ASA-CHANG&巡礼、Mrs. GREEN APPLE……バイオリニストとして幅広く活躍 須原杏、ジャンル横断的な素養がもたらす斬新さ

須原杏、ジャンル横断的な素養

「演奏内容に対する“音色”が重要なキーワード」

ーー最近だとMrs. GREEN APPLEの「Studio Session Live」でアレンジ、演奏、コーディネートなどをやられていて、それには兼松衆さん、小西遼さん、林田順平さんなども参加されていましたね。

須原:もともとレコーディングに参加していたのですが、彼らの新しいフェイズの見せ方として、今までと違うことをやりたいのかなと私は理解して。大森元貴くんはすごく面白くて、デモを自分で全部打ち込んで、デモの段階でマスタリングまでするんですよ。だからやってきたジャンルは違うかもしれないけど、考え方はすごくクリエイター寄りで、そこがみんなを繋げるものになっている感じがして。ミセスを一番聴いている、私よりもっと若い人たちをさらに音楽沼に引きずり込みたいな、と思いながら同世代の仲間を集めてやってます。

Mrs. GREEN APPLE - 01. Soranji from Studio Session Live

ーーASA-CHANGや河野さんと昔から一緒に活動されているので、ちょっと上の世代みたいなイメージがあったりもするけど、実際は今まさに音楽シーンのど真ん中で活躍をし始めた人たちと同世代なわけですもんね。

須原:確かに、これまで私が関わってきた人って上の世代が多かったけど、ずっと同世代や下の世代とやりたいっていう想いが強くあって。なかなか出会う機会がなかっただけで、たくさんいるじゃんって気づいたのがここ2〜3年で、そういう人たちとやっと会えた感じがあるんですよね。縁あって大きい現場もいろいろやらせてもらいましたけど、同世代とはもうちょっと深く話しながら作っていける気がするんです。

ーーなるほど。現在はバンド YAYYAYでも活動されていますが、今年リリースした新作『NO EVIL』ではエフェクティブなアプローチが印象的でした。途中でトラックメーカーが増えてきたという話もありましたが、バイオリンというと「生音を綺麗に録る」という部分ももちろんある一方で、ずっとエレクトロニックな音楽とも接してきた杏さんから見て、生音とトラックを組み合わせる上でのアプローチの変化をどのように感じていますか?

YAYYAY 「催眠」

須原:今は“音色”が重要なキーワードなのかなって。その意味でエフェクターを使ったりもしてるし、人数も1人で重ねるのか、みんなで録るのかでも全然違う。最近だとライブのときに使うマイクでレコーディングもしたりしていて。どういう音色でそのトラックと合わせたいのかっていうのは、もっと突き詰める余地がある感じはしますね。煌びやかな、いわゆるバイオリンっぽい音ももちろんあるけど、すごく小さい音でしか出ない質感や響かない音を、オンマイクで録ったり、逆にエフェクターに頼ったり。もうちょっと違うことができるんじゃないかって。音楽が多様化して面白くなってるからこそ、アコースティック楽器の音色の出し方はどうするのか。その選択肢として弾き方もあれば、エフェクターやマイキングにこだわる方法もあると思います。日頃からいろいろとアイデアを蓄えてニヤニヤしていますね。

ーーギターだと、家でライン録りしたものがそのまま採用されることが増えているのは、録音環境の変化もありつつ、トラックの音色が面白くなってきているからこその変化でもあるわけで。そういうアプローチの変化はバイオリンにもあるわけですよね。

須原:そうですね。YAYYAYではライン録音をしてみたり、原摩利彦さんともいろいろ試させてもらって、今までだったらやらないような弾き方を全員でやったりしたのも面白かったですし、もっとやり方がありそうな気はしてます。レコーディングスタジオにエフェクターを持っていくことが増えたのも最近で、最初の方の話に戻りますけど、やっぱり現代音楽やアンビエントがもともと好きなんですよね。ただ、みんな“バイオリンじゃない音”は求めてないから、そこはまた違うというか、エレキバイオリンとは役割が全然違うと私は思っていて。弦楽器は後からリヴァーブをかけたり、ミックスの人がいろいろ音を調整するんですけど、ある程度は音色まで責任もってやることが最近は増えているというか。

ーーとりあえず弾いて、ミックスにお任せじゃなくて、演奏する時点で最終的な音色まで意識すると。

須原:演奏内容と音色がちゃんと合っているか。そこがまだあまり合致してないのが弦の世界ではあるかもしれないです。最近は隙間のある音楽が結構あるから、埋めるのか埋めないのかとか、いろいろやりようがあるし、しかもみんな作り方が上手いから、グチャっとしてないんですよね。今曲を作ってる人はミックスまで見据えて作ってるというか、責任を持って全部やる人が増えていて。

ーーミックスも作曲の一部みたいな感覚もありますよね。

須原:そうそう。本当にいろいろな弦の入れ方を考えられるようになったから、そこは面白くなってきたというか、もっと頑張らなきゃいけないと思いますね。

ーーでは最後に、今後ご自身のソロ作やリーダー作を作りたいという思いはありますか?

須原:それはみんなにも言われますね(笑)。いつか何かしらの形で自分名義の作品を作りたいとはずっと思ってるんですけど、人と一緒にやることが好きで。でも自分の中で作るっていうのはもう決まっていて、いつ作るかはあまり決めないで来たけど、そろそろかな、みたいな感覚です。

ーーそれこそ周りにも信頼できる同世代の仲間が増えてきましたからね。

須原:ただこれだけいろんな人と知り合っておきながらあれなんですけど、もし作るとしたら全く知らない人と作ってみたくて。東京でやってると音楽シーンみたいなものが見えてくるけど、そういうところから離れた音楽を1回やってみたいんですよね。コミュニケーションを日々ずっと取ってるからこそ、コミュニケーションをすごく減らして音楽をやるっていうか。これは仕事とは全く別軸で考えていて、本当に知らない人、海外の人でもいいんですけど、そういう刺激を欲しがってる感じもあります。コミュニケーションから生まれるものは絶対にいいものができると予想が立つけど、もっと原始的に、よくわからないものを作ってみたいっていうのは、自分の中で沸々と考えてることではありますね。

※1:https://www.anzusuhara.com/pages/1559388/biography

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