早見沙織、冨田ラボや水樹奈々との活動経験から得た刺激 「いまは新たな扉をどんどん開いていってる期間」

早見沙織、他者との活動経験から得る刺激

 早見沙織が、アニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』エンディングテーマ「Guide」を配信リリースした。同曲は作詞作曲を渡辺翔が担当し、早見沙織の優しくも芯の通った歌声を堪能できる楽曲に仕上がっている。

早見沙織「Guide」Music Video(DanMachi season Ⅳ New Chapter : The Labyrinth Arc ED)

 2021年から「孤独や生きづらさを感じる人の心に寄り添い、光となる音楽を届ける」というテーマを掲げて音楽活動を展開する早見だが、前回の配信シングル「Awake」から引き続き、「Guide」にも光へと一歩ずつ歩みを進める力強さが感じられる。2016年にリリースした『Live Love Laugh』以来のタッグとなる渡辺翔とどんなコミュニケーションを交わして本楽曲を完成させたのか。楽曲の制作秘話と共に、直近で関心を持っている音楽作品やアーティストについて話を聞いた。(編集部)

水樹奈々との共演で変わった歌う楽曲との向き合い方

早見沙織

ーー今回の「Guide」はアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』のエンディングテーマであり、渡辺翔さんが詞曲を手がけています。タイアップということでアニメ側からの要望もあったかと思いますが、早見さんからも何かリクエストは出されたのでしょうか。

早見沙織(以下、早見):最初にアニメチームと早見沙織の音楽チームと翔さんを交えた打ち合わせを行った際には私も参加させていただいて、「戦闘部分が激しくなっていく4期の楽曲として、戦いの後を優しく包むような包容力が欲しい」というリクエストをいただきました。私からはそこを踏まえて追加で何かお願いするようなことはしていないのですが、会議を通しては「全体的に優しくて温かい楽曲だけれど、困難な状況でも前に進んでいく芯のある強さを感じることができるような楽曲になればいいな」と思っていました。

ーー いざ完成した楽曲を聴いたうえでの感想は?

早見:ああ、これはまさしく翔さんの楽曲だなと(笑)。あと、前回のインタビューでもお話しましたが、2021年から自分が音楽活動をするうえで掲げているテーマ「痛みや孤独を抱えている人に、光として届いていく音楽をやっていく」という軸があったなかで、「Awake」に続く楽曲という位置付けだったので、歌詞の中にも光という言葉が入っていますし、どんなに過酷な冒険の中でも前を向いて歩んでいく力強さみたいなものを楽曲からは感じました。

ーー渡辺翔さんとご一緒するのは、2016年のアルバム『Live Love Laugh』ぶりですよね?

早見:そうですね。その時は「ESCORT」や「水槽」という楽曲でご一緒しました。今回はお久しぶりに楽曲を手がけていただいたのですが、それだけ時間が経ったようには感じないくらい、密にやりとりをしながら、翔さんを含めたチームみんなでどんどんレコーディングが進んでいきましたね。

ーー久しぶりのお仕事で、翔さんもしくは早見さん側が意図的に変えていた・変わっていた部分は?

早見:私のほうから変えた部分でいうと、楽曲の中の歌い方や表現の仕方について「とにかく質問する」ということですね。音楽活動を始めたころは、そんな形でのアプローチをすることなんてなかったのですが、今回は自分から気になったところや表現についての質問を翔さんに直接投げかけて共に練り上げていきました。

ーーそれはご自身で作詞・作曲を多く手がけるようになったことと影響しているのでしょうか。

早見:そうかもしれません。自分が作詞をした曲だと「この部分はどういうイメージで、どういうことが軸になっているのか」というのをすべて理解した状態でレコーディングに臨むことができるんですが、自分ではない方が書いてくださった歌詞を、しっかりと解釈したり、読み解いていくことが歌い方に影響を与えることがわかったので、以前よりもより意識するようにはなったかもしれません。とはいえ、直接的にこういう意味ですかと聞くのではなく、「こういうイメージなんですか?」「こういう歌い方のほうがいいですか?」と聞くようにしていました。翔さんの歌詞は、結構いろいろな解釈ができるんですよ。ある意味で“余白がある歌詞”というか。今回の楽曲においても〈道案内は、自分で悩んで記していく〉というように明確なメッセージもあれば、〈そっと添えて、そっと持って、遠く置いて、目覚める〉というようにイメージの部分が先行してくるものがあったので、イメージが強い部分に関しては、同じものをなるべく共有したり、共通認識ができたらと思い、翔さんに事前にお話をさせていただきました。

ーー読み解いていこうという感覚や姿勢が、自身での作詞作曲を通じて変わってきた、というのは面白いですね。

早見:楽曲を100%理解した形で回路を通ると、自分の歌も変わってくるんだという経験をしたからこそでしょうし、音楽活動の中で得た経験も大きいです。3年前に水樹奈々さんが愛媛で行ったコンサート『NANA MUSIC LABORATORY 2019 ~ナナラボ~』にサプライズゲストで出演させていただいたことがあるのですが、奈々さんがその時に「声だけで対バン」といって、“声だけで2人の音楽を紡ぐ”という実験的な楽曲として「Heart-shaped chant」を2人で披露したんです。

 楽曲を歌うにあたって、奈々さんも自身で歌詞を書かれているので、「この部分はこういう意味合いイメージで書かれているんですか?」と伺っていくと、すごく意思疎通が取れた感覚があって。それがステージの上で歌うにあたって、2人の歌のリンクにもつながっていたような気がして、言葉を自分の中に落とし込んでいくこと、歌詞を自分の中で噛み砕いておくことの重要性を感じました。

ーー声優アーティストと一括りにすれど、同じように歌詞や楽曲を手がけている方は多くありませんから、近しい活動形態の先輩から舞台の上で学ぶというのは貴重な経験ですね。活動を通した新たな経験といえば、先日は冨田ラボさんのアルバムに参加もされていました。

早見:私自身、いまは新たな扉をどんどん開いていってる期間だと思っています。自分の中にあまりなかったような扉を開こうともがく部分もあれば、ずっと前から見えてはいたけど、アーティスト活動をする上では開かないと思っていた扉を開けたり。これに関しては、チームとして1つの活動テーマを決めたからこそ生まれた良い結果の1つだと思うので、私としてもまだまだ新たな扉を開いていきたいと思っています。

ーー冨田さんとは以前、「garden」(アルバム『GARDEN』収録)でご一緒していました。あの時は、早見さんのソロ曲をプロデュースしてもらうという立ち位置でしたが、客演として先方のプロジェクトで歌うというのは、経験として全然違うものでしたか。

早見:冨田さんのアルバムに参加させていただくにあたっては、「ボーカリスト」として招かれているということを強く意識しました。歌詞は坂本真綾さんが、楽曲は冨田さんが書いてくださっていて。今回、冨田さんと対談させていただいて、真綾さんが歌詞を書いて私が歌うということありきの楽曲だったと初めて知ったのですが、冨田ラボという素敵なアーティストの世界へ潜っていくような、貴重な経験をさせていただきました。改めて思い返すと、自分の楽曲を作ったり歌ったりするのとはまったく違う経験ですね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる