齋藤飛鳥、乃木坂46最後の1期生として見せた大きな背中 11年8カ月の集大成であり、未来へ想いをつなげた卒業コンサート

齋藤飛鳥 卒業コンサート完全レポ

 昨年末をもって乃木坂46を卒業した齋藤飛鳥が、約5カ月の空白期間を経て再びグループの一員としてステージに立つ。これが正真正銘のラストステージだと頭では理解していても、ここ1〜2カ月で本格化した“1〜2期生のいない新生乃木坂46”が自身の中で馴染み始めていただけに、どんな気持ちでステージと向き合えばいいのか、ライブが始まる前まで心の整理がつかずにいた。

 そんな気持ちのまま迎えた、5月17、18日に東京ドームで開催された『齋藤飛鳥 卒業コンサート』。未来へ向けて羽ばたく白い羽根をモチーフにしたステージセット、会場を染め上げる白+水色のペンライトなど、開演前から齋藤の卒業へ向けたお膳立ては万全だった。そして、「Overture」を経てステージにシルエットが浮かび上がり、白い衣装を着用した齋藤はアリーナ中央のサブステージへ向けてゆっくりと歩き始める。その表情は少し緊張しているようにも見えたが、「ここにはないもの」からライブをスタートさせるとその表情もどんどん柔らかなものへと変化していく。しかし、最初の数曲については上記のようなふわふわした気持ちのまま、筆者はステージを眺めていた。違和感とも異なる不思議な感覚……「制服のマネキン」でメンバーが勢揃いした頃にはその違和感も薄らいでいたが、あれは今思い返すと、32ndシングル『人は夢を二度見る』以降の“1〜2期生のいない新生乃木坂46”に慣れ始めていた自分の中の価値観が、齋藤の登場によって少し揺らいだ結果だったのかもしれない。驚きと同時に、これは嬉しい誤算だった。

 2日間にわたり行われた東京ドーム公演はどちらも内容が異なるもので、セットリストも半数以上にわたり差し替えられるという徹底ぶり。これによって、インターネット生配信も2公演とも行われることとなった。ほかのメンバーは今年2月の『11th YEAR BIRTHDAY LIVE』以降経験済みだが、齋藤にとっては2020年2月の『8th YEAR BIRTHDAY LIVE』以来、実に3年ぶりの“声出し解禁”ライブ。さらに、東京ドームでの声出し可能ライブとなると、初回の2017年11月以来とあって、2021年11月の二度目のドーム公演とも違った感慨深さを覚えたことだろう。齋藤が観客とのコール&レスポンスを含めた“声のやり取り”を存分に楽しんでいる様子は、この2日間で何度も見受けられ、なんとも微笑ましい気持ちになったことは特に印象的だった。

 初日公演の映像パートで、齋藤は「どうやったらこの人たち(現メンバー)の未来につながりつつ、私もいい旅立ちができるかを擦り合わせるのが難しくて。卒コンなので、どうしても私がめちゃくちゃ出ているんですけど、その中でも満遍なくみんなしっかりと出してあげたいし、絡みたいし、ちゃんと全員と目が合うようにしたい」と発言しており、本公演は自身のアイドル人生の集大成という以上に、グループの未来につなげるものにしたいと強く願っていることが伝わる。それもあってか、初日は自身を中心に据え3〜5期生をシャッフルした編成で新旧のユニット曲を歌唱したり、自身もアンダーでの経験があったからこそ32ndシングルアンダーメンバーとともに「扇風機」などの楽曲を披露するなど、先輩としての背中を見せながら後輩たちにバトンをつないでいった。

 また、ここからのグループを牽引していくであろう山下美月&賀喜遥香とともにしっとり歌った「路面電車の街」、『真夏の全国ツアー2019』の再演となる遠藤さくらとの「他の星から」など、中盤は印象的なコラボも数多く用意。MCでは齋藤を程よくイジり続けた山下が「路面電車の街」のエンディングで涙を浮かべたり、「他の星から」終了後には齋藤が遠藤の頭をポンと叩くと、遠藤が感極まり熱い抱擁を交わすなど、エモーショナルな瞬間も多々見受けられた。さらに、齋藤自身が(西野七瀬とのダブル)センターだったこともあり披露された「いつかできるから今日できる」も忘れられない。この曲がリリースされた当時、乃木坂46は初の東京ドーム公演を実現。同曲はライブ本編のラストに披露されたこともあって、不思議とあの頃の乃木坂46がフラッシュバックする瞬間が曲中に何度もあった。もちろん、そこから5年半以上もの月日が流れ、当時とはメンバーも大幅に変わったが、どれだけ月日が流れても“乃木坂イズム”は何ひとつ変わっていない……何気ない1曲かもしれないが、筆者にとってはそれくらい重要な楽曲のように感じられた。

 本編クライマックスでは、ストリングス隊を含む生バンドを従え「君に叱られた」「裸足でSummer」「Sing Out!」といったヒット曲を連発。賀喜がセンターに立つ「君に叱られた」では齋藤もドラマーとして演奏に加わるなど、自身の特性を活かしつつも後輩たちを立てることも忘れない。そして、「Sing Out!」では5万人のオーディエンスによるクラップ&シンガロングも加わり、熱量が最高潮に達したところでライブ本編は終了した。

 アンコールではこの日しか観られないファンに向けて、齋藤が「私への愛情を、これからはメンバーのみんなに向けてくれたら嬉しいです。これからの乃木坂46をどうかよろしくお願いします」とメッセージを届け、彼女の卒業に際して制作されたソロ曲「これから」をライブ初披露。途中、歌詞を間違えて悔しがる一幕もあったが、最初で最後のライブ歌唱に対して客席からは温かい拍手が送られた。そして、「今日は想像していたよりも楽しくて」と今の心境を吐露してから、「乃木坂の詩」にて3時間におよぶ卒業コンサート初日締め括った。

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