DUSTCELLがステージ上で晒すリアルな生き様 ユニット史上最大規模ワンマンを観て

DUSTCELL、最大規模ワンマンを観て

 DUSTCELLが初めてバンドセットでライブを行ったのは、先述の「PREPARATION」だ。あれからいくつか場数を踏み、ライブバンドとしての経験を積んできた。世の中の状況も大きく変わり、当時との最大の違いは声出しが解禁されたことである。「火焔」は先のTOKYO DOME CITY HALLでも披露されたが、コール&レスポンスの類は禁止されていた。その意味では、今回のライブによって「火焔」はリリースから2年以上経って完全体になれたような気がする。筆者はTOKYO DOME CITY HALLの現場にもいたが、やはり今回は別格の楽しさがあった。

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 なお、個人的に同じ感動があったのは「独白」である。『ROUND TRIP』のツアーには日程が合わず参加を断念したので、この曲についても声出し解禁以降初めて聴く。内省と激情の両方を感じられるこの曲は、オーディエンスの心象にも大きな影響がある(と個人的には思っている)。声出しはすなわち、こちら側からステージ上に干渉できる機会ができるということだ。リスナー側の考えていることがより鮮明になるというか、EMAの叫ぶような歌声に触発されたオーディエンスが、どうにかしてその思いを伝えようとする姿がより鮮明になる。涙声でステージに向かって何かを叫ぶ彼ら/彼女らもまた、この日のライブを作った重要な「個」だと感じた。「独白」の次に「命の行方」が演奏されたものだから、よりその感覚が促進されてしまった。

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 MisumiもEMAも現行ヒップホップ、たとえばKOHHやAwichからの影響をインタビューなどで明言しているが、ラップの方向性としては志人(降神)にも近いのではないかと思う。トラップ以降の三連符だけでなく、ポエトリーなフロー、ある局地的な焦点からスケールを拡大してゆく様は稀代のリリシストに通ずるものがある。

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 この日は初披露された新曲も多く、全3曲が新たにDUSTCELLのディスコグラフィーに加わった。本編の最後で演奏された「優しい人でありたい」もそのひとつだ。EMAによると、「Misumiからデモを受け取った段階で泣きそうだった」という。彼女の現在の価値観をそのまま歌にしたような、切実な内容の楽曲だ。とりわけ、「名前もまだないけれど、聞かせたい歌がたくさんある」というフレーズが頭から離れない。というのも、ここにDUSTCELLをDUSTCELLたらしめるものがある気がするのだ。

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 「独白」の歌詞を思い出してほしい。そこでEMAは、「紙もペンももはやいらない この詩は溝に捨ててくれ」と言っているのである。「優しい人でありたい」では、それと180度反対のことが歌われているのだ。この矛盾こそがDUSTCELL的であると感じる。「人前に出るのが苦手」と言いながらも3000人の前でパフォーマンスを見せ、「本当は裏ではめっちゃ泣いている」と明かしながらもステージ上で笑ってみせる。

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 弱さを含めた生き様を晒すEMAとMisumiに、同じく「自己肯定感の低い」我々は救われ、「不完全な人生」をどうにか生きられるのだ。本編が幕を閉じ、およそ5分間にわたってアンコールが鳴り響いた豊洲PITは、さながら2人の独白と優しさに突き動かされているようだった。

 すべての締めくくりに演奏された「フラッシュバック」と「STIGMA」は、DUSTCELLから贈られたささやかなエールのように感じられる。その控えめな優しさが、たとえようもなく有難かった。

■セットリスト
『DUSTCELL LIVE 2023「DAWN」』2023年12月7日 豊洲PIT
01. CULT
02. アネモネ
03. PAIN
04. FRAGILE
05. 漂泊者
06. Void
07. Caffeine
08. izqnqi
09. albino
10. SOPPY
11. 可笑しな生き物
12. 火焔
13. DOMINATION
14. DERO
15. Mad Hatter
16. ORIGINAL
17. 独白
18. 命の行方
19. 過去の蜃気楼
20. ONE
21. 優しい人でありたい
<アンコール>
22. フラッシュバック
23. STIGMA

■リリース情報
DUSTCELL
Blu-ray「DUSTCELL LIVE 2023 -DAWN-」
2024年3月27日(水)発売
5,800+税 / XNTH-00002
ANRCHIC RECORD

1.CULT
2.アネモネ
3.PAIN
4.FRAGILE
5.漂泊者
6.Void
7.Caffeine
8.izqnqi
9.albino
10.SOPPY
11.可笑しな生き物
12.火焔
13.DOMINATION
14.DERO
15.Mad Hatter
16.ORIGINAL
17.独白
18.命の行方
19.過去の蜃気楼
20.ONE
21.優しい人でありたい
22.フラッシュバック
23.STIGMA

【特典映像】リハーサル、当日の舞台裏を収録したドキュメント映像も収録。

【ショップ限定特典】
Amazon: ビジュアルシート
FINDME STORE by THINKR: ステッカーシート

販売ショップ一覧: https://anarchic-record.lnk.to/DUSTCELL_LIVE_2023_-DAWN-

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