イコノイジョイは坂道の脅威、YOASOBI『紅白』パフォの重要性……アイドル論客による2023年シーン総括
新しい学校のリーダーズはいい意味で手探り感があるのが面白い
15位 ミームトーキョー「GAV RICH」
宗像:この記事を読んでる人全員に、ファンが韓国のソウルで撮ったライブ映像を観てほしいんですよ。メンバーのSOLIちゃんが韓国在住で、凱旋公演としてソウルでライブをしたんです。一部が撮影可能で、その時の映像がめちゃくちゃ良くて。ミームトーキョーは不思議なグループで、韓国出身メンバーがいるけどK-POPではなく、J-POPなんだけど最新のダンスミュージックをやっていて……というアップデートされた時代との合流点を、この「GAV RICH」で表現できていたのかなと思っています。
18位 新しい学校のリーダーズ「青春を切り裂く波動」
岡島:リーダーズはアイドルなのか、という疑問を持つ人も多い気がしますが、かつては普通にアイドルイベントに出ていたので、『アイドル楽曲大賞』で扱うくらいはよいのではないかと思います。2023年にブレイクして『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で歌った曲は「オトナブルー」ですが、この曲は2020年リリースなので『アイドル楽曲大賞』のルール的には今年のランキングには入っていないんです。新しい学校のリーダーズは衣裳や映像コンテンツなどビジュアル面は“ストレンジ感のある日本的なもの“、”首振りダンス“に象徴されるダンスや振り付けはいい意味で奇怪でインパクトやキャッチーさがある、非常にコンセプチュアルなグループです。
路線としてはPerfumeやBABYMETALといった“コンセプト重視“のグループに連なる存在なんですが、それらのグループと比べて違うのは、音楽性がまだ定まっていないところ。昔の曲と言えど「オトナブルー」でハネたので、普通なら「オトナブルー」的な昭和歌謡感のあるサウンドの新曲を出して行くと思うんですが、現状そうはなっていない。海外のレーベルの88risingと契約した際にラップっぽい曲を出していたり、今回ここで松隈ケンタさんを起用したりと、いい意味で手探り感があるのが面白い。音楽性が固まってきたら、よりキャッチーになり、さらなるブレイクが期待できるかもしれません。
ピロスエ:僕はグループの色と松隈さんの曲が合ってると思ったけどね。ストレートにカッコいいし、上位だったのも納得です。
宗像:例えば、1stアルバム『マエナラワナイ』と2ndアルバム『若気ガイタル』のサウンドプロデュースをしているH ZETT M(H ZETTRIO)さんは、昭和歌謡的なテイストがグループとも合っていて、松隈さんのミクスチャーロックな感じの曲でそことの差別化したというのはあるかなと思いましたね。
20位 AKB48「どうしても君が好きだ」
ガリバー:AKB48は2023年にレーベル移籍があり、グループを卒業する本田仁美さんを送り出すシングルとして原点回帰と呼べるような「どうしても君が好きだ」をリリースした。2024年は(オーディション番組『PRODUCE101 JAPAN THE GIRLS』出身の)ME:Iが正式にデビューする流れがあるわけですけど、結果ドメスティックに立ち返ることがシーンの流れを見ればいいのかもしれないと、僕はポジティブな意味で思っていて。2021年の「根も葉もRumor」のようなダンス路線で突き進むよりも、昔ながらのAKB48でいくというのも、後から振り返った時に良く思えるんじゃないかって。グローバルに目を向けなければいけない、という強迫観念はあまり良くないというのも含めてここで言っておきたいですね。
楽曲の多様化と『紅白』のYOASOBI「アイドル」
ピロスエ:特に20位から11位のエリアは曲のバリエーションが幅広いなと思います。『アイドル楽曲大賞』の投票に関しては、「インディーズの方はいろんな曲があってどれに入れていいのか迷うけど、メジャーの方はよく知らなくて選ぶのが大変だ」みたいなことを言っている人を一部で見かけるんですけど、今年に関して言えばジャンルが多様化していて、メジャーも面白かった年だったと思います。
ガリバー:2023年の日本のアイドルステージとして最重要パフォーマンスが『紅白歌合戦』のYOASOBI「アイドル」だった。この先振り返っても、日本とK-POPアイドルのシーンとして記念碑的な光景が繰り広げられたし、幾重にも物語が重なった2023年最終日における現状の集大成が見事な形で提示されました。そこに異論の余地はないし、あのステージにリーダーズが出ていないのは大事だなと思っていて。Perfumeはカウントダウンライブの兼ね合いで出られなかった部分もあると思うんですけど、リーダーズはアイドルとしての立ち振る舞いはするけれどそのポジションではないということができる立ち回りの上手さ、ジャンルに囚われずに動けたのは素晴らしいなと思います。
岡島:あの場で「アイドル」を歌っていたYOASOBIがアイドルではないのが一番面白いところかなと思います。アイドル本人が歌わないことで、“アイドル”というカルチャーそのものが表現できている。どこまで考えて作られたものか分からないですが。
宗像:橋本環奈さんがいたRev. from DVL、あるいはあのちゃんがいたゆるめるモ!、つまりは2010年代ですよね。そこからの地下アイドルを含めた日本アイドルの文脈、さらにはK-POPアイドルも含めて、STARTO ENTERTAINMENT所属グループが出演しなかった世界線の中で全てがYOASOBIの「アイドル」に吸収されていて、まさに“俺たちの2010年代はYOASOBIの「アイドル」に吸収されていくためにあった”というような錯覚をあの時に覚えて。最後の最後でYOASOBIが全てを持っていくという、すごい展開だなと思いましたね。
※1 /www.barks.jp/news/?id=1000233295&page=2
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