楠木ともり『PRESENCE』『ABSENCE』対談 前編:中村未来(Cö shu Nie)、ハルカ(ハルカトミユキ)と語る制作の背景

楠木ともり対談企画 前編

ハルカさんにコーラスを歌っていただけたことがすごく嬉しかった

楠木ともり、ハルカトミユキ ハルカ

ーーアルバムのテーマについては、どう受け取りましたか?

ハルカ:「存在」と「不在」というのは、ともりちゃんらしいテーマだなと思いました。二面性がちゃんと表現されているし、打ち合わせで話していても、すごく深く考えて決めたテーマだと思ったので、面白いなと思いました。今回の曲は「不在」のほうに入るんですけど、曲調は爽やかめで、重すぎず暗すぎずというところだったので、そこをどうしようかなと考えたのと、切なさをどうやってサウンドや歌詞に埋め込んでいこうかというところも、ずっと悩んでいました。

ーーそのバランスみたいなところで、苦労されたのですか?

ハルカ:あの、ともりちゃんの歌詞ってすごく良いんですよ。

楠木:ありがとうございます! 嬉しい……。

ハルカ:ともりちゃんの歌詞がすっごくいいから、これは難しいぞと思ったんです。もちろん最初からちゃんと書くつもりだったけど、これは本当に考えなければいけないぞ! と思っちゃって(笑)。ただ、変に難しくするのではなく、ストレートにいきたかったんです。あとはやっぱりテーマですね。テーマはあるけど、それを受けて、ハルカトミユキが思うように書いてくださいという感じだったので、どういう切り口で、どう掘り下げていこうかなと考えました。ただ、何かがなくなってしまっただけではなく、そこにちゃんと光があって、希望があることって何だろうとすごく考えていて。それで、ともりちゃんの活動や人となりも考えて、それを融合させながら書いていきました。なので、それを言葉に落とし込むのが難しかったかな。

ーーすごく肯定してくれるような、勇気づけられる歌詞になっていますよね。

楠木:自分の言葉として歌わないといけないんですけど、歌詞を読んでいると、ハルカトミユキさんからのお手紙のような気持ちになってしまって。でも、歌うときは、これを受け止めるばかりでなく、私が今感じた気持ちを、みんなに届けないとなと思いながら歌っていたんです。なので、今回提供いただいた4曲の中では、少しだけ受け取り方が違う感じでした。

ハルカ:ファンの方がともりちゃんの声を通して聴いたときにどんなふうに聴こえるのかなっていうのは、すごく想像しながら書いたんです。暗くてどん底のときだけでなく、そこから一歩を踏み出すとき、立ち上がるときにファンの方が感じてほしいこと、こういう風に聴こえていたらいいなと思って書いていました。

楠木:素敵。

ハルカ:〈何一つ生まれない日も生きていること それを僕は強さと呼びたい〉というところが、一番実感としてあるところなんですよね。これって、何かを作ったり表現をする上ですごくしんどいことなんです。10年以上も続けていくと、この日一日何だったんだっていう時が必ずあるんですけど、それって、こういう仕事をしていない人にもきっとあることなんですよね。今日自分は何もできなかった、何も生み出せていないし、ただただ時間を浪費してしまったなってときに、それでも生きて一日過ごしたことって、タイトル通りなんだけど、強さと呼んでもいいんじゃないかなって。そこを一番想って書いたんです。

楠木:Bメロで〈思い出は滲んで 未来は真っ黒だ〉という歌詞があるんですけど、本当に何もできなかった日とか、すごく失敗しちゃった日って、その瞬間がつらいだけなのに、はるか先の未来まで、すべてなくなってしまうような気持ちになるんですよね。逆に良かった思い出とかは鮮やかすぎて、自分の中でにじみかけていたりする。その描写をサビ前に入れてくる。ここで自分の心にあるモヤモヤを自覚してサビを迎えることができるので、より一層刺さるなと思いながら読んでいました。

楠木ともり

ーーレコーディングはいかがでしたか?

楠木:提供曲の中では一番苦戦しました。歌詞を畳み掛けるところとかがフォークソングっぽくも感じて、どう歌えばいいのかが難しくて。ただ、技術面に気を取られず、ニュアンスを入れたくなる歌詞だったので、それを考えるのは楽しかったです。

ハルカ:とは言え、レコーディングはすごく早かったんですよ。最初に聴いて、これでいいじゃん! って思ったので。ただ、この曲は早口だし、歌うのは絶対に難しいよなとは思いました。リズムも複雑だし、音程も結構切り替わるから歌うのは大変だろうけど、ともりちゃんだしいけるだろうって(笑)。でも、本当に曲の世界を噛み砕いて、自分の中で消化して表現してくれているのが一発目からわかったんです。つらつらつら~って歌う人もいるかもしれないけど、まったくそんなふうには聴こえなかったし、ちゃんと自分の歌にしているし、自分の言葉にしていたから、テクニック的には難しかったかもしれないけど、たとえ歌に粗があったとしても、感情表現を活かしたいと思っていました。

ーー歌詞の一言一言に感情が乗っていましたからね。

楠木:もちろん、いつも歌う前にプランを考えていくんですけど、自分にとってはお手紙のようなものなので、言葉を読みながら歌っているだけで、スッとその気持ちに導かれていく、引っ張られていく感じがあったんです。だから〈「楽になれよ」って〉以降は、自分が考えていた以上のニュアンスが出ることが多かったです。

ハルカ:歌ってみたら自然にそういう表現になっていったんだ。でもそれを感じたから、あまり余計なことは言いたくないなと思って、ともりちゃんが思うように歌ってくれたらと思っていました。

ハルカトミユキ ハルカ

ーー楠木さんから出る表現を尊重してディレクションをしていたのですね。自分が書いた曲が他の声で歌われるのを聴くのはどんな感じなのですか?

ハルカ:作っているときから自分で歌わないことを想定していて、自分だったら合わないというか、ハマらないものでも、ともりちゃんが歌ったら多分こうなるなって考えながらメロディラインや譜割りを考えていたので、実際にそれがハマったときは、「よし!」みたいな感じでした(笑)。

楠木:愛をすごく感じて、満たされる気持ちです。私がすごく嬉しかったのが、ハルカさんにコーラスを歌っていただけたことなんです。基本的には自分で録るんですけど、この曲はハルカさんにお願いしたいと伝えていたんです。自分にとって、このコーラスが背中を押してくれるというか。提供していただいた曲だからこそ、自分以外から発せられるパワーを感じたんですよね。レコーディングされているところは、私は別の仕事が入っていたため見られなかったんですけど、ミックスで初めて聴いたとき、ぶわ~って鳥肌が立ちました。このコーラスがあることで、この歌の言葉が、自分の言葉であり、ハルカさんからいただいた言葉であるという感覚がすごくあったなって思います。思い出深い形にしていただいて良かったです!

楠木ともり「それを僕は強さと呼びたい」Lyric Video(ハルカトミユキ提供楽曲)

■楽曲情報
「BONE ASH」
・リリックビデオ:https://youtu.be/rHBhaKD0Uj4
・配信:https://kusunokitomori.lnk.to/BONE.ASH

「それを僕は強さと呼びたい」
・リリックビデオ:https://youtu.be/a6CTPvMMyLo
・配信:https://kusunokitomori.lnk.to/SorewoBokuwaTsuyosatoYobitai

■リリース情報
楠木ともり 1st アルバム『PRESENCE / ABSENCE』
【発売日】2023年5月24日(水)
購入はこちら:https://kusunokitomori.lnk.to/0524_PRESENCE_ABSENCE
『PRESENCE』通常盤:3000円+税・CD(11曲収録)
『ABSENCE』通常盤:3000円+税・CD(11曲収録)
『PRESENCE / ABSENCE』初回生産限定盤:8000円+税・2CD(22曲収録)・48p フォトブック同梱 ・三方背スリーブ仕様
『PRESENCE / ABSENCE』完全生産限定盤:12,000円+税・2CD(22曲収録予定)+BD(MV・リリックビデオ・ライブ映像収録予定)・グッズ同梱(レコード型コースター)・スペシャルBOX仕様
<収録内容>
CD収録曲
『PRESENCE』
01.presence
02.アカトキ
03.もうひとくち
04.青天の霹靂(TOOBOE 提供楽曲)
06.sketchbook
07.BONE ASH(Cö shu Nie 提供楽曲)
08.ハミダシモノ
09.バニラ
10.タルヒ
11.alive
『ABSENCE』
01.僕の見る世界、君の見る世界
02.眺めの空
03.山荷葉
04.Forced Shutdown
05.StrangeX(meiyo 提供楽曲)
06.遣らずの雨
07.熾火
08.よりみち
09.narrow
10.それを僕は強さと呼びたい(ハルカトミユキ提供楽曲)
11.absence
<完全生産限定盤 Blu-ray 収録曲>
Music Video
01. ハミダシモノ
02. Forced Shutdown
03. バニラ
04. narrow
05. 遣らずの雨
06. presence
07. absence
Lyric Video
01. 眺めの空
02. ロマンロン
03. 僕の見る世界、君の見る世界
04. sketchbook
05. アカトキ
06. よりみち
07. 熾火
08. タルヒ
09. 山荷葉
10. もうひとくち
11. alive
12. 青天の霹靂
13. BONE ASH
14. StrangeX
15. それを僕は強さと呼びたい
Kusunoki Tomori coming-of-age『WRAPPED///LIVE 廿』 2019.12.29 EX THEATER ROPPONGI
01. スケッチブック
02. 眺めの空
03. クローバー
04. ロマンロン
05. アカトキ
06. バニラ
07. 僕の見る世界、君の見る世界

■ライブ情報
『楠木ともり全国ライブツアー』
公演日程
【大阪公演】Zepp Namba(OSAKA) 2023年7月29日(土)open 17:00 / start 18:00
【名古屋公演】Zepp Nagoya 2023年8月6日(日)open 17:00 / start 18:00
【新潟公演】新潟 LOTS 2023年8月13日(日)open 17:00 / start 17:30
【宮城公演】仙台 PIT 2023年8月20日(日)open 17:00 / start 18:00
【福岡公演】Zepp Fukuoka 2023年8月26日(土)open 17:00 / start 18:00
【東京公演】TOKYO DOME CITY HALL 2023年9月2日(土)open 17:00 / start 18:00
チケット料金:指定席 7,700円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児童入場不可
枚数制限:お一人様1公演につき2枚まで
チケット情報など詳細はこちら:https://www.kusunokitomori.com/info/archive/?id=550486

公式 HP:https://kusunokitomori.com
公式 Twitter:https://twitter.com/tomori_kusunoki
Official YouTube channel:https://www.youtube.com/c/tomorikusunoki

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる