生田絵梨花、挑戦を重ねることで開いた新しい扉 ファンと心の距離を確かめ合った初の全国ツアーファイナル

生田絵梨花、全国ツアーファイナルレポ

 生田絵梨花の全国ツアー『Erika Ikuta Autumn Live Tour 2023』が、10月5日に東京国際フォーラム ホールAにて幕を閉じた。

 これまでOFFICIAL SITE会員限定で『Erika Ikuta 2022 summer fun』『Erika Ikuta 2022 winter fun』と2度行ってきたライブを拡大した、生田自身初となるソロアーティストとしての全国ツアー。東京、福岡、大阪、愛知と各地のZeppを巡り、4都市9公演のツアーファイナルとなったのが、東京国際フォーラム ホールAの公演である。2021年の大晦日に『第72回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で乃木坂46としてのラストステージを飾った、生田にとって思い入れのあるこの会場で、彼女は目の前のファンと心の距離を確かめ合いながら、何度も「挑戦」という言葉を口にしていた。

 乃木坂46時代からソロとしていち早く活躍していた生田。その歌声やピアノを弾く姿がグループのファン以外にも広く認知されるきっかけのひとつとなったのが『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)への出演だった。生田自身が「一人FNS歌謡祭状態」と発言しているように、ピアノ弾き語りに切り替わったライブ後半からは「愛し君へ」(森山直太朗)、「One more time,  One more chance」(山崎まさよし)、「SWEET MEMORIES」(松田聖子)、「何なんw」(藤井風)と生田が今まで『FNS歌謡祭』で披露してきた楽曲を4曲歌唱。さらにライブ序盤でいたずらな振付で踊っていた「ルージュの伝言」(松任谷由実)は『FNS歌謡祭』と同局の『MUSIC FAIR』(フジテレビ系)でパフォーマンスしていた楽曲だ。

 特に「愛し君へ」は、『FNS歌謡祭』では森山のボーカルにコーラスとピアノ伴奏として参加していた生田だったが、今回は一人での演奏。終盤の〈例えばそれが幻でも〉のロングブレスから、ふわりと優しく着地する〈いいから〉のラストの歌声が美しく、温かかった。『FNS歌謡祭』の披露から大きな反響を呼んだ「何なんw」は、ライブで先にパフォーマンスしていたのを番組プロデューサーが観て、今までの生田のイメージにない意外性に魅力を感じ、声をかけたのが出演に繋がっていた。『Erika Ikuta 2022 winter fun』の頃はまだ楽譜と鍵盤を見るので精一杯だったという「何なんw」も、場数を踏むことによって今ではすっかり客席の盛り上がりを見る余裕が生まれている。

 「自分が知らないこととかできなかったことに、これからもチャレンジしていきたい」と話す生田の思いが表れていたのは、「丸の内サディスティック」(椎名林檎)、「ハレンチ」(ちゃんみな)、「裸の勇者」(Vaundy)を披露したブロック。各地でセットリストが変わる、いわゆるご当地ソングコーナーで、「丸の内サディスティック」はその役割を担っている。ただ、ここで特筆したいのは、1曲ごとに表情をガラリと変えていく生田の表現力の豊かさだ。その前のブロックで「歌うたいのバラッド」(斉藤和義)、「楓」(スピッツ)というバラード(この時期にぴったりな秋の雰囲気を醸し出していた)を歌唱していたことも相まって、この日最もギャップが生まれていたブロック間の流れでもあった。

 観ているこちら側も気持ちが良くなってくるくらいに、巻き舌でガンガンにフェイクを入れる「丸の内サディスティック」。そして、この日のライブで筆者が最も目を見張ったのが「ハレンチ」だった。生田は今年4月より上演されたMusical『GYPSY』にて、“バーレスクの女王”と称されるルイーズを演じていた。その役の妖艶なムードが「ハレンチ」にも生かされており、『GYPSY』の振付師が今回のライブのステージングにも関わっているという。意外という意味では、「ELEVEN -Japanese ver.-」(IVE)は生田のイメージにはない驚くような選曲である。昨年の『紅白』をいち視聴者として観た時に印象に残ったというが、一緒に踊るメンバーもいない生田は、バンドメンバーと一緒に披露することを決めた。この曲をストリングス込みのバンドアレンジに採譜していることにまずは拍手を贈りたいが、サビ前で急激にテンポダウンする〈こっから先はカラフルな暗示〉のフレーズは、「ハレンチ」や「丸の内サディスティック」の艶やかなムードと先述した「ルージュの伝言」のようなカメラ目線から感じさせるある種のアイドル性をもたらす、絶妙な塩梅の選曲だったように思える。

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