anoの音楽によって心が動く理由 ライブでも貫かれた「僕は僕のままで戦う」という揺るがぬスタンス
10月1日、anoのKT Zepp Yokohama公演が開催された。この日のライブは、夏の1st TOUR『トキメキ偏愛♡復讐ツアー』の追加公演『お手お座りでハイ♡報酬』として行われたもの。追加公演は全2日間で、9月29日にGORILLA HALL OSAKAで行われた大阪公演を含めた両公演がソールドアウトとなったことから、今、彼女が背負う期待の大きさが伝わってくる。この記事では、夏から始まったツアーのフィナーレを飾った横浜公演の模様を振り返っていく。
今回のライブは、猫のキャラクター・ニャンオェちゃんのオープニング映像から幕を開けた。映像が流れた後、先にステージインしていたサポートメンバーが激烈なロックサウンドを打ち鳴らし、それを合図に、anoが「はじめまして、anoです、よろしゅう!」という高らかな挨拶をしながら登場。そのまま、オープニングナンバーの「デリート」へ。anoは、冒頭からいきなりトップギアで全身全霊の歌声を届け、間奏では重厚なシャウトを轟かせてみせる。「ぶち上がっていくぞ!」という熾烈な呼びかけと共に突入した「ンーィテンブセ」では、フロアからライブ序盤とは思えないほど大きなコールが巻き起こった。何より、ラストのサビの〈今生きているこの瞬間 君が君で〉という一節を、一人ひとりの観客、つまり一人ひとりの〈君〉を指差しながら全力で歌い届けていた一幕が忘れられない。
その後も、カラフルなレーザーやカオティックな映像演出と共に「アパシー」「Peek a boo」を歌い届け、この日初めてのMCパートへ。会場に集まった観客に感謝の想いを伝えたanoは、「“テレビで観てるあのちゃんだ”と思う人もいるかもしれないけど、今日は傍観者ではなく参加者として一緒に楽しんでほしい」と語った。その言葉を受けて会場全体の熱気と一体感がさらにグッと高まり、そのまま未リリース曲「swim in 睡眠 Tokyo」へ。切なさが滲むサビのたおやかなメロディが美しく、anoの伸びやかな歌声の魅力が特に際立ったパフォーマンスだった。「AIDA」では、前かがみになりながら切実な歌声を届け、そしてラストのサビ前では、叫びにも似た超ロングトーンを通して昂る感情を爆発させてみせる。彼女自身の魂の震えが伝わってくるような圧巻のパフォーマンスだった。
短いMCを経て、「行けますか!」「声がちっちゃいな!」「行けるか!」と何度も観客を煽った後に、未リリース曲「涙くん、今日もおはようっ」へ。サビでは、anoに合わせて観客が高く上げた手を一斉に左右に振り(グッズの"あのじゃらし"を振る人も多かった)、曲の終盤ではインパクトあるコーラスによってさらなる一体感を生み出していく。今回のライブ前半を締め括ったのは、ライブアンセムと化している直球のギターロックチューン「普変」だ。熱狂した観客が高速で手拍子をしたり、力強く拳を上げたりしながらanoのパフォーマンスに応え、その熱を受けた彼女は、ラストのサビでフロアに身を乗り出し、前列の観客とゼロ距離でコミュニケーションをとってみせた。
一度退場した後、スクリーンにニャンオェちゃんの幕間映像が映し出される。ニャンオェちゃんの「あのちゃんの笑っている顔が見たいオェ」「スマイルちょうだいオェ」というフリを受けて、ライブ後半が「スマイルあげない」から幕を開ける。ステージ中央に設置された巨大なマックの紙袋を破ってanoが再登場して、4人のダンサーと共に歌い踊り、曲のラストではビニールボートに乗って観客の頭上を移動しながらフロアの中央へ。そのままボートに乗って移動しながら、未リリース曲「イート・スリープ・エスケープ」を歌い、その後も立て続けて未リリース曲「コミュ賞センセーション」「Tell Me Why」を披露していく。
「力余すことなく、周りを気にしないで楽しんで」「まだまだ行けるよね!」「盛り上がっていけますか!」と何度も力強く呼びかけた後、ここからライブは怒涛のクライマックスへ突入していく。イントロが鳴った瞬間に大歓声が巻き起こった「絶対小悪魔コーデ」では、間奏で「ご褒美欲しい人は、まだまだ盛り上がっていけるよな?」と煽り、そして観客の渾身の歓声を受けて「よくできましたー!」「ありがとう、みんな最高」と伝える。その勢いのまま、再びダンサーを迎え入れて「ちゅ、多様性。」「F Wonderful World」の二連発へ。anoは、自ら飛び跳ねたり、ターンしたりしながら狂騒的なダンス空間を作りあげ、観客は、拳を上げたり、飛び跳ねたり、ステップを踏んだりしながら、それぞれ自由なスタイルでその空間をめいっぱい謳歌していく。