早見沙織、歌手や声優活動を重ねたからこそ表現できる“希望の形” 「一方的に救いを与えるということではない」

早見沙織『聖剣伝説』OP曲に託した願い

 早見沙織が、テレビアニメ『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』のオープニング曲「Tear of Will」を配信リリースした。同曲は『メイドインアビス』や『盾の勇者の成り上がり』といったテレビアニメの音楽を手掛けるKevin Penkinが作曲・編曲、早見自身が作詞を担当している。

早見沙織「Tear of Will」Music Video(Legend of Mana -The Teardrop Crystal- OP)

 今年7月にTK(凛として時雨)との「Awake」、8月には渡辺翔との「Guide」と連続性を持ったリリースを行い、歌唱や作詞を含めたクリエイティブの面でも表現の幅を広げている早見。今回初めてのタッグとなるKevinと楽曲制作は、彼女にどんな刺激をもたらしたのだろうか。「Tear of Will」の制作とともに、クリエイティブの側面にもスポットを当てて話を聞いた。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】

「早見沙織というアーティストの表現としてどう伝えるのかをすごく考えた」

ーー今回の「Tear of Will」はテレビアニメ『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』のOP曲となっています。楽曲を手がけたのはKevin Penkinさん。『メイドインアビス』などでおなじみの彼とタッグを組むと聞いた時、個人的にもどんなものが生まれるのだろうとワクワクしました。早見さんは彼の作る楽曲に関して、どういった印象を抱いていましたか?

早見:初めましてのクリエイターの方とコラボさせていただくたびに、自分のなかの「全然開けたことのなかった扉」がどんどん開いていくのを感じているのですが、今回Kevinさんとご一緒させていただいたことも、まさにその最たる例で。私自身も『盾の勇者の成り上がり』や『神之塔 -Tower of God-』など、Kevinさんが音楽を担当していらっしゃる作品にキャストとして参加させていただいたこともあって。印象としては、幻想的で確固たる世界観はあるんですけど、どこか懐かしくて切ないような楽曲を作られる方という風に感じていました。

ーーそもそも『聖剣伝説』というシリーズについて、早見さんが抱いていた印象とは?

早見:『聖剣伝説』シリーズの存在自体は存じ上げていましたが、今回キャストとして演じたり、歌詞を書いて歌うということもあり、改めてプレイしました。『聖剣伝説 Legend of Mana』の宝石泥棒編が舞台になっているので、そこを中心に楽しませてもらったのですが、すごく面白かったです。歌詞を書くという作業にあたっても、ゲームの中に流れてる空気や私自身がプレイして感じたことなどを大事にしながら進めていきました。ゲーム自体もそうですが、多くの人に愛されている作品なので、アニメ化とオープニング曲の担当が発表された時に、友達から久しぶりに「『聖剣伝説』大好きなんだよね、まさか沙織が担当するなんて……嬉しい!」と連絡が来て。身近な人も含め、たくさん好きな人がいる作品なんだなと感じ、一層身が引き締まりました。

ーー基本的に早見さんがアニメの楽曲を担当される際、キャストと歌唱の両方を担当するパターンが多いと思うのですが、制作したり演じるうえで、2つの関わり方をすることによる意識の違いはありますか?

早見:違いはあるかもしれません。キャストとして出演させていただくときやアフレコをしているときは、基本的に一人のキャラクターというフィルターを通して物事を見ていきますし、自分が表現するにしてもそのキャラクターがどういう役柄だからという前提で発信します。なので、アフレコと歌唱ではまったく違う視点になりますね。今回の楽曲はキャラクターソングではないので、レコーディングひとつを取っても、どう世界を表現していくか、それを早見沙織というアーティストの表現としてどう伝えるのかをすごく考えています。

ーーある種、主観と俯瞰を同時に行なっているようなものなのかもしれませんね。

早見:そうですね。とはいえその2つの表現はまったく別のものというわけではなく、演じることで得た感情や、書くことで得た気づきを相互に活かしています。

ーー挑戦的な歌唱や楽曲の雰囲気などが、どこか「Awake」と対になっているような印象も受けますし、同曲を通過した経験が「Tear of Will」の歌唱や作詞に活きているようにも聴こえます。制作時期のズレなどはあるかもしれませんが、このあたりについてはいかがでしょうか。

早見:「Awake」が2021年の5月ぐらい、「Tear of Will」は2022年に入ってから制作したので、時系列としては間違っていないです。歌の表現という意味では「Awake」のレコーディングもそうですし、これまでの自分の曲がそれぞれ影響を及ぼしてくれていると思います。「Awake」を踏まえて変わったこととしては、コントロールブースにチームメンバーが集まって、聴きながら「こうしよう、ああしよう」という意見をより出すようになったことですね。そのなかで良いものも生まれてきますし、「Tear of Will」に関しては最初のテストで歌った時よりも、一層楽曲の壮大さに合うような歌唱や力強い感覚を表現するために、さらに磨きをかけて作っていくことができました。

ーーなるほど。実験的なトライは歌唱の随所に見られます。というより、そもそも曲が実験的というか……。

早見:Kevinさんのメロディラインや構成は、いわゆるベーシックなJ-POPではないですからね。それも今回の『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』の世界観にマッチしていますし、私の歌にも良い影響をもたらしていると思います。

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