ヤングスキニー、一人ひとりに届けた真っすぐで切実な歌 ハイライトの連続で飛躍を確信させたツアーファイナル

ヤングスキニー、真っすぐで切実な歌

 4月27日、ヤングスキニーの全国ツアー『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていたワンマンツアー』の最終公演が、恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。LIQUIDROOMは、彼らがワンマンを行うライブハウスとしては最大規模の会場であったが、このツアーでは、今回のツアーファイナルを含む全ての公演がソールドアウトとなった。本稿では、残念ながらツアーに参加できなかった方のためにも、できる限り詳細にツアーファイナル公演の模様を振り返っていきたい。

 ライブの口火を切ったのは、爽快なロックンロールナンバー「ロードスタームービー」だ。かやゆー(Gt/Vo)の弾き語りパート後、さっそくフロアから「ワン、ツー!」という大きなカウントがステージに向けて届けられた。その後も観客たちは、盛大なハンドクラップを打ち鳴らしたり、高く拳を挙げたりしながら、今回のライブにおける熾烈なオープニングをメンバーと共に彩っていく。「8月の夜」では、かやゆーが「行けるか、東京!」「ねえ、どうなの?」と熱くフロアを煽り、観客も負けじと、メンバーの熱烈な歌と演奏に懸命に応えていく。続けて披露された「愛鍵」を含め、ライブ序盤から、まるでステージとフロアの境界線が溶け出していくような怒涛のコミュニケーションが展開されていく。圧巻だ。

かやゆー

 今回のツアーは、3月にリリースされたばかりのメジャー1stアルバム『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』の楽曲を軸に据えたもので、それはこのツアーファイナルにおいても同様であった。「ツアー9カ所の、ではなく、これまでの全ての集大成を見せられたらなと思います」というかやゆーの力強い宣言の後は、サポートメンバー・中野郁哉(Key)を迎えた特別編成で代表曲「本当はね、」をはじめとしたアルバム曲を次々と披露していく。

ゴンザレス

 「ヒモと愛」では、オリジナルの歌詞をアレンジして「もっともっとデカいところで歌えるように!」と未来への意志を高らかに伝え、「ゴミ人間、俺」では、サビ前でそっと「愛してる」と囁く。心の奥深くにそっと沁み渡るようなキーボードの音色に導かれて始まった「コインランドリー」では、かやゆーがハンドマイクで繊細さと温かさをたたえた歌声を優しく届ける。また、“美化されてしまう過去の歌”として紹介された「美談」も名演であった。本来、全く同じ過去を共有する人なんて自分以外にはいるはずもないが、この曲を介することで、過去を巡る切なさや悲哀を会場全体で分かち合うことができたような気持ちになる。それはまさにライブの魔法であり、パーソナルな心象風景を描いているはずのヤングスキニーの楽曲が秘める深い普遍性には、改めて驚かされるばかりだ。

しおん

 ライブ後半も、ハイライトの連続と呼ぶべき展開が続いていく。かやゆーがアコースティックギターに持ち替えて「僕なりの最大限の愛情の裏返し」を不器用ながらにまっすぐに伝えた「好きじゃないよ」。〈君に依存していたわけではない〉という本来の歌詞を「〜わけじゃない!」と替えて叫ぶことで昂る感情をありのまま伝えた「また冬が終わって」。また、「僕が変わってしまった。この街の歌を」と紹介された「東京」では、いくつかバラードが続いた直近の展開を切り替えるように、ゴンザレス(Gt)とりょうと(Ba)がしおん(Dr)のドラムセットの前に集い、息を合わせて渾身のバンドサウンドを轟かせ、来たるクライマックスへ向けて演奏のギアを一気に高めていく。この曲で、かやゆーは、本来の歌詞にはない「変わりたくて変わったんじゃない、でも全部自分のせいだって分かってる!」と痛切な想いをシャウトした。その言葉は、上京してきた者が胸の内に抱える葛藤そのものであり、今回の東京公演に参加した観客の中には、まさに当事者としてかやゆーのシャウトが突き刺さった人もきっと多かったのではないだろうか。

りょうと

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