UA、10年越しの結実『NEWME』が映す現在地 坂本龍一から託された光、息子・村上虹郎らと交わした魂の記録

“UA”という人の今の姿と日常、さらには彼女の生き方、そして人生までが見える。ニューアルバム『NEWME』は、そんな作品だ。
フルアルバムとしては10年ぶりとなった本作では、この期間におけるUAのあらゆる要素が凝縮され、昇華されている。音楽面では荒木正比呂や西田修大といった才能を迎えることで、先鋭的でありながらもオープンなポップネス、あるいはフレンドリーさや親密感をたたえた楽曲が揃っている。特に2020年代に入ってからは、ポップ路線の再志向や、浅井健一とのAJICOでの活動もあった彼女だが、この『NEWME』には、そうした動きのすべてを集約しながら、さらなる高みに持っていったようなインパクトがある。
楽曲に花を添える客演者たちも魅力的で、シンガーソングライターの藤原さくら、気鋭のラッパーのMFS、それに俳優の村上虹郎といった面々がフィーチャーされている。特に今回のインタビューでは、UA自身の実の長男である村上に対する愛情と優しさにあふれた視線が語られる流れが非常に感動的だ。そしてアルバムを締めくくる「Twilight Before Sunrise」は、生前の坂本龍一がUAに贈っていた曲。表現者としてのふたりがお互いの深いところで交わり合いながら、美しい結晶を見せている。
今日この日を大切に、ポジティヴに生きること。常に愛をもって考え、行動すること。そうしたUAの生きる姿勢と人生観、さらに死生観は、インタビューの終盤で大いに語られている。その話の間に流れていた空気感は、このアルバムに息づく感覚と、ナチュラルに通底していた。(青木優)
“秒でNEWME”が意味する、二度とない今日を慈しむ新鮮な目線
――このアルバムは、現在のUAさんがとてもよく表されている作品だと感じました。
UA:ありがとう。それは私の心象風景が、ということでしょうか。
――はい。心象風景だったり、今のあなたの感覚や価値観が出ていると思います。そこに愛や希望も込められているのも素敵だと思いました。
UA:ありがとうございます! いい意味で年を重ねてきておりますから、やはり作品はポジティヴなものを、と思っております。表現者の皆さんはそうであると思いますけど、私ももれなく、そうですね。
――そう、このアルバムはポジティヴィティに貫かれていて。聴いていて、静かなあたたかさをずっと感じるんですよ。
UA:おおー! 今、全身に鳥肌が立ちました。そのひとことで「作った意味があったな」と思うぐらい、嬉しい。ありがとうございます。
――さて、アルバムタイトルの『NEWME』ですが、同じ名前の曲が1曲目にありますね。まずはこのタイトルに込めた思いを教えてください。
UA:タイトルは後付けですね。歌詞をフラットな気持ちで書き始めた時に、このサビのところで〈秒でNEWME〉と入れたのがキャッチーで、すごく面白くなっちゃって。“NEW”と“ME”をくっつけて造語にしたのも自分には新鮮に感じられたので、そのままアルバムのタイトルになりました。ただ、これは「新しい私、まっさらに生まれ変わる私」という意味ではなくて。私自身がそこに込めたのは「今日という日は二度とない日である」ということを意識的に思い出せるような意味合いでした。「Happy」にも書いたように、たとえば朝いただく梅干しのひと粒は、昨日食べたものとは確実に違う梅干しなんだと、その味わいに気づけるような、ね。そういう新鮮な目線を持てる私、という意味合いの「NEWME」です。
――感覚的にですが、理解できます。アルバムの全体像のイメージやテーマは何かありました?
UA:実を言うと前回の『Are U Romantic?』(2022年)を作っている段階でできていた曲も2、3あったぐらいで、このアルバムの制作期間は長いんですね。最初に荒木正比呂くんからデモテープをいただいたのが2020年で、そのデモテープの感触から構想が生まれています。手掛かりとしては、音の断片を100曲ほど聴かせていただいたことから、次第に見えていった感じです。ただ、この5年のうちに、リリックの部分では自分のテーマの変化もありましたし、個人的にも、人生における意識として成長した部分があったと感じています。
――なるほど。荒木さんとの制作の初期段階からの曲もあるんですね。
UA:最初に「Mood」が、現状とは異なるアレンジで作ってあって。それから「ALK」を手掛けましたが、当初はもっとアブストラクトで実験的でしたが、結果アレンジメントはものすごく発展しました。その次が「Happy」であったり、「ZOMBIE」であったり。主にはPOP回帰をテーマにしたものから取り組みました。レコーディングは2回に分けてるんですけど、今話した曲はその前期に録りましたね。
――100曲ほどの楽曲の断片から「これは面白いから曲にしよう」みたいな感じで進むわけですか?
UA:そうです。私のほうで「これがいい」と選ばせてもらう形ですね。荒木くんとの信頼関係は、一緒に音楽体験をしていく中で積もってきて、そこで音楽性もグッと成長していきました。あと、西田修大くんというギタリストの存在も不可欠で。今のバンマスでもあるんですけど、彼とも常に相談しながら進めることも多いんです。
――荒木さんと西田さんがサウンド面で大事な役割を果たしていると感じます。
UA:ふたりは30代と40代で、私より若いんですよ。荒木くんは自分のバンドでシンセサイザーを担当してるプレイヤーですが、彼は自分のことを“サウンドアーティスト”と自称していて、いわゆるミュージシャンとは異質であるというか。俗に言うとエレクトロニカになるんだけど、非常に個性的な音を出してくれます。田舎に暮らしながら仕事をしているスタンスにもシンパシーがあるし。で、西田くんは、第一線のJ-POPからインプロビゼーション界まで通過していて、私の前のバンマスで、たくさんの楽曲提供をしてくれた内橋和久さんのことも尊敬しているという、すごく活動の幅が広いバイタリティのある音楽家です。ふたりとも、私の言葉を実にすごくセンスよく拾ってくれる。だから私は楽なんですね。でも、5年という研究時間があったからこそ、この『NEWME』に至れたと思います。
――今作はフィーチャリングなどのコラボレーションが多いですよね。それは制作過程で「この人と一緒にやってみよう」という発想が出てきたということでしょうか?
UA:はい、そうですね。コラボレーションすること自体が先にあったわけではなくて、まずは楽曲ありきです。たとえば「ZOMBIE」だったら「ここに男性の声が入るといいよね」とひらめいたり、ラップにチャレンジしてみたい時に「WAKEUP」のデモがきて、「遊んでみるか!」となったり、ですね。



















