Ayase&syudou&すりぃ&ツミキ、DREAMERSでのコンピCD販売に感じたシーンへの愛 4人の交流の歴史も

 さらに今回の音源は、実は全員にとって久々のボカロ曲リリースとなる。すりぃは前作「ダウンタイム」から約7カ月、ツミキは前作「カルチャ」から約10カ月、syudouに至っては前作「デイバイデイズ」から1年以上期間を空けてのボカロオリジナル曲だ。Ayaseは『マジミラ』テーマソングとして「HERO」をリリースしていたものの、ひとつ前を遡ると2年以上前のスマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』提供曲「シネマ」が一番の近作となる。ファンの中には、彼らがボカロシーンから徐々に活動の拠を移していると考える人々も多かったことだろう。故に今回のDREAMERSの活動が、シーンにとって非常に嬉しいサプライズだったことも想像に難くない。

 さらに言及するべきは、彼らの活動が年に一度の祭典である『マジミラ』、そして音源即売会であるクリエイターズマーケットだった点だ。VOCALOIDカルチャーの源流は、アマチュア音楽家による同人音楽文化でもある。ニコニコ動画というプラットフォームこそあったものの、それにとどまらず当時のボカロPの多くは曲と併せてCD盤も自主制作し、定期開催される即売会で手渡しの販売を行っていた。ニコニコ動画のない時代まで遡れば、同人音楽文化の原点はこの音源即売会になる。

 今回DREAMERSの面々も即売会の場で、まだ何者でもないボカロPだった頃と同じように、全員が現地に参加して手渡しで音源販売を行った。ボカロシーンから離れた活躍も増える中、それでもカルチャーの原点に根づいた確かな愛を感じる活動。それこそが何よりも、ファンの心を掴んだ理由だったのかもしれない。

 そしてDREAMERS的な“人気ボカロPのチーム活動”といえば、思い出されるのはプロデューサーユニット・estlaboの存在だ。ハチ(米津玄師)、wowaka、とくP(toku)、古川本舗という、稀代の面々によって2010年末に結成されたestlabo。今回のDREAMERSはやや活動の毛色が違えども、こうして人気ボカロPのチーム活動が注目を集めるのは、シーンが成熟した証でもあるのかもしれない。

 ボカロシーンを越えた活動が増えゆく環境でなお、ボカロPの肩書を、深い愛情をもって再び背負ったDREAMERSの面々。このVOCALOIDというカルチャーが、いつまでも彼らにとって実家のような場所であり続けられるように。あるいは彼らに留まらず、今はもうシーンを離れてしまった人々にとっても、いつでも戻って来られる故郷のような場所であってほしいと願う。

※1:https://note.com/syudoublog/n/n7222c6c5a2e3

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