浪川大輔、他者の個性を引き出すトークスキル　演技・音楽からも感じられるパーソナルな魅力

　誰かと相対した時に魅力が発揮される、といえば、吉野裕行とのユニット・Uncle Bombでのアーティスト活動においても同じことが言える。確かな表現力と確立された個性があるベテラン声優のふたりが、双方の個の魅力を生かして化学反応を起こしていく楽曲群は、シンプルにかっこいいものばかりだ。その“かっこよさ”とは、スタイリッシュであるという意味に留まらず、大人が魅せる生き方であったり、経験に裏打ちされた存在感を、お互いが引き出し合っているような“かっこよさ”だ。その姿勢にリスナーは勇気づけられ、元気をもらい、精神的な充足感を得られるのである。彼らの活動は音楽だけに留まらず、昨年末から2人がお笑いに挑戦するバラエティ番組『Uncle Bomb お笑い単独ライブへの道』（U-NEXT）が配信され、話題となったことも記憶に新しい。音楽であろうとバラエティであろうとエンターテインメントに真っ直ぐな姿は実にUncle Bombらしく、私達を元気にしてくれるのである。

　ソロの音楽活動においても、実力ある声優だからこそ説得力があり、他者とのコミュニケーションを大切にしているからこそ生まれているのだろうと察せられる楽曲やパフォーマンスも多い。昨年リリースされたシングル『鼓動』においてもその姿勢は顕著である。ひとつのテーマを掲げながら、聴く者を飽きさせない多彩なジャンルの3曲が収録されており、いずれも聴き手の存在を強く意識した作りがなされているのだ。ある人にとっては癒しであり、ある人によってはカンフル剤となり、時に寄り添い、時にときめかせ……と人間の持つあらゆる感情にアプローチするような音楽を紡いでいる。

　共通しているのは、彼の表現活動のすべては、彼の持つ人間的な魅力と切っても切り離せない、という点である。演技からも音楽からも、はたまたトーク番組からも、相手へのリスペクトと愛情深さを感じずにはいられない。そんな唯一無二のアーティストは、次はどのような表現で我々を驚かせてくれるのだろうか。