー、Zepp DiverCity公演レポ

 かやゆーがギターを置くと、『不器用な私だから』収録曲「ベランダ」へ。原曲は戦慄かなのをフィーチャリングゲストに迎えたデュエット曲。ハンドマイクを手にしたかやゆーは、それまでの力強いバンドサウンドから一転、打ち込みを取り入れた浮遊感のあるサウンドに身を委ねて自由に歌唱。しかし曲が進むにつれて切なさが加速し、ラストには殺気迫るほど熱を帯びたラップを聴かせた。ドリーミーで繊細なバンドセッションを挟み「コインランドリー」、かやゆーがゆっくりとギターを爪弾いてから始まった「雪月花」と続く。ベランダ、コインランドリーといったワンシチュエーションや“匂い”という1つのテーマだけで恋愛のひと場面を描き切るかやゆーのソングライターとしての才も光る。かやゆーの多彩な声色はもちろん、他メンバーも繊細なアンサンブルでそんな歌詞世界を時に温かく描き出した。

 ここまで様々な恋愛模様を紡いできた彼ら。ここからはパンキッシュな側面が爆発する。かやゆーは「どんなにデカいライブハウスでも、どんなに小さいライブハウスでも、俺がやりたいと思ってることは変わらなくて。ただ身の回りの友達にカッコいいって言ってもらえるような音楽をやりたい、そんな人でありたい。もちろん、こういうデカいところでツアーファイナルを迎えられてたくさんの人が観に来てくれるのはうれしいですけど。あくまで僕が人前に立ってる理由はそれだけです。数少ない友達が、一緒に遊んでくれて、一緒に飲んでくれて、何かを語り合って、そんな何でもない日々を、愛すべき日々を送っていけたらなっていう、そんな小さな夢しか僕はないです」と言い切る。そして、そんな友達のことを歌った「愛すべき日々よ」を、4人はひときわ柔らかな表情で届けた。歌い終えると、かやゆーは「このツアーを回ってきて、いや、このツアーだけじゃない、4年間音楽をやってきてわかったことがある。ヤングスキニーはロックだった!」と噛みしめる。そして〈バンドが好きで/音楽が好きで/あいつが好きで/俺は今日ここで歌ってんだ〉のサビから始まるアレンジで「精神ロック」へ。声を張り上げるかやゆーをはじめ、バンドは熱を帯び全身全霊で同曲をかき鳴らす。曲中には「音楽だけじゃない、あなたたちが生きる上で、お前がやりたいと思ったことに嘘をつくな」とファンへ語りかけた。さらに、勢いそのままに〈僕は僕だ〉〈僕は僕でしかないんだ〉と歌う「らしく」へとつなぐ。まさに“僕は僕だ”と言わんばかりに、しおんは力の限りビートを刻み、ゴンザレスは高らかにギターを奏で、りょうとは骨太なベースを鳴らす。そんな彼らの熱演に呼応するように、フロアからは盛大な〈僕は僕だ〉という歌声が上がった。最後は、生きづらさを抱えながら前を向こうとする気持ちを歌った「憂鬱とバイト」。かやゆー「生きづらいのあんただけじゃないからさ!」と声をかけると、共鳴するように最後のサビでは大合唱が発生。場内は温かな空気に包まれた。

 「最後なんで好きにやっちゃってください」との言葉から始まったアンコールでは、ステージ上のメンバーもやりたい放題。プレイボーイなりの悩みを綴った最新曲「プレイボーイシンドローム」、かやゆーが「あー! うっせー!」と叫んでから始まった「禁断症状」、そして本編でも挿し込まれた「不純愛ラブストーリー」を2回、一気に連投しツアーファイナルの幕を下ろした。

 思えばヤングスキニーはSNSで“バンドがしたい”という気持ちで集まった4人で組んだバンド。バンドがしたい、人前で音を鳴らしたい、仲間に「カッコいい」と思われるような人でありたい。そんな自身の気持ちに真摯に、嘘をつかずに、この日もステージに立っていた。この日のライブを反芻して思う、ヤングスキニーはロックだった。

■セットリスト
1.ヒモと愛
2.ゴミ人間、俺
3.愛の乾燥機
4.本当はね、
5.美談
6.ワンナイト
7.愛鍵
8.8月の夜
9.不純愛ラブストーリー
10.ベランダ feat. 戦慄かなの
11.コインランドリー
12雪月花
13.愛すべき日々よ
14.精神ロック
15.らしく
16.憂鬱とバイト
En.1 プレイボーイシンドローム
En.2 禁断症状
En.3 不純愛ラブストーリー
En.4 不純愛ラブストーリー

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