YAYYAY、アルバム『NO EVIL』で見えてきた“バンド”らしさ 4人が自由に制作するからこそ生まれる新しい音楽

YAYYAYが見つけた“バンド”らしさ

 1月18日にYAYYAYがニューアルバム『NO EVIL』をリリースした。YAYYAYとは、GO!GO!7188解散後、チリヌルヲワカとして活躍しているユウ(Vo/Gt)、様々なバンドにサポートとして参加することも多い須原杏(Vn)と林田順平(Vc)、そして札幌を拠点にShizuka Kanata名義でソロ作を発表している田中一志(Arr/Prg/Mix)の4人で組まれたバンドである。ギターボーカルに弦楽器という変則的な形態をとっているが、今作ではさらに4人がバンドを実験場として自由に音を乗せることで、YAYYAYならではの“尖り”を感じることができる。今回、リアルサウンドではそんな挑戦的な制作現場の裏側について、ユウ・須原・田中の3名にじっくり話を聞いた。※林田順平は都合により欠席(編集部)

YAYYAYは、実験をさせてもらえる場(須原)

ーーYAYYAYはもともと一志さんのソロプロジェクトのShizuka Kanataのアルバムを作るために集まったメンバーで、レコーディングを進めていくうちにバンドの形を取ろうということで始まりました。変な話、1作品作って終わる可能性もあったと思うのですが、そこから2作目を作ったのはどうしてだったのでしょうか?

田中一志(以下、カズシ):まずは前のアルバム(『I'm Here』)を出したあとに配信ライブをやって。そのあとに、それぞれ自分のプロジェクトもあったりして時間を作るのが大変なメンバーなので、今後どうしようかと話をしたところ、「やろう!」となったので続いた形です。

ーー逆に言うと、皆さんそれぞれのプロジェクトがある中で時間を割いてでも、このYAYYAYというバンドをやりたいと思っているということですよね。皆さんにとって、YAYYAYはどういう存在なのでしょうか?

ユウ:自分の中ではカズシさんのプロジェクトから始まってるし、カズシさんの世界に参加させてもらっているという気持ちの延長ではあるんですけど……。2作目を作って、今やっと「バンドなんだな」っていう実感が湧いてきているのかなと。そんなに深く考えずに始まったバンドではありますが(笑)、「自分がボーカルだからバンドの顔になるのかなぁ」とか、そういうことを改めて考え出した感じです。

ーーそれこそユウさんは、チリヌルヲワカというご自身が“顔”になっているバンドがほかにもあるわけですが、チリヌルヲワカとYAYYAYでもっとも大きな違いはどのようなものですか?

ユウ:違うところだらけなんだけど、大きく違うのは楽器ですね。バイオリン、チェロが自分のバンドにいるっていうのは初体験で。今までギターロックみたいなバンドしかやったことがないから、打ち込みやシンセが入っているのも私の中では新鮮な体験です。作曲者が自分だけじゃないというのも今までにないことだし、いろいろな意味で新しいことをやれているバンドです。刺激がすごく多い。

ーーご自身で自主的に始めたものじゃないからこそ、刺激や色々なものをもらえることも多い?

ユウ:はい、もらえるものはすごく多いですね。アレンジで見ても、カズシさんは私とは真逆だと思うんですよ。私は自分のことを無骨なロックをやってきた人間だと思っていて。荒削りでシンプルで研ぎ澄ます、みたいな方向性でやってきたんですが、カズシさんはそれとは真逆。尖っているのは一緒だから合うんですが、アレンジの細かさなんかは私にはない要素なのですごく勉強になります。

ーーでは楽曲も、チリヌルヲワカとYAYYAYでご自身の中からは違うものが出てくる?

ユウ:そうですね。YAYYAYでは自分で作詞作曲している曲もどうなるのかが楽しみで。だからあえて自分の真骨頂だなと思うような曲を持っていって、メンバーにアレンジしてもらってどういう可能性があるのかを見させてもらっているところがあります。

ーー面白いですね。杏さんにとっては、YAYYAYというバンドはどのような存在ですか?

須原杏(以下、杏):YAYYAYは、ギターボーカルとバイオリンとチェロという不思議な編成なので、まず作り方がほかとは違いますね。ボーカル、ギターと同じくらい、弦のあり方も最初に決められる。曲の最初の段階から加われるのがYAYYAYの面白いところだなと思います。あと、カズシさんがいろんなことをさせてくれるんです。「なんでもやって」というウェルカムモードなので、JP(林田順平/Vc)も私も、ほかの現場ではできないことをYAYYAYでやっています。全然使い所のなかったエフェクターを使ってみたり。そういう実験をさせてもらえる場として、楽しんでやっていますね。

ーーではカズシさんにとって今のYAYYAYは、どのような存在になっていますか?

カズシ:最初に言ってもらったとおり、元々は僕のソロアルバムを作るときに集まったメンバーなんですが、イメージで言うと、「バンドにしようよ」というよりかは、「バンドっぽくしようよ」という感じで。ライブもまだ配信での1回しかやっていないし、バンドとして動いている状態ではないんだけど。音的には、いわゆる譜面を見ながら演奏するという形じゃなくて、メンバーそれぞれが好き勝手やっているみたいな形にしたいなと思っているのがYAYYAYです。

ーー“バンド”という手段を取るというか。

カズシ:そうですね。特に弦って、普段はスコアを書いてそれを演奏してもらうのが仕事として多い形。でも杏ちゃんとJPは、譜面通りに弾いてもらうよりも好き勝手やってもらったほうが絶対面白くなるんですよ。それを体験しちゃうと「もう譜面書かなくていいや」って思っちゃって(笑)。最近はギタリストばりにバリバリにエフェクトもかけているんで、もう好き勝手にやってよっていう感じですね。

杏:好き勝手にやらせてもらっています(笑)。

カズシ:ユウちゃんの歌に存在感がすごくあるので、それをベースにするとみんな好き勝手にできるというのが非常に楽しいですね。

杏:確かに歌も詞もユウちゃんの個性がしっかりしていて、何をやっても崩れないというのがまずあるから、自由にできるのかもしれないですね。

ーー先ほどユウさんは「どうアレンジされるのかが楽しみで真骨頂の曲を持っていく」とおっしゃっていましたが、カズシさんがYAYYAYに持っていく曲において意識していることはありますか?

カズシ:みんな変なんで、みんなの変なところをより変態にしようかなと(笑)。みんなの音が立つ分、自分も頑張らないと完全に負けちゃうので……このバンド、結構頑張ってます。

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