くるり、BLACKPINK、tamanaramen……バングラディシュにルーツを持つシャラ ラジマのディープな音楽愛

シャラ ラジマの音楽愛

 バングラデシュにルーツを持つ、東京都北区王子育ちのシャラ ラジマの初のレギュラー番組『シャララ島』(bayfm)が4月7日よりスタートした。モデル、文筆家として活動する彼女だが、音楽や漫画、居酒屋探訪など幅広いバックグラウンドを持つ。『シャララ島』は、そんなシャラ ラジマが好きなカルチャーについてディープに紹介する番組だ。

 今回のインタビューでは、番組内でも紹介したくるりやtamanaramenをはじめとした自身のリスナーとしての変遷や王子ならではのヒップホップカルチャーなど、音楽にまつわる話をたっぷりと聞くことができた。(編集部)

「こんなに良いものがまだまだあるんだよ」と広めていきたい

ーー『シャララ島』(bayfm)、毎週楽しく聴かせてもらってます。ちょっと変わったきっかけで始まった番組なんですよね?

シャラ ラジマ(以下、シャラ):そうなんです。ラジオ番組のお仕事がしたいという気持ちがずっとあったので、bayfmさんのとある番組のオーディションに応募してみたんですよ。書類が通ったので面接に来てみたら、私以外はみんなピチピチの高校生ばかりで。「なんで私呼ばれたんだろう?」と思いつつ、ガチガチに緊張しながらそのオーディションを受けたんですけど、その番組は結局ダメで。でもそのあとに「めっちゃ緊張しましたー!」って感じでみなさんと喋っていたら、それを面白がってもらえたみたいで、後日、「冠番組をやってみないか」と連絡をいただいたんです。まさかいきなり冠番組を持たせていただけるなんて思っていなかったので、私からしたら棚から牡丹餅だし、bayfmのディレクターさんには感謝しかないですよね。まだまだ未熟者なので、リスナーの皆様にむしろ育ててもらいたいという気持ちで、『シャララ島』という番組を始めさせていただきました。

ーーカルチャーにまつわるニッチな話をしたり、王子駅の「回転寿司 飛鳥」がとにかく美味しいと盛り上がったり、振れ幅が広くて面白かったです。

シャラ:(笑)。でもその振れ幅は意識してなかったです。マネージャーさんが“令和のアンダーグラウンドギャル”と言ってくださってるんですけど、何がオーバーグラウンドで何がアンダーグラウンドなのか、あんまり分からないんですよ。私自身の人間性は“下町系”で、「強そう」とか「怖そう」と思われがちだけど、角の取れたあったかい人間で……って自分で言うことじゃないか(笑)。バングラデシュの雰囲気も王子に近くて、温かくて、家族の繋がりが強い国だから、王子が自分にフィットしたんだろうなと思ってます。だけど自分の好きな音楽やアートは尖ったものが多いので、そのギャップが振れ幅に繋がってるんですかね? 『シャララ島』では音楽も漫画も映画も食べ物も、私が好きなものを紹介しながら、「こんなに良いものがまだまだあるんだよ」と広めていけたらと思ってます。

ーー今日は事前に回答していただいたアンケートを元に、音楽の趣味の変遷をお話ししてもらえればと。アンケートではすごくたくさんのアーティストの名前を挙げてくださりました。Coucou Chloe、Shygirl、Arca、Eartheater、Isabella Lovestory、ROSALÍA、Dove、Le Makeup、Kelman Duran、The Beatles、THE ROLLING STONES、裸のラリーズ、D.A.N.、yahyel、jan and naomi、GOD、goat、宇多田ヒカル……。

シャラ:たくさん書いちゃってすみません(笑)。私が音楽の話をするなんて、緊張しちゃいますね。

シャラ ラジマ

ーー順に伺えればと思いますが、まず、幼少期はインド映画を通じて音楽に触れていたそうですね。

シャラ:1歳から9歳までバングラデシュに住んでいたんですけど、バングラデシュのテレビではよくインド映画が流れているんですよ。2000年代当時はボリウッド全盛期だったから、多分、バングラデシュ含めインドの近隣の国の人たちのほとんどはインド映画を観て育ったような感じだと思います。

ーーインドは映画大国ですからね。インドの映画といえば、最近だと『RRR』が世界中で話題になりました。

シャラ:インドは広いから地域ごとに言語も文化も違うんですよ。映画に関しては、首都ムンバイで制作され、“ボリウッド”と呼ばれるヒンディー語映画、南インドで制作されたタミル語映画、テルグ語映画などがあるんですが、『RRR』や同じ監督の『バーフバリ』はテルグ語映画で、『きっと、うまくいく』はボリウッドです。私が幼少期に観ていたのは2000年代のボリウッド映画で、最近、劇中の音楽の公式ミュージックビデオがYouTubeにアップされるようになったんですよ。「わ、素敵!」と言いながらそれを観ていたら、夫(OKAMOTO’Sのオカモトショウ)が「音が多い!」と言ってて。それを聴きながら育ってきた私にとってはこの音数が普通なので「え、そんなに多いかな?」と思っていました(笑)。

ーー(笑)。

シャラ ラジマ
シャラ:あと、バングラデシュはフォークソングがポピュラーなんですよね。アジア人で初めてノーベル文学賞を獲ったタゴールという詩人の影響もあり、愛国的な詩を歌に乗せたフォークソングがバングラデシュのベースに根づいているんです。そういった環境で幼少期を過ごしていたので、私の音楽の趣味のベースにはインド映画や民族音楽がありますね。インド圏の人はとにかくたくさん踊るので、音楽と踊りが結びついているような感覚も小さな頃から自然と持っていました。

ーー日本の学校に通うようになってからは、当時流行っていたアニソンやボカロにも触れつつ、テクノやエレクトロを好んで聴いていたそうですね。日本や海外のバンドを知ったのもこの頃だったとのことで、アンケートでは、The Chemical Brothers、Gorillaz、Tame Impala、くるり、ゆらゆら帝国などの名前を挙げています。『シャララ島』の初回放送ではくるり「GUILTY」を紹介していましたね。

シャラ:中学時代に隣の席だった男の子がフジファブリックが好きだったんですよ。それがきっかけでフジファブリックを聴くようになり、他のバンドも知っていったんですけど、特にハマったのがくるりでした。当時は2000年代以降のアルバムを中心に聴いていました。だけど今(「GUILTY」も収録されているアルバム)『THE WORLD IS MINE』を改めて聴いてみたら、「2002年にこんなにカッコいい音楽をやってたの?」ってめっちゃ感動して。今改めてこの歌詞を聴くとやられちゃいますね。〈いっそ悪いことやって/つかまってしまおうかな〉って言ってみたい……!

ーー確かに、歳を重ねたからこそ心に響く歌詞ってありますよね。

シャラ:そうですね。そもそもインストの音楽が好きだったのもあって、私は基本“音”重視なんですよ。バンドが好きと言っても、歌詞やメンバーの人柄、バンドのストーリーに注目していたわけではなく、ほとんどギターの音を聴いているようなものだったし、クラブに行くのは飲んで騒ぎに行くというより、踊って音を聴きに行き、DJのライブを深夜帯に聴きに行くようなものだった。でも最近ヒップホップをきっかけに歌詞にも注目しながら音楽を聴くようになって、そのタイミングで改めてくるりを聴いてみたら、心にめっちゃ響いたんですよね。

ーーヒップホップについては後ほどまた聞きますね。初めてライブハウスに行ったのはいつでしたか?

シャラ:高校生の頃、友達に誘われて初めてライブハウスに行きました。そこで「日本にもいろいろなバンドがいるんだ!」と知って以来、ライブハウスにはめちゃくちゃ行きましたね。初めて一人で観に行ったのはCuusheというアンビエント/エレクトロ系のアーティストのライブ。国立新美術館のメディア芸術祭で観たアニメーションの音楽がめちゃくちゃ良くて、調べてみたら、たまたまライブをやっているということで観に行って。私にとって現場に足を運ぶことは大事なことで、生で聴いて、グルーヴを感じたいという気持ちがあるんですよ。ライブで「めっちゃいいじゃん!」ってなってから、アルバムとかを聴くようになるという流れが多いですね。

ーー因みに、『シャララ島』の初回放送で紹介したtamanaramenはどういうきっかけで知ったんですか?

シャラ:tamanaramenは姉妹でやっているユニットなんですけど、2人とは元々友達なんですよ。とにかく私はライブハウスにすごく行くから、そこでミュージシャンと知り合って、友達になることが多くて。tamanaramenの2人もそうでした。初回放送の最後には「friday」を流そうとずっと決めていましたね。『シャララ島』では今後も私が実際にライブ会場に足を運んで、いいなと思った音楽を中心に紹介していけたらと思っています。

シャラ ラジマ

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