Cö shu Nieが辿り着いた新たな音楽世界 アルバム『Flos Ex Machina』が擁する艶やかな生命力

Cö shu Nie『Flos Ex Machina』レビュー

 まるで生き物のような音楽だ。

 Cö shu Nieの新作アルバム『Flos Ex Machina』を聴いて、まずそう思った。時に筋肉のように、時に骨のように、常に質感を変えながら目まぐるしく動く音。このアルバムでは、無音の空間にも不思議と音は響いているように感じられる。そして、記憶のように孤独な領域から立ち昇り、髪の毛のように風に揺らぎ、涙や血液のように命と繫がった場所から流れ出す言葉たち。それらは「美しいものを見たい」と思いながら、「誇りを持って生きたい」と願いながら、自らを呪いも救いもする過去を抱えて、小さくともたしかな息を吐く。洗練されながらも歪で、猛々しくありながら弱さを隠さない、そんな生き物が、ここにいる。

 タイトルの『Flos Ex Machina』とは「機械仕掛けの花」という意味で、舞台用語「deus ex machina(機械仕掛けの神)」をもじったものだというが、とてもしっくりくるタイトルである。なぜなら、このアルバムは、花のように魅惑的だから。この音楽は、時にささやかで可憐に、時に毒々しく艶やかに、聴き手を魅了する。しかし、当たり前の話だが、これは本物の花ではない。あくまでも花のように、真っ直ぐに複雑であることを受け入れようとする人の手によって作られた「作品」である。それゆえの温かさも悲しさも、しっかり細部に残っている。そこがいい。作り手はこの音楽作品の中で、とても勇敢に自己を開示しているように感じる。なぜ、人は創作や表現を求めるのかーーそこにある現実も、業の深さも、悲しさも、隠していない。だから私は、このアルバムを自分事のように受け止めることができる。この花は私だ、と。

 本作は、フルアルバムとして前作『PURE』から約2年3カ月ぶりの作品となる。この2年の間にリリースされたシングル曲ーー「red strand」(フジテレビ系アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』エンディングテーマ)、「give it back」(MBS/TBS系アニメ『呪術廻戦』第2期エンディングテーマ)、「miracle」(WOWOW『連続ドラマW インフルエンス』主題歌)、「undress me」(テレビ東京系ドラマ『女の戦争~バチェラー殺人事件~』主題歌)、「SAKURA BURST」(MBS/TBS系アニメ『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ』第2クールエンディングテーマ)といったタイアップ楽曲は網羅的に収録されており、聴けば、この2年間におけるCö shu Nieの音楽的な深化を改めて実感できる。例えば、「miracle」や「give it back」に捉えられた、ため息が出るほどに素晴らしい歌の深い響き。あるいは「undress me」の、跳躍しながら絡み合うような歌と楽器たちの艶やかで生命力に満ちた姿。どの曲もリリースされた時点で鮮烈な驚きを与えてくれた楽曲たちだが、その驚きはこうしてアルバムにパッケージングされた後でも損なわれることはない。

Cö shu Nie – give it back (Official Video) / TVアニメ『呪術廻戦』第2クール エンディング主題歌
Cö shu Nie – SAKURA BURST (Official Video) / TVアニメ『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ』第2クールEDテーマ

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