早見沙織、2021年に掲げた活動テーマによって広がる音楽創作の幅 3rdアルバム『白と花束』制作の前日譚

早見沙織、2021年以降に広がった創作活動の幅

これまで以上に新しい扉をどんどん開きやすくなっている

ーー光という言葉のエッセンスは残しつつ、内省もまた自分を救うための行為なのだ、ということを伝えているのですね。また、今回の作品は声優アーティスト/ポップスのシンガーとしても異色な制作陣が入っていて、音楽好きにすごく刺さるアルバムになっていると思います。

早見:ご縁がある方や自分が聴いているアーティストの方とご一緒したので、みなさんに自然な形でお声がけできました。たとえばTomgggさんは、緊急事態宣言が出てから間もない時期に行われていた配信イベント(『Music Unity 2020』)で、『シスターシティーズ』に入っている「ザラメ」をリミックスしてプレイしてくださって。それがすごく素敵だったんです。「ザラメ」の持つ空気感がしっかり基盤にありながら、Tomgggさんが持っている「可愛らしくて、ちょっと優しくて穏やかな感覚」が曲とすごくマッチしていて。その時に「いつか自分の楽曲も、Tomgggさんさんに作っていただけたら嬉しいな」と思い、それからずっとタイミングを探していて。今回のアルバムのタイミングでお声掛けをさせていただきました。

ーーまさか早見さんから『Music Unity 2020』の話が聞けるとは……。

早見:私のチームのクリエイティブプロデューサーに教えてもらいました。ほかにも、今回のアルバムにはもう少し若い世代にも突き刺さるような音楽と世界観を持っていらっしゃる方をお迎えしたいと思っていて。私自身もこのプロジェクト以外の楽曲でSNSを通して色んな方に自分の歌を聴いてもらえる機会が増えたので、そこから接点をもってくれた方にすごく刺さるかもしれない、ということでいよわさんにオファーさせていただきました。幅広い音楽性を持ちながらも、すごくキャッチーでクセのあるいよわさんの「残滓」は、私の楽曲のなかでも新境地といえるものになったと思います。

 清 竜人さんは、私が堀江由衣さんのアルバムを学生時代から聴いていて、そのときから忘れられない楽曲をいくつも作られているんです。清さんの楽曲を聴き返した時に、多彩な作風なのにどれもボーカルが中心にあって、歌い手の魅力を最大限に引き出してくださる方なんだと気づいて。「早見沙織というボーカルにマッチする曲を清さんが作ったらどうなるんだろう」とワクワクしてお願いしました。

ーー実際にアルバムが完成して、色とりどりな楽曲がテーブルに並んだ時、どのような感覚になったのかをお聞きしたいです。

早見:全曲が出揃ったときには「これは曲順が決まらないぞ……」と思いました(笑)。そこからさまざまなパターンを組んでいくなかで、最初はまったく想定していなかったんですが、Tomgggさんの曲(「Ordinary」)を一番最初に持ってくるという並べ方をしたときに、すごくしっくりきたんです。「アルバムの1曲目は、すでにリリースされてる曲ではなく新曲で進めたい」という意見もあったので、そこにも合致するなと思いました。楽曲としてもキャッチーですし、アルバム全体の空気をまとめてくれるような総合力もあるなと。そこが決まってからは順調に収まるべきところに収まっていった気がします。既存曲では「Awake」や「Tear of Will」のようにスケールの大きいものを最後にするか、真ん中にするかは少し迷いました。ライブでは最後のほうに披露することが多い楽曲ですが、アルバムとしては真ん中に置いた方がいいと考えて、5~6曲目に据えています。

ーー「Awake」と「Tear of Will」が真ん中にあることで、「Awake」までの6曲をレコードのA面、「フロレセンス」以降をB面という風に捉えて聴くこともできるなと感じました。人によっては制作の段階で足りないピースを嵌めるように曲を作る方もいると思いますが、早見さんはどうですか?

早見:制作の段階では、色んな曲が並行して動いていたので、あまりそのあたりのことは気にせずに作っていました。アルバムで最初にできた曲と最後にできた曲は自分の曲だったのですが、それも順番に作っていったらそうなった、というだけで。

ーー先行配信やラジオなどで収録曲単体としてリスナーの元には届いてはいますが、アルバムの全体像はいい意味で予測できないものになっていると思います。

早見:ほどよく全貌をお見せできてきているのかなと思うのですが、どの曲も全然個性が違っていて。“光となる音楽を届ける”という軸が一つ通ったことによって、これまで以上に新しい扉をどんどん開きやすくなっているんです。今回アルバムとして、こんなに豪華でカラフルな布陣の楽曲を並べることができて、私としても「これを1枚にまとめさせてもらえるんですか」というくらい贅沢なことだと思っていて。個性の強い作家さんやアーティストのみなさんにお願いして作った楽曲に自分のボーカルを乗せていくことで、それもまたひとつの軸になってくれたらいいなと思いながら作っていました。

ーー新しい扉を開くのが楽しくなってきているのかも、というのは楽曲を聴いていても強く感じるところでした。

早見:そのぶん、順応していくことにはとても必死だったんですけどね(笑)。提供していただく楽曲は特にそうですが、ただボーカルを乗せて歌うというだけじゃなくて、自分としての思いを乗せて「早見沙織の楽曲」になるように試行錯誤というか、前向きなトライ&エラーを繰り返して出来上がった作品になっていると思います。

『白と花束』ジャケット

■リリース情報
早見沙織「Abyss」
配信中
https://nex-tone.link/Abyss

早見沙織 3rdアルバム『白と花束』
2023年5月24日発売

収録楽曲 全12曲 
1. Ordinary
   作詞:早見沙織 作曲・編曲:Tomggg
2. Abyss
   作詞・作曲:早見沙織 編曲:渡辺拓也
3. 残滓
   作詞・作曲・編曲:いよわ
4. ここでここで      
   作詞・作曲・編曲:清 竜人
5. Tear of Will
   作詞:早見沙織 作曲・編曲:Kevin Penkin
6. Awake
   作詞:早見沙織 作曲・編曲:TK
7. フロレセンス
   作詞・作曲:早見沙織 編曲:倉内達矢
8. 透明シンガー
   作詞:早見沙織 作曲・編曲:ぷす(fromツユ)
9. エメラルド
   作詞・作曲・編曲:諭吉佳作/men
10.Guide
   作詞・作曲:渡辺 翔 編曲:大久保 薫
11.視紅
   作詞・作曲:渡辺 翔 編曲:渡辺拓也
12.はじまりの歌
   作詞・作曲:早見沙織 編曲:大久保 薫

■ライブ情報
『HAYAMI SAORI Tour 2023 "白と花束" 』
日程&会場:
7月22日(土)北海道・道新ホール 
8月5日(土)石川・金沢市文化ホール
8月12日(土)宮城・トークネットホール仙台(仙台市民会館)
9月3日(日)福岡・キャナルシティ劇場
9月10日(日)大阪・グランキューブ大阪
9月18日(月・祝)東京・東京国際フォーラム ホールA

チケット:
5月24日(水)発売『白と花束』 <CD+Blu-ray盤>/ <通常盤>初回生産分に先行購入権抽選申込券を封入

▼早見沙織公式サイト
https://hayamisaoriofficial.com/

■衣装クレジット
ブランド名:heki

商品名・価格:
・tops ¥17,600(税込)
・skirt ¥37,400(税込)
・vest ¥7,700(税込)
お問い合わせ先:株式会社ドレッシング 03-6804-6522

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