Ayase&syudou&すりぃ&ツミキ、DREAMERSでのコンピCD販売に感じたシーンへの愛 4人の交流の歴史も

 2023年8~9月にかけて大阪・東京で開催された『初音ミク「マジカルミライ 2023」』(通称:マジミラ)。8月31日のVOCALOID・初音ミクの誕生日に合わせ毎年開催されている、VOCALOIDの創作文化を様々な形式で楽しむ複合イベントである。

 昨年開催10周年を迎え、シーンにとって今や欠かせない祭典である本イベント。そんな『マジミラ』で今年、とあるボカロPたちの遊び心あふれる活動が大きな話題を集めた。彼らの名は「DREAMERS」。チームを構成する面々を見れば、その注目度の高さに納得するに違いない。

 まず筆頭となるのはAyase。「アイドル」のスマッシュヒットなどで、その名が海外にも知れ渡っているYOASOBIのコンポーザーである。次にAdo「うっせぇわ」の爆発的ブームで一気に名を広めたsyudou。そしてSNSを軸に、「エゴロック」「テレキャスタービーボーイ」などの楽曲が若年層に熱狂的支持を得るすりぃ。さらに先日、MAISONdes名義の「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」がストリーミング累計再生回数1億回を突破したツミキ。上記4人によるサークル「DREAMERS」が『マジミラ 2023』内で開催された音源即売会・クリエイターズマーケットにて、VOCALOIDコンピレーションアルバム『龍宮城』を会場限定でCD販売したことが、今夏シーンを賑わせるホットトピックスとなった。

 概要だけを見れば、まさに今をときめく超有名ボカロPの夢の競演、という点が注目点のようにも思える。しかし長年のファンにとってはそんな表層的な要約で簡単に消化される話題ではない。その理由のひとつに、このDREAMERSが、今回限定で組まれた即席サークルではない点が挙げられる。

 元を辿ればDREAMERSとは、公式ユニットどころか正式なチームですらない、ボカロP集団の名称として仲間内で冠された名前だった。4人の親交が始まったとみられるのは2020年初旬。当時は上記面々に加えボカロPの煮ル果実やろくろも時折親交があり、相互に楽曲アレンジを行ったり、時には食事や旅行にも行くような交流を持っていた。

 今でこそ大衆的な人気を獲得する面々だが、当時はまだボカロシーンの最前線に、ようやく全員が立ち始めた頃。それぞれが社会人として働いたり、ジリ貧に喘ぎつつも楽曲制作を続けていた頃である。特にAyaseの苦労話はファンの間でも有名で、syudouは過去にnoteで、おそらくAyaseと思われる人物が「当時飴を買う金もなく、外で拾った石を砂糖で煮詰めて舐めていた」話まで暴露している(※1)。苦境の時代を共にし各々邁進を続けた結果、それぞれ輝かしい未来を掴んだ彼ら。けっして知名度や話題性だけの繋がりではない4人の交流の歴史を知ると、今回のDREAMERSとしての活動を感慨深く思うのも自然な流れだろう。

 重ねて言うならば、今回彼らが“ボカロP”として音源販売を行った点もフォーカスするべきポイント。現在は4人全員が自身で表に立つ活動を主とし始めており、AyaseはYOASOBIのみならず、直近はソロでCreepy Nuts・R-指定との共作「飛天」をリリース。syudouは今年6月に1stアルバム『露骨』を発売、同じくすりぃも来たる11月14日に初のソロ名義アルバム『グラデーション』リリースを控えている。ツミキに関してもユニット・NOMELON NOLEMONで『JOIN ALIVE 2023』や『SUMMER SONIC 2023』出演を果たし、直近ではすりぃはじめ、石野理子(Vo / ex. 赤い公園)、やまもとひかる(Ba)と共にバンド・Aoooとしても活動を開始。人気ボカロPの肩書だけでなく、全員が一ミュージシャンとして邦楽シーンにも各々の立ち位置を確立する中、今回のDREAMERSの活動をある種“原点回帰”と受け取ったファンも少なくない。

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