ano、『猫吐極楽つあー』Zepp Hanedaで迎えたファイナル ファンとの約束のように響いた歌

ano『猫吐極楽つあー』ファイナルレポ

 2023年12月にリリースされたanoの1stフルアルバム『猫猫吐吐』(ニャンニャンオェー)。2月、今作のリリースツアー『猫吐極楽つあー 〜何&卒よろしゅう〜』 が、東名阪のZeppで開催された。今回は、2月22日にZepp Hanedaで開催されたツアーファイナル公演の模様を振り返っていく。

 はじめに、anoと猫のキャラクター・ニャンオェちゃんが、空港の近くの「ゲロ温泉」につかりながら話すオープニングムービーが映し出される。その後、不穏なSE「猫吐序曲」が流れる中、法被姿のanoが巨大な神輿に担がれながら登場。そして、4人のダンサーと共にオープニングナンバーの「猫吐極楽音頭」を披露し、観客を狂気的なポップの世界へと容赦なく引き込んでいく。フロアから大歓声が巻き起こる中、デスボイスを交えた歌声を通してライブ序盤とは思えない並々ならぬ熱狂を生み出してみせたanoは、法被を脱ぎ捨て、その後も立て続けて「デリート」や「Tell Me Why」をはじめとしたano流ミクスチャーロック&ポップを次々とドロップしていく。anoは「今日は2月22日、ニャンニャンニャンの日でございます」「今日はウキウキです」と語っていたが、実際、彼女の歌声は音源以上の気迫や熱量を感じさせるもので、その爆発的なエネルギーに何度も圧倒された。

 中盤では、ゴムボートに乗り込んだanoが、「運んでください」「まんべんなく頼むぜ!」とフロアに呼びかけ、観客の頭上を移動しながら「イート・スリープ・エスケープ」を歌い上げる一幕も。フロアを一周した後、曲の終わりに合わせて再びステージに戻してくれた観客に「すごいね、みんな、さすがです」と告げたanoは、その後のMCパートで、決して楽しいことばかりではなかったこれまでの歩みを振り返った上で、そうした日々において、音楽やライブに、そして、いつも自分のことを応援してくれているファンの存在に救われている、と胸の内の想いを丁寧に伝えた。「みんながしんどい時、逃げたい時、しっかり立って待っていられるような自分でいたい」。そう力強く語ったanoは、「SWEETSIDE SUICIDE」をアコギを弾きながら歌い届けた。甘く凛としたメロディに乗って響く〈はやく此処にまた帰ってきてよ  ただいま〉〈おかえり〉という歌詞が、先の決意の言葉と重なって深く胸に沁みた。また、時おり声を震わせながら、共に〈正解のない世界〉を生きるファンへ向けて渾身の〈愛〉を届けた「AIDA」も素晴らしい名演だった。

 anoの夢の中を覗き込むようなファンシーなアニメーションを経て、白いドレスに着替えた彼女が再びステージに登場。そして、「東京の皆さん、まだまだ声足りねえぞ!」「まだまだいけるか、おらぁ!」と容赦なくフロアをアジテートしながら「絶対小悪魔コーデ」を披露して、ここからライブは怒涛の後半戦へ突入する。〈となりにいてあげるから  となりで歌ってみせるから〉(「涙くん、今日もおはようっ」)、〈この先に何があってもずっと  守ってあげる〉(「普変」)……そうした深い覚悟を宿した言葉たちが、まるで、目の前のファンとの約束のように響く展開がとても感動的だった。(また、「普変」の〈すぐに一億再生突破〉と歌うパートに、2月14日にオリコン週間ストリーミングランキングで1億回再生を突破したことが発表された「ちゅ、多様性。」の振りを盛り込んでいたシーンも忘れられない)

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