DUSTCELLがステージ上で晒すリアルな生き様 ユニット史上最大規模ワンマンを観て
12月7日、東京・豊洲PITにて、DUSTCELLのワンマンライブ『DAWN』が行われた。所属レーベルである〈KAMITSUBAKI STUDIO〉が今年3月に開催した 『KAMITSUBAKI FES ’23』の会場も同じく豊洲PITだったが、今回はワンマン。ユニット史上最大規模のライブが、およそ3000人が詰めかけた箱で行われた。
ライブのタイトルからして示唆的である。「DAWN(夜明け)」と名付けても良さそうなタイミングは、これまでにもいくつか見られた。たとえば、2022年4月に初の東名阪Zeppツアー『百鬼夜行』を開催したときは、明らかにユニットの規模が一回り大きくなったと感じられたし、あまつさえ全会場でチケットがソールドアウトした。ドラマのタイアップにもDUSTCELLの楽曲は使われ、近年では広い範囲にその影響が波及しているように思われる。
ところが、同年11月にTOKYO DOME CITY HALLにて行われたワンマンライブでようやく「PREPARATION(準備)」というフレーズが採用された。3000人集めてやっと「夜明け」に辿り着く道のりには、DUSETCELLらしいドラマ性が感じられる。折に触れて「自己肯定感の低さ」を自認する2人組は、ゆっくりと歩みを進めているようだ。
EMAとMisumi、そしてバンドのメンバーが織り成すサウンドスケープは、起伏が極めて激しい。ボカロPとしての出自があるMisumiが書く楽曲は、その多くが複雑で非予定調和な構造を持つ。「CULT」のキックから始まった今回のライブは、「アネモネ」、「PAIN」と来て新曲の「FRAGILE」を挟み、「漂泊者」へと紡がれた。ここまで5曲だが、その内容の豊かさは曲数で測ることはできないだろう。ハウスやロック、さらにはトラップと、1曲の中で何度も異なる音楽ジャンルの展開がある。たとえるならば、DJのオールジャンルミックスが5曲分続くようなニュアンスだろうか。
それに対し、バンドのメンバーはもちろん、ライティングなどのステージ演出、さらにはオーディエンスも圧倒的な熱量で応えてみせる。これまでもDUSTCELLのライブではペンライトが用いられてきたが、それは豊洲PITのような規模でも変わらず、むしろよりスケールが大きくなった分だけ客席はスペクタクルに見えた。DUSTCELLのライブにおける双方向性の高さは、KAMITSUBAKI STUDIOの中でも指折りだと感じる。そしてEMAも、そこに対して自覚的なのではないだろうか。この日のMCで、彼女は「今日と同じライブは二度とない」と強調していた。それはつまり、全く同じ状況で再現できないことを意味する。仮に同じ会場でライブを行うとしても、恐らくセットリストは違うだろうし、使用機材が変わっているかもしれない。我々オーディエンスの見る位置も異なる可能性もあるだろう。多くの「個」が集まって作り出すライブには、再現性がないのである。彼女の言葉からは、そういった刹那に対する思いの強さが感じ取れた。