ALI、音楽でこそ肯定できる“人生の美しさ” あらゆる制約を飛び越えて熱狂を生み出した『MUSIC WORLD』ファイナル

ALI『MUSIC WORLD』ファイナルレポ

 振り返ればALIの歴史は、もっと遡ればLEOの音楽遍歴は、決して順風満帆なときばかりではなかった。むしろ紆余曲折と困難の連続だったといってもいい。だがどんなときでも彼のそばには音楽と、それをともに鳴らす仲間がいた。メンバーにトラブルが起きたときにも、彼らはひたすら曲を作り続けていたという。そんななかの1曲こそ、「俺たちがすべてを失いかけたときに『それでも音楽が……!』と思って作った。みんなのために歌うので聴いてください」と歌われた「MY FOOLISH STORY」だ。ピアノのソロから、ゆっくりと音が重なっていく。〈I’m all for you〉と繰り返されるこの曲は、いわば音楽に向けられた愛の告白だと思う。思いをたっぷり込めた歌声に、オーディエンスはじっくりと耳を傾けていた。

ALIライブ写真

 そしてストリングスの流麗な響きが流れるなか「CLIMAX BULLETS」を披露すると、ここでLEOが一旦退場。バンドによるインストナンバー「CIRCLE」がフロアを盛り上げるなか、ステージに帰ってきたLEOが盟友であるラッパー・KAZUOを呼び込む。KAZUOのキレキレのラップが終盤に突入したライブをビシッと引き締める。「Wild Side」に続いての「NO HOME NO COUNTRY」ではコール&レスポンスも巻き起こり、「FIGHT DUB CLUB」ではLEOはフロア最前列の柵に立ってオーディエンスをアジテートしていく。ライブが始まって1時間あまり。EX THEATERを包む空気はどんどん自由に、そしてエキサイティングになってきている。

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 と、ここでALIをここまで押し上げた立役者とも言える楽曲が披露される。イントロから歓声が巻き起こった「LOST IN PARADISE feat. AKLO」だ。熱狂のステージに帰ってきたAKLOが再び燃料を投下すれば、ものすごい一体感がステージとフロアを結びつけていく。ホーン隊にコーラス、ドラムにベースにギター、すべての音がぎゅっとひとつの塊になって感情を掻き立てる。音楽が、バンドがある意味とは何か。そんなややこしい問いに対する一発回答。今ステージでALIが見せているのはそういうものだ。

 「死にたくなるような夜を何度も乗り越えてきた俺たちだから、今こう思う。人生って美しいなって」。満員の観衆を前にそう言い切ったLEO。大きな拍手が送られるなか、彼はこう続けた。「誰も肯定してくれないとしても、俺が肯定してやるよ。お前の人生は美しい、生きる価値がある」。音楽に救われた彼だからこそ、音楽を通して誰かを救うことができる。言葉にすれば簡単だが、この日EX THEATERに集まった人々はLEOの語る言葉が真実だということを実感できたはずだ。ステージ上のミュージシャンだけではない、フロアの全員も含めた音楽集団としてのALIは、最高潮でライブのクライマックスに突入していく。本編最後の曲は「Life is wonderful and beautiful!」という言葉で締めくくった「(BUT)WONDERFUL」。人生を肯定する裸のような歌が会場を温かく包み込んだ。

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 アンコールではインスト「A NIGHT IN SAUDI ARABIA」に始まり、「NEVER SAY GOODBYE」を披露。ここで満を持してステージに登場したのが、念願のコラボとなった大先輩、RHYMESTERのMummy-Dだ。さすがのオーラを発揮しながら鮮やかなヴァースをキメるMummy-DにLEOの万感を込めた歌が絡む。サウンドのスケール感も含めてアンコールにふさわしい豪華な競演に、Mummy-Dも「出し切った!」と満足げに帰っていった。そしてアルバムとツアーのタイトルにもなっている「MUSIC WORLD」へ。ステップを踏みながら歌うLEO。ドラム、ベース、ギターと重なった音は、そのままラスト「Funky Nassau」へと流れ込んでいった。「音楽万歳!」。全員でジャンプして最後のひと暴れをしながら、LEOが叫ぶ。バンドでもない、オーディエンスでもない、最初から最後までこのライブの真ん中には音楽があった。音楽を愛し、音楽に愛された男たちがたどり着いた舞台。やり切ったLEOは最後、ゲストも含めた全員で挨拶をするときも終始晴れやかな表情だった。

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