米津玄師、Mrs. GREEN APPLE、新しい学校のリーダーズ、キタニタツヤ……なぜヒットソングは“青”なのか? 傾向と理由を分析
ヒットソングを分析するうえで曲調やリズムなど、さまざまな切り口があるだろう。さて、“色”はどうだろうか。本稿で取り上げたいのは“青”をテーマにした楽曲たち。古くから“青”にまつわるヒットソングは数多い。ここでは近年の楽曲を中心に、なぜアーティストやリスナーは“青”に惹かれ、何を“青”に託しているのかを読み解いてみたい。
〈今はさ/青に飛び込んで居よう〉〈映画じゃない/僕らの青だ〉というフレーズが印象に残るMrs. GREEN APPLE「青と夏」。この歌詞における“青”は、解釈の幅がとても広い。爽快なサウンドに乗せて届けられる“青”は目の前に広がる空や海のようにも聴こえるし、瑞々しい10代という季節を象徴しているようにも取れる。このように、“青”という色はたった一文字だけで楽曲のイメージを何倍にも膨らますことができるのだ。
遡れば、たとえばサスケの「青いベンチ」はワンシチュエーションだけで青春的な風景を浮かび上がらせ、松田聖子の「青い珊瑚礁」はそのタイトルだけで美しく透き通った海の景色を広げていく。瞬発的にこうした情景を喚起させることができ、多くの人が近いイメージを共有できるという点が“青”にまつわるヒットソングが生まれやすい要因と言えるだろう。
景色のみならず、若さや純粋さのメタファーとしても“青”は機能する。今、話題を集めているキタニタツヤ「青のすみか」はその筆頭だろう。清らかにデザインされたサウンドと憂いを帯びたメロディのなかで歌われる〈置き忘れてきた永遠の底に/今でも青が棲んでいる/今でも青は澄んでいる〉という印象的なフレーズは、心のなかに宿した純粋を想う言葉として響く。
また、新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」は歌謡曲的なタッチで〈青い蕾のまま 大人振る〉という危うい恋心を描く。たとえばこれが“赤”をモチーフにした曲であれば、より“大人”な質感になっただろうが、ここで“青”を用いることで大人になりきれない心象を表現している。彼女たちのパブリックイメージとも結びつく、見事な“青”の演出と言える。
誰もが過ごしてきた若き日々のメタファーとして、“青”は楽曲に普遍性を与える。爽やかさもほろ苦さも呼び起こす、記憶をくすぐる色なのだ。