つばきファクトリーが示す“ベリキュー”という原点 可憐さと儚さ担った山岸理子・岸本ゆめの卒業公演


その後、短めのMCを挟み、「弱さじゃないよ、恋は」、「低温火傷」といった、以前からグループの強みとしていた“儚さ”にフォーカスした楽曲が続く。近年ではファンにエネルギーを与えるようなパワフルな楽曲が増えてきたつばきファクトリーだが、聴く人に寄り添うような切なさや哀愁は独特の味で、この世界観を魅せる表現力はほかのグループにはない個性だ。「可能性のコンチェルト」で本パートを静かに締め、メンバーが山岸、岸本を送り出すためのホームパーティのような映像が映し出される。


再びメンバーがステージに登場。「足りないもの埋めてゆく旅」のイントロではメンバー一人ひとりが山岸と岸本に一言メッセージを送り、「りこ、ゆめ、大好きー!」と駆け寄る姿からは全員が二人を心の底から慕い、卒業を惜しむ気持ちが伝わってくる。一気に卒業を実感しどこか寂しい気持ちで楽曲を終えると、続けて「アドレナリン・ダメ」「断捨ISM」と武道館の卒業ムードを吹き飛ばすようなテンションの高い楽曲を披露する。特に「アドレナリン・ダメ」での後輩メンバーのリトルキャメリアン(河西、八木、福田、豫風)が〈私の人生 私が面倒みるんだ〉と歌い継ぐパートは、リリース時からこのパート割で何度も披露されてきたものの、この日は特に、4人も先頭に立ってグループを引っ張るというような気概が感じられた。新曲「アタシリズム」も含め観客と一体になって作り上げられた公演の本編最後を飾るのは、メジャーデビュー楽曲「初恋サンライズ」。モニターにはMVにもあったような日の出の映像が映し出され、明日から始まる二人の新しい人生と、グループのこれからが明るいものであることを予感させた。

止まらない「りこちゃん!」「ゆめの!」のコールに応じるように出てきたのは黒いパンツドレスの岸本。いつもファンを笑わせてきた岸本らしく、ハンドマイクで客席に向かってこれまでのアイドルとしての日々を振り返り、ファンへの感謝を伝える。「出会ってくれた人への愛と感謝の気持ちは、私らしく歌に乗せて伝えるので受け取ってください」という言葉とともに披露されたのはBerryz工房の「BE」。どんな時も共にいると歌うこの楽曲は、卒業した後もつばきファクトリーを彩った岸本の歌声はこれからもずっとファンの心に残り続け、感動を与え続けるだろう、としみじみと感じさせる。

岸本と対照的な白いドレスで登場した山岸は、Berryz工房と°C-uteも参加しているハロー!プロジェクトモベキマスの「かっちょ良い歌」を一人で歌うと、センターマイクでメンバーに宛てた手紙を読む。手紙では昔から引っ込み思案で、自分はグループで一番リーダーに向いていないと思っていたと綴っていたが、メンバーそれぞれへの丁寧な感謝とエールが書かれた手紙の朗読を聞いていると、強いリーダーシップで引っ張るというより、メンバー一人ひとりの理解者であろうとしていた、彼女なりのリーダー像を感じさせられる。

メンバー全員がステージに登壇し、「愛は今、愛を求めてる」で武道館を明るくハートフルな雰囲気に包み、MCではそれぞれがこの日の感想を話した。本公演最後に「勇気 It’s my Life!」で本当に明るく幕を閉じた。
かっこいい雰囲気と歌唱でグループの楽曲を彩った岸本と、可愛らしい雰囲気とダンスでグループをまとめていた山岸。一見正反対の二人だが、そんな彼女たちの根本にあるのはBerryz工房と°C-uteの存在、そしてハロー!プロジェクトへの大きな愛だ。二人の卒業でグループはメジャーデビュー時のメンバーと2021年加入メンバーの人数がほぼ同じになり、デビュー当初とは大きく異なる編成となる。そのタイミングでBerryz工房から“ファクトリー”を継承したグループであることを改めて示す、原点回帰のような公演となったことは、新生つばきファクトリーに大きな意味を与えるだろう。

























