伊藤美来が今、リスナーに届けたい全肯定のメッセージ 6年間の歌手活動で芽生えた強い意志

伊藤美来、リスナーに贈る肯定のメッセージ

 伊藤美来が、4thアルバム『This One's for You』をリリースした。前作『Rhythmic Flavor』から2年2カ月ぶりに制作された今作のテーマは“ギフト”。伊藤がリスナーに届けたい想い、“次の日を生きる活力”になるような楽曲を詰め込んだアルバムとなった。

伊藤美来 4thアルバム『This One's for You』ダイジェスト試聴

 声優として多忙の日々を過ごしながら、2016年のソロ歌手デビュー以降、コンスタントに音楽活動を展開してきた伊藤美来。ファンに支えながら歩んできた音楽の道も、今では彼女自身がリスナーを先導し、それぞれの人生にエールを贈るような頼もしさが作品からも伝わってくる。

 彼女が“ギフト”という言葉にどんな意味を見出し、様々なクリエイターと共に作品として昇華したのか。『This One's for You』に込められた願い、アーティストとしてのこれからの決意を聞いた。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】

今回は100%リスナーの皆さんに向けてのプレゼント

伊藤美来
伊藤美来

ーー伊藤さんにとって2年2カ月ぶりの4thアルバム『This One's for You』には、“ギフト”というテーマが設けられています。このテーマはどういう流れで生まれたものなんですか?

伊藤美来(以下、伊藤):アルバムを作りますと決まったときに「どんなテーマにしよう?」と打ち合わせをしたんですけど、そのときはあまりピンと来るアイデアが出なくて。そこから「今、私がリスナーだったらどんなアルバムが欲しいかな」と自分目線で考えてみたときに、「肯定してもらいたい」とか「大丈夫だよ」と言ってもらえるようなアルバムができたら、日々生活していく中で助けになるな、そういうアルバムが作れたらいいなと思ったんです。で、そこから「つらいこと、大変なことも全部自分への贈り物なんだ、ギフトなんだ」と思うと「頑張ろう、乗り越えよう」という気持ちにもなるのかなと。さらに、これまで応援してくださった方の声も私にはギフトだし、このアルバムも皆さんにとってのギフトになったらいいなという意味を込めて、このテーマに決めました。

ーー前作『Rhythmic Flavor』はコロナ禍に入ってからの1枚でしたが、今作を届ける姿勢に変化はあったのでしょうか?

伊藤:『Rhythmic Flavor』のときは、それまで挑戦してきたいろいろな音楽性が固まった上で、さらに「こんな歌もあるよ、こんな音楽もあるんだよ」っていうカラフルな楽曲が集まったアルバムで、あのときは「幸せになってほしい」という気持ちを詰め込んだんですけど、今回は100%リスナーの皆さんに向けてのプレゼントとして作る気持ちで臨みました。もちろん今回も新しい挑戦がたくさん散りばめてはあるけれども、それ以上に「皆さんに届けたい」という気持ちをより強く持ったアルバムなのかなと思います。

ーーそれも影響してなのか、『Rhythmic Flavor』はカラフルさが強い、横に幅広く挑戦した作品でしたが、今回は伊藤さんが得意とする「私のポップスってこれだ!」っていうものを奥深くまで突き詰めたような内容で、軸が前回とは違っている印象を受けました。

伊藤:まさに1枚のまとまり方もそれくらい違うと思いますし、『Rhythmic Flavor』を経験したからこそできる深掘りなんだと思います。

ーー“ギフト”は贈り物やプレゼント以外にも、与えられた才能という意味も持ちます。伊藤さんが“ギフト”という言葉からイメージすることは、どういったものでしょう?

伊藤:私が最初にこのテーマを思いついたときは、やっぱりプレゼント的な、誰かのことを思って贈るもののイメージが強かったです。でも、そこからいろいろ調べていくと、物だけではなくて起こる出来事とか気持ちとかも全部プレゼントやギフトになるんだと気付かされました。

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ーーなるほど。アルバムは既存のシングル曲をベースに全体の世界観をまとめていったと思いますが、新たにどんな色を加えていきたいと考えましたか?

伊藤:まずは、聴いてもらった方に“次の日を生きる活力”を与えられたらいいなと思いました。「日々生きている中で起こるいろんなことは、全部あなたのために起こっていて、それもギフトなんだよ、だから大丈夫だよ」と。大変なことも素直に受け止めて、それを全部楽しんじゃおうというポジティブな気持ちをたくさん曲に乗せられたら、届けられたらいいなと思ったので、全体的にも明るい楽曲、前を向ける楽曲で揃えられたらと考えました。

ーーここからはアルバムの流れに沿いつつ、新曲中心にお話を伺っていきます。まず1曲目の「laid back」ですが、肩の力の抜けたボーカルから心地よい緩やかさが伝わります。

伊藤:ハッピーなイメージがあるアルバムではあるんですけど、そんな気張って聴いてほしいわけではないので、1曲目からゆるやかに、のんびりと聴いてほしくて。だから、1曲目でテンポがゆったりな楽曲にするのは、自分的にも挑戦でした。メロディやトラックも、聴いているだけでちょっと眠たくなるくらいリラックスできるテイストなので、歌い方もそれに合わせて距離感を近くしたくて、語るように、喋るような歌い方を意識してレコーディングに臨んだんです。

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ーーこの歌い方を聴いていると、前作で挑戦した成果がしっかり活きていると感じます。

伊藤:うれしい。本当に前作で挑戦した経験があるからこそ、一発目にこれを持って来ることができたと思うので。

ーーこの曲に限らず、本作における歌い方のバリエーションは前作以上に幅が広がった印象もあります。

伊藤:私自身はあまり感じていない、と言ったらおかしいですけど(笑)、特にこの曲で絶対にこうしてやるっていうのはなく、いつもどおりに歌ってはいたんですけど。でも、完成したアルバムを聴いてみると「ああ、私ってこんな声も出せたんだ」とか「こんな歌い方とか、こんな語尾の収め方ができるようになったんだ」とか、自分でも感じたので驚きでした。

ーー「laid back」のレコーディングでは、どのようなディレクションがあったんですか?

伊藤:実はこの曲、心も体もリラックスした状態で声が出せるように、日常喋っているトーンの延長で声が出せるようにと、座ってレコーディングをしたんです。あと、歌詞でもちょっと韻を踏んでいたりするので、緩やかなラップをイメージしてリズム感を守ることも大事にしました。

ーー座って歌ったからこそ、いい感じに力が抜けていると。スタートとしては斬新な1曲ですね。

伊藤:“ギフト”がテーマでハッピーなアルバムだと思ったら、この曲から始まるギャップがありますよね(笑)。

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