Maika Loubtéが別れを経て辿り着いた“まにまに”の境地 光と影、アンビバレンスな心情を曝け出す創作の核心
自分のことを“元気なネガティブ”って捉えてる
ーー“まにまに”は日本の古語にあたる言葉ですが、これに限らず最近のマイカさんの活動を見ていると和文化への接近が顕著に見えます。まどかさんが描き下ろされたマイカさんのメインビジュアルも錦絵モチーフですし、先ほど仰っていたように宮沢賢治が重要なリファレンスになっていたり。Maika:今までは「フランスのハーフ」っていうフォーカスのされ方をすることが多くて、自分でもその需要にこたえようとしていたところがあるんです。でも、本来のアイデンティティを考えると半分は日本人なので、当然日本的な部分も持ってるんですよ。同じく帰国子女のLISACHRISと遊ぶようになったのも大きい気がします。彼女はアメリカに住んでたんですけど、2次元的なアートワークの捉え方が特徴的なんですよね。彼女に出会ったことで、私も日本的なカルチャーに自覚的になった部分はあると思います。たとえば「Ice Age」では五度の和音を使ってるんですけど、私はそのニュアンスがすごく好きなんです。リオ五輪でみた三宅純さんの「君が代」アレンジとか、平沢進さんの音楽もやっぱり好きで。とは言え、どこかに根差しているのかと聞かれると、そういうわけでもないというか……。
ーーノンローカルなニュアンスで日本にフォーカスが向いていると。
Maika:そうですね。そもそも生い立ちが根差してないから、そこは嘘を付けない。だから「和」のテイストやカルチャーを積極的に打ち出しているものの、世界観としては曖昧な部分が残っていると思います。日本に住んでいる、ちょっとやさぐれた帰国子女が作った音楽。
ーーリリースされたばかりの「Inner Child」についてもお聞きしたいです。「Ice Age」で雪解けが訪れ、「Rainbow Light Eyes」で川に合流するというストーリー性が2曲にはあるようにも見えましたが、この曲は一見すると繋がりがないように見えます。しかし表象ではない別のところで繋がりがあるとすれば、『mani mani』はコンセプトアルバムっぽい作りになるのかなとも感じたんですが、実際はどうですか?
Maika:それぞれの概念は繋がっていると思いますね。私のイメージですけど、氷は川になって、川の水面は鏡に、 そしてその鏡は9月にミラーボールになる。そういった流れが、アルバムを制作しているうちに見えてきた気がします。「Inner Child」は“老い”が一つのテーマでもある内省的な曲なんですけど、音楽は外向き。自分との戦いのつもりで書きました。当然私たちはみんな子供だったわけですけど、ある段階でそれを押し殺さないといけなくなるんですよね。女性やお母さんとしての役割を割り振られて、自分がやりたいことを諦めるっていう。私自身、妊娠と出産を経て、ひとつ別のペルソナが生まれました。それは間違いなく素晴らしいことなんですが、その枠組みに入った瞬間にそれらしく振舞わないといけないことに対して寂しさもあるんです。価値観やものの考え方が世代を越えるのって難しいと思うんですけど、子供から大人になってゆく過程がそうさせている気がするんです。すべての人に子供だった時代はあるわけだから、それぞれ似たような葛藤をしてきてるはずなんですよね。それを感覚的に理解すべく、私は「Inner Child」のMVでおばあさんになりました。
ただふざけているように見えるかもしれないんですけど、私としては至って真面目でして……。誰かが何かの枠に当てはめられたとして、それがその人に合わなかった場合はどうすればいいんですか? と。絶望して居場所もなくなって、それでおしまいなんですかね。そこから立ち直るにはどうすればいいんだろうって考えたときに、自分の場合はやっぱり音楽なんです。心の根本にある喜びや、子供の頃に楽しいと感じたものの追求。そういった自問自答を繰り返してゆくうちに、「Inner Child」が出来上がりました。そういう意味で、この曲は鏡みたいな存在ですね。
ーー「自分がおばあさんになってみよう」と考えるあたり、やはりマイカさんのスタンスは一貫しているように感じます。フィクションとはいえ、経験に即したアプローチを試みたわけですもんね。
Maika:自分の中にないことは書けないんですよね。今回もシミュレーションではありますが、おばあさんになったことで少し理解できた気がしてます。特殊メイクや衣装で完全に皮膚が覆われた状態で、熱中症になりながら撮影しました。半分意識がない状態で臨んでましたね。ストーリーボードを書きながらイメージをクルーに共有して制作を進めていったんですけど、まさかこんなに大変だとは……。メイクするのに3時間、落とすのに2時間。その間に太陽の位置は変わり続けるので、スピード勝負でもある。そのうえロケバスが必要なぐらいには人がいましたから、作業工程にはかなり神経を使いました。しかも途中でコウモリは飛んでくるし、風も強くなるしで、もはやもう1本別の映像が作れそうなほどカオスな現場でしたね。ただ、それらが本当に全部必要だったんです。
結果としてお祭りみたいになったんですけど、私はそれがやりたかったのかも。「Ice Age」もそうですけど、楽曲が自分の内面を表したものだとするならば、やっぱり私の内側は結構激しい方なんですよね。整った世界観とか、取り乱さないことが良しとされる中で、そこに収まりきらないめちゃくちゃなものに惹かれるというか。
ーー『mani mani』は確かにポジティブな作品になりそうですが、薄暗さというか、不気味な部分も隠さずに持ち合わせていそうですね。
Maika:私自身は、自分のことを“元気なネガティブ”って捉えてるんです。穏やかさの裏側を見たいんだと思います。平和に生きてる素晴らしさを感じつつ、その裏で起きている恐ろしいことも忘れたくない。生のすぐ隣には死があるって事実を、ヒリヒリと感じていたいんですね。「Rainbow Light Eyes」も一見穏やかだけど、同時に闇を感じ取ってしまう自分もいて。たとえば赤ちゃんを抱っこしていても、あの非力な存在に対して気が狂いそうになるぐらい心配する心があるんですよ。力強く抱きしめたいけど、ちょっと触ったらすぐに壊れてしまいそうなものへの恐怖。私はそういうアンビバレンスな心境からは逃れられないと思います。多分、それはこれからも創作活動に反映されていくんじゃないかな。
ーー最後に、11月16日に開催される『mani mani』のリリースパーティについてお聞きしたいです。『Lucid Dreaming』以降のマイカさんの作品に客演として参加されたアーティストが大集合する内容で、大変豪華なイベントになりそうですね。
Maika:みんな来てくれるなんて、本当にありがたい話ですよね。『Lucid Dreaming』を出してからできなかったことを全部やろうと思ってます。『mani mani』の中でできた大きな川に、みんなで船に乗って行こうみたいなライブにしたい。総決算。
◼︎リリース情報
Maika Loubté「Inner Child」
配信中
配信URL:https://lnk.to/ML_InnerChild
◼︎LIVE Info
Maika Loubté Solo Show「art of mani mani」(アート・オブ・マニマニ)
日程:2023.11.16(木)OPEN/START 18:00/19:00
会場:渋谷 WWW X
チケット:ADV/ ¥4,000 DOOR/¥4,500 U-23/¥3,000
(税込/All standing/1D代別)
出演
Maika Loubté
Live Support:So Kanno from BREIMEN / Sountrive
Featuring Vocals:AAAMYYY / LISACHRIS / 鎮座DOPENESS
LIVEティザー映像:https://youtube.com/shorts/9ql2ZIeg9RM?feature=share
■プレリザーブ先行<抽選>8月3日(木)10:00~8月6日(日)23:59 受付開始
チケットぴあ https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=D9290012
■プレオーダー受付<抽選>8月3日(木)10:00~8月7日(月)23:59 受付開始
e+ https://eplus.jp/sf/detail/2969040001-P0030002P021001?P1=1221
■一般発売<先着>8月11日(金)11:00〜 販売開始
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