YUTORI-SEDAIは“夢のつづき”へ向かって進み続ける 満員の渋谷WWWワンマンで伝えたメッセージ

YUTORI-SEDAI、満員の渋谷WWWワンマンレポ

 3月23日、渋谷WWWにて3ピースバンド・YUTORI-SEDAIがワンマンライブ『2nd one man live 夢のつづき』を開催した。この日のチケットは即日完売したという。先に書いてしまうが、この日、バンドは6月に大阪と名古屋で初のワンマンを開催することを発表し、また11月には東京にてさらに会場規模を拡大し、渋谷・Spotify O-WESTでワンマンライブを開催することも発表した。そしてそして、なんとこの日は新曲を4曲(!)も披露したのだ。ズンズンと前に進んでいく。溢れるものを抑えない。そうやって今まさに勢いに乗るバンドのリアルな姿を目撃し、その音を浴びようと、会場には若い観客たちがたくさん集まっているようだった。きっとここに集まった多くの人が、今しか感じられないことを、感じたいと思っていた。

YUTORI-SEDAI(撮影=堤 瑛史)

 入場SEに合わせて会場から手拍子が溢れ、金原遼希(きんぱらはるき/Vo/Gt)、上原しゅん(うえはらしゅん/Ba)、櫻井直道(さくらいなおみち/Dr)の3人がステージに登場すると、ライブの1曲目を飾ったのは「23×3」。YUTORI-SEDAIが現メンバーとなり本格始動した2020年にリリースされたEPのタイトルトラックである。ゆるやかなメロディと歌声は、曲が進むにつれていつしか熱を帯び疾走する。この曲は“青春”について歌っている。進んでいく時間を止めることは誰にもできやしないし、失われていくものはあるが、そのうえで、私たちはどうやって青春を生き続けることができるのか?――この曲はノスタルジーではなく、バンドの“人生”の歌でもある。ちなみに、彼らが名乗る印象的なバンド名YUTORI-SEDAIは、“ゆとり世代”のネガティブなイメージをポジティブに変えたいという想いを込めてつけられたという。彼らは世間から貼られたレッテルを反転させ、“自分たちは何者なのか”を表明するための言葉として再定義し、そして、その言葉を自分たちの新しい武器にしようとしているのかもしれない。“この世代だから伝えられることを伝える”という意志も感じる。穏やかな表情を浮かべながらも、内心は熱く、野心を抱いたバンドなのだと思う。

YUTORI-SEDAI 金原遼希(Vo/Gt)
金原遼希(Vo/Gt)

 続く2曲は「ぎゅっとして、」。昨年の夏にリリースされた人気曲でもあり、バンドと観客たちはすでに息がぴったりと合った様子で、あたたかな空気で会場は満たされていく。金原が”スーパーポップソング”と紹介して始まった「足りないくらいがちょうどいい」も軽快に、熱く、会場を盛り上げる。

 最初のMCでは、金原が「今日が楽しみすぎて、いろいろ考えすぎちゃって、寝つきが悪かった」と語る。そして、「みんなも、俺らも、今日はすべてを出し切って、今日はぐっすり眠ろうぜ」と観客たちに語り掛ける。

YUTORI-SEDAI 上原しゅん(Ba)
上原しゅん(Ba)

 前述した「23×3」の歌詞をふと思い返せば、そこには〈今日も眠れないな〉というフレーズがある。“ぐっすり眠りたい”という想いは一見平凡な願いのようで、切実な願いだと思う。眠れずに疲れていく心と体、目まぐるしく頭のなかを駆け巡る不安。そんな現実に対して、YUTORI-SEDAIは“眠りたい”という祈りを歌にも重ねていた。私たちが安心して眠れる世界を求めて、時に優しく、時に熱狂的に、彼らは音を奏でるのだ。

 彼らが昨年開催した初めてのワンマンライブのタイトルは『yume』で、この日のワンマンライブのタイトルは『夢のつづき』。“夢”という言葉には、未来の目標としての意味も、眠りのなかで出会うものとしてのイメージもあるが、どちらにせよ、“夢”を見ることはYUTORI-SEDAIにとって大切なことなのだろう。金原が「3人で夢を叶えるために作った曲」と紹介して始まった曲のタイトルもまた「yume」だった。

YUTORI-SEDAI 櫻井直道(Dr)
櫻井直道(Dr)

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