生田絵梨花、挑戦を重ねることで開いた新しい扉 ファンと心の距離を確かめ合った初の全国ツアーファイナル

生田絵梨花、全国ツアーファイナルレポ

 この日のライブを振り返る上で欠かすことができないのは「ビートDEトーヒ」の披露だ。音楽番組『Venue101』(NHK総合)から誕生した濱家隆一(かまいたち)と生田によるダンスボーカルユニット・ハマいくの「ビートDEトーヒ」は、TikTokを中心にSNSでバズを起こし、昨年11月に配信リリース。『Venue101』だけでなく、様々なバラエティ番組でイジられることでその認知度を広げるという、特異な楽曲へと成長している。アンコールでは紗幕に2人のシルエットが映し出され、大歓声の中「ビートDEトーヒ」がスタート。meiyoが作詞・作曲したポップでキャッチーなメロディラインに、濱家と生田をイメージして制作されたGANMIのリーダー・Sotaによる振付ダンスは、約2分という短さの中で何度もクライマックスを生み出していく。

 「ビートDEトーヒ」の披露自体は番組の公開収録ですでに行ってはいるが、生田が触れていたようにこの日が「ビートDEトーヒ」史上一番盛り上がっていたのは間違いない。けれど、生田含め、会場全体に濱家を「これだけでは帰さない」というような不思議な一体感が流れていた。「もう喋んないんですか?」という生田の投げかけと、客席からの「もう一回!」という半分冗談のような声を濱家が拾ってしまったことで、気がつけば濱家がジャズ風に「ビートDEトーヒ」を歌う流れに。この日のライブでは1曲目に生田が「ビートDEトーヒ」をパフォーマンスしており、その曲中では『Erika Ikuta 2022 winter fun』で約束していたバイオリンにも挑戦している。バイオリンはまだしも、そのジャズ風の「ビートDEトーヒ」を濱家はステージ裏で観ていたからこそ、取り乱して当然。先ほどまで客席に飛び交っていた「頑張れ!」の声がいつの間にかリアルなトーンへと変わっている。しかし、いざ始まってみると、案外上手に歌えてしまう濱家。「めっちゃ気持ちよかった」と満足げな濱家に、生田は「ビートDEトーヒ」のボサノヴァバージョンを冗談混じりに提案していた。

 生田はこの日、自身で作詞・作曲を手がけたオリジナル曲「I'm gonna beat you!!」「laundry」「No one compares」の3曲をパフォーマンスした。「laundry」はこの公演が初披露。1年前、回転する洗濯機を眺めながら思いついた鼻歌が元になっており、その頃「何なんw」を練習していたのも影響し、これまで生田の引き出しにはなかったジャジーなテイストがふんだんに取り入れられている。すでに一部のファンにはお馴染みの「I'm gonna beat you!!」は、生田が友達とゲームをしている時に教えてもらったお気に入りの言葉「I'm gonna beat you!!(お前をぶっ潰してやるからな!!)」が元にあるアップテンポな楽曲。一方で、「No one compares」は「誰もあなたと比べられるものはない。それぐらいあなたは特別な存在だ」というメッセージが込められたミディアムソングだ。コロナ禍の自粛期間中に生田が初めて作詞・作曲したこの曲のサビ〈No one compares to you〉は、ファンを思って綴った真っ直ぐな気持ち。いつか聴いてもらえる時が来るかもしれないという当時の思いが、3年の時を経て、こうして東京国際フォーラムという大舞台で花を咲かせている。

 グループ時代、何度も大きな舞台に立ってきた生田でも、ソロとしてのステージはまた別の話。まだまだ初心者マークがついていると彼女は謙遜する。ライブ本編の最後に「私は最強」(ウタ from ONE PIECE FILM RED/Mrs. GREEN APPLE)を選ぶ人物の言葉とは、一見すると思えないかもしれないが、「この心の距離感とか、一人ひとりに向けて届け、頑張ってるよっていう気持ちを忘れないでいたいなって思ってる」と真摯に語る生田にとっては、今もファンの存在が心の支えになっているのだと感じた。

 だからこそ、彼女は挑戦をし続ける。ライブ冒頭、「ビートDEトーヒ」でのバイオリンのパフォーマンスに成功して安堵する満面の笑みに、グループ時代から変わらない愛らしい姿を重ねながら、ライブで見たのは自身の新しい扉を開け前進する生田のステージ。これからも、生田絵梨花は生田絵梨花を超えていく。

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