リアルサウンド連載「From Editors」第47回:『ウルトラマンブレーザー』が描いた争いの無意味さ 劇場版も鑑賞

劇場版『ブレーザー』から“未来”について考える

 こうしたコミュニケーションの大切さは、劇場版『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』にも引き継がれています。仕事熱心だけど家庭をおざなりにしがちな父親と、父に認めてもらいたがっている孤独な息子による、親子物語。藁をも縋る思いで兵器開発(=争い)に加担してしまう父親の過程を、マッドサイエンティスト的にではなく、ありふれた社会人の“やってしまいがちな出来事”として描いているのも、さすが『ブレーザー』だと感じました。

 そんな軋轢を抱えた親子を、息子との向き合い方に悩みながらも乗り越えていった“父親としてのゲント”が救いにいくのは美しかったです。『ワイルド・スピード SKY MISSION』ばりの降下作戦はちょっとうまく行き過ぎですが、SKaRD自体がテレビシリーズでチームワークを高めてきたからこそ、一丸となってミッションを遂行する姿が存分に描かれていたのは素晴らしいと思いました。

【最新予告篇】『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』2024年2月23日(金・祝)全国ロードショー!

 今回の劇場版は良い意味で完結感がなく、シリーズ全体としても多くの余白が残されていることから、『ブレーザー』のシーズン2を熱望しています。「今は私たち人類も、未来が見たい」という台詞には、ルールやしがらみに縛られている現代人だって、幸せな未来を信じたいんだという強固な意志が宿っています。だからこそ、SKaRDとブレーザーがこの先どんな未来を築いていくのか、もっともっと観てみたいのです。

 最後に、その“未来”についてもう少しだけ考えました。なぜ人類は過ちを繰り返してはいけないのか。1つ言えるのは、過去(歴史上)に起きた様々な出来事が複雑に絡まり合って、今の我々の生活を左右していることを知っているから。同様に、今の我々の決断が(自分自身も含めた)未来の人々の生活を大きく左右してしまうから。例えば、パレスチナ問題は長い歴史の積み重ねの上で起きたことゆえ、一朝一夕で解決するのは困難でしょう。でも、現状を知り、考え、少しでも“未来”の人のために決断することが、今の生活をよくする最良の手段かもしれない。過ちに気づいたなら、向き合い、やり直していくことで、拓けていく未来はきっとあるはずだーー劇場版『ブレーザー』のラスト、半壊した国会議事堂を見てそんなことを感じました。

※1:https://imagination.m-78.jp/contents/d2ViL1lvbWlfMDE0MTQ%3D

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