2023.05.25 18:00

ハンブレッダーズ、ツアーをかけてバンドがたどり着いた“答え”　熱いシンガロングと歓声が響いたNHKホールワンマン

文＝小川智宏、写真＝タマイシンゴ

　文字通りリスナー一人ひとりを頼もしく照らし出すような「光」を力強く届けると、ムツムロが「おまえらの人生のフルコーラス、俺がギター弾いてやる」と言い放ち「ヤバすぎるスピード」を繰り出していく。音源よりもいくぶんテンポが速いようにも聞こえ、ますますヤバくなった「ヤバすぎるスピード」が少しドシャメシャになりながらひたすら突っ走っていくのを聴いていると、ハンブレッダーズの音楽がなぜこんなにも人に歌わせ、叫ばせるのかがわかる気がする。なんというか、ステージ上の彼らも、客席やフロアにいる僕らと同じようにいろんなものによろけたりつまづいたり行き詰まったりしながら、それでもどうにかこうにか走っているという感じがビシバシと伝わってくるのだ。ハンブレッダーズの音楽に支えられているのと同じだけ、リスナーもバンドが走り続けるのを支えたくなる。それがこの熱いシンガロングと歓声を生んでいるのだろう。

　木島の叩く重いビートに合わせてムツムロが語り出す。「東京に引っ越して2年経って、こうやってたくさんの人の前で演奏させてもらって。でもこういう瞬間以外は普通に暮らしていて。いつだって、真っ当にっていうか、毎日頑張ってる人が報われたらいいなって思いながら暮らしてます」。そんな切実な思いとともに「東京」を歌うと、冒頭に書いたとおり彼は感情をぶちまけた。そして「できれば生き続けてほしいなという気持ちを込めて歌います」とギターをかき鳴らし、「BGMになるなよ」に入っていく。その歌声を鼓舞するような手拍子がどんどん大きく、強くなる。〈大丈夫君は生きていたっていいんだ〉〈生きるという事は誰かと違うという事さ〉――まったく飾らない、実感と願いそのもののような言葉は、ライブで生で鳴らしてこそそのパワーを最大限に発揮する。これがロックバンドだ、とぐうの音も出ない説得力を感じさせる瞬間だった。

　「THE SONG」で本編を終えた後も、ライブはダブルアンコールまで続いた。「またね」に、楽器の音がすべて止むなかお客さんの歌声が響き渡った「DAY DREAM BEAT」、そして最後の最後に鳴らされた「ライブハウスで会おうぜ」。今ここで鳴らすべき音と伝えるべき言葉だけに彩られたライブは、ロックだけが作れる最高の「場所」での再会を約束して幕を下ろしたのだった。

■セットリスト
1.起きろ！
2.ワールドイズマイン
3.見開きページ
4.いいね
5.再生
6.プロポーズ
7.パーティーを抜け出して
8.ファイナルボーイフレンド
9.ヒューマンエラー
10.才能
11.アイラブユー
12.常識の範疇
13.ギター
14.光
15.ヤバすぎるスピード
16.東京
17.BGMになるなよ
18.THE SONG