“BiSH以降のWACK”はロックからダンスミュージックへ? ExWHYZを起点に考えるサウンドの変化

 2019年6月から始動した第3期BiSは、現在6人で活動中。今年7月にリリースしたシングル曲「イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム」でプロデューサーに中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES/THE SPELLBOUND)、作詞作曲にTHE SPELLBOUNDを迎えている。彼女らはここで、ロックを引き継ぎながら、サウンドとしての「ダンス」を取り入れた。その後11月にリリースされた「LAZY DANCE」でも、その名が示す通りダンスビート(バンドにおける4つ打ち)が採用されている。この楽曲の作詞・作曲およびプロデューサーとして、フルカワユタカ (DOPING PANDA)が起用された。

「LAZY DANCE」/ BiS 新生アイドル研究会【Hypers kids africaコラボMV】

 「WACK史上1番アイドルらしいアイドル」とも呼ばれるKiSS KiSSは、2023年3月の『WACK合同オーディション』最終日に結成がアナウンスされた。GANG PARADEとしても活動するメンバー6人で構成。東京のクラブシーンでも活躍するトラックメイカー・Yohji Igarashiを迎え、電気グルーヴを彷彿するアシッドハウスチューン「KiSS KiSS KiSS」を生み出している。

KiSS KiSS「KiSS KiSS KiSS」MUSiC ViDEO

 そして13人という大所帯グループ・GANG PARADEが10月にリリースした『The Night Park E.P.』も見逃せない。KOTONOHOUSE、Aiobahn、Misumi(DUSTCELL)などが起用され、ここではインターネット以降のダンスミュージックからのアイデアが見られる。KOTONOHOUSE作編曲の「Träumerei」はポーター・ロビンソンの影がリファレンスとして垣間見え、Aiobahnによる「ソムニウム」ではCAPSULE以降の国産エレクトロがサウンドの奥にあるように思われる。

 このEPでは、ExWHYZとは異なる進化を辿った“ダンスミュージック”が鳴っている。Shinichi Osawaやyahyelは度々UKサウンドからの影響を明言し、SeihoはLow End Theory周辺のLAビートシーンと重要な関係を築いている。すなわち、彼らの音楽的なルーツや重要なモチーフは、往々にして海の向こうにあった。

 対して『The Night Park E.P.』で起用された面々は、ドメスティックなボーカロイド~現行バーチャルシーンで活躍するプロデューサーである。

GANG PARADE「Träumerei」Music Video

 つまり、現在のWACKは「内」と「外」、包括的にダンスミュージックへフォーカスしていると言える。それらがほぼ同時多発的に起きていることから、そこに事務所の方針を感じとることもできよう。

 このほかにもWACKには冒頭で触れた豆柴の大群、都内某所に加えて、二度目の日比谷野外音楽堂公演を控える7人組・ASP、“第2のBiSH”を生み出すオーディション『BiSH THE NEXT』から誕生した男女6人組のBiTE A SHOCKなどがいる。個人的にはBiSH以降、ExWHYZ以外のグループに具体的な音楽性を見出せなかった印象があったが、それは今まさに彼女たちが「練り上げている最中」だからかもしれない。そう考えると、今回触れたサウンドの傾向はまだ入口に過ぎない状態だが、今後のWACKはすこぶる面白そうだ。

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