つばきファクトリー「アドレナリン・ダメ」が首位獲得、強力なトップ3が揃い踏み 2022年度ハロプロ楽曲大賞を振り返る
ハロプロを愛する者たちの間で毎年恒例のファンイベントとなっているのが「ハロプロ楽曲大賞」。インターネット上で投票を募り、1年間に発表された楽曲に順位を付けてみんなで楽しく盛り上がろうという趣旨の催しである。昨年末も「第21回ハロプロ楽曲大賞'22」と銘打って開催され、大きな盛り上がりを見せた。
(総順位などの結果は公式サイトをご覧ください→http://www.esrp2.jp/hpma/2022/)
リアルサウンドには毎回順位に関する分析記事を寄稿しているが、今回もまた2022年版記事をここにお送りする。それでは早速順位を振り返っていこう。
(以下の論考は、下記URLのランキングと併せてお読みください→http://www.esrp2.jp/hpma/2022/comment/result/song.html)
楽曲部門1位:つばきファクトリー「アドレナリン・ダメ」
2022年のハロプロ楽曲大賞は、つばきファクトリーのシングル曲「アドレナリン・ダメ」が制した。
つばきファクトリーは、過去のハロプロ楽曲大賞でも高評価を得てはいたが、1位を獲ったことはこれまでなく、2位に留まるというケースが多かった。過去に2位を獲得した楽曲は2017年の「初恋サンライズ」(1位はモーニング娘。'17「ジェラシー ジェラシー」)、2018年の「今夜だけ浮かれたかった」(1位はアンジュルム「46億年LOVE」)、2021年の「涙のヒロイン降板劇」(1位はアンジュルム「愛されルート A or B?」)。
そんなシルバーコレクターに甘んじていたつばきだが、ついに今回は1位に輝いた。本作を含む、6月にリリースされたトリプルA面シングル『アドレナリン・ダメ/弱さじゃないよ、恋は/アイドル天職音頭』は、オリコン週間シングルランキングおよびBillboard JAPAN週間シングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”にていずれも1位になっており、こちらもグループにとって初の記録だった。
「アドレナリン・ダメ」の制作に携わったのは、作詞 児玉雨子、作曲 中島卓偉、編曲 炭竃智弘という3人。このトリオは、つばきでは他にも「今夜だけ浮かれたかった」(2018年シングル曲)、「三回目のデート神話」(2019年シングル曲)、「マサユメ」(2021年アルバム曲)を担当しており、楽曲大賞の順位ではそれぞれ2位・17位・14位をマークしていて、良曲請負人だというのがわかる。
アドレナリンとは、人間が興奮すると分泌されるホルモンの一種だが、この曲のサウンドは中島卓偉の得意とするファンキーでアグレッシブな曲調、まさに聴いているとアドレナリンがたくさん出そう。しかしそこに、「そんなアドレナリン任せで誤魔化すような恋愛はダメなんじゃね?」という意味合いの児玉雨子の歌詞が組み合わさっているという、その構造がまず面白い。そういった主題を〈アドレナリン・ダメ〉というワンフレーズに集約させるキャッチーさが光っている。他にも〈乾燥肌恋愛 潤うわけない〉や〈私の人生 私が面倒見るんだ〉など、リスナーの共感を得そうな冴えたフレーズが随所に見られる。
そんなポップネスあふれる楽曲を歌い踊ることで表現するつばきファクトリーは、2021年夏に加入した新メンバー4人が成長を見せていることもあり、現在の12人体制が充実したものであることを感じさせる。また、YouTubeで公開されているMVは、283万再生(1月6日現在)という高い数値を記録している。それはMVの内容の良さもさることながら、エースメンバー 浅倉樹々の一瞬を捉えたサムネイル画像のかっこよさも寄与しているのではないだろうか。今後のつばきファクトリーの代表曲のひとつになるのは間違いない、まさに2022年を象徴する文句なしの楽曲大賞だ。
楽曲部門2~3位:BEYOOOOONDS「英雄~笑って!ショパン先輩~」/アンジュルム「愛すべきべき Human Life」
2位は、BEYOOOOONDSのシングル曲「英雄~笑って!ショパン先輩~」。この曲はクラシックの作曲家であるフレデリック・ショパンの「英雄ポロネーズ」や「ノクターン」といった楽曲をサンプリングして、新たなアイドルソングに構成し直すという手の込んだ一曲。作詞は星部ショウ、編曲は加藤裕介・星部ショウが共同で、作曲はFREDERIC FRANCOIS CHOPINと、ショパンの名前がクレジットされている。
クラシックをポップスに転化させる「クラシカル・クロスオーバー」というジャンルは以前からあり、ハロプロ楽曲でも、ヴィヴァルディの「四季」を用いた月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。)「ラブチク」(2008年アルバム曲)などいくつかあるが、ここまで完成度が高いのは本作が初だろう。小林萌花のピアノ、清野桃々姫のヒューマンビートボックスといったメンバーの特技を組み込みつつ、仕上がりは感動的なものとなっている。
3位は、アンジュルムのシングル曲「愛すべきべき Human Life」。アンジュルムファンを公言する堂島孝平が作詞・作曲を担当したナンバーで、スカビートを用いた楽しくも暖かいサウンドが特徴。〈And you?〉を「アンジュ」と読ませる歌詞で、これをメンバーが連呼することで、とんでもない幸福感が発生している。最近のコンサートでもラストで披露されることが多く、アンジュルムの新たな代表曲のひとつと言っていいだろう。