back number、遊び心あふれる最新作『ユーモア』がチャート1位に 充実した収録曲が示すバンドの今

 そのうえで最新作『ユーモア』について。タイトル通り、真面目一辺倒とはまるで違う遊び心がたくさんあります。たとえば彼らにしては珍しくヒップホップ寄りのグルーヴを持つ「Silent Journey in Tokyo」。これからの人生を問い直す歌詞ですが、〈愛ってのはね 呪いみたいなもんだからね 望んだのはご自分ですって〉なんて突き放す一言を、あの「高嶺の花子さん」の清水が書くの? と目から鱗。ものすごく切実なことを歌いながら、自ら逆の言葉でひっくり返してみせる筆致は、この人の武器のひとつなのでしょう。

 さらに後半の「ヒーロースーツ」。わちゃわちゃしたポップソングで、ホーンとストリングスが入り乱れるカラフルな一曲。生まれつきヒーロー気質ではない自分を見つめるところから始まる歌い出しは相変わらずですが、実は〈僕だってあそこのヒロイン抱きよせて/変形するロボット乗り回したい〉、さらには〈どさくさに紛れて黒幕倒して〉などなど、野望が爆発。自分の中の二面性を自分なりに遊んでみせる余裕がいいですね。

 決定打は「添い寝チャンスは突然に」。1分半で駆け抜ける高速ロックンロール。週末の部屋で二人きりとなったお相手に、主人公は〈私明日お休みです〉とさりげなくアピールするも、相手は無反応。それどころか〈つまんないテレビを見てる〉。やきもきする展開にどんな行動を取るのか……そんなワンシーンを描いた一曲。これこそユーモア。ていうか、これぞ清水依与吏の手による令和版「ズルい女」! 男性がリードするものという定説は過去になりましたが、恋愛における巧みな駆け引きは今だって永遠ですね。

 タイアップ多数、大ヒット作品に花を添えた名曲もたっぷり。国民的なヒットメイカーの名に恥じない内容ながら、細部には遊びがたっぷり。この充実が今のback numberなのだとよくわかる一枚でした。

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