桑田佳祐ら“5人の同級生”が紅白の舞台へ ロックンロールでこそ鳴らせる、苦難の時代を生き抜く切実なメッセージ
〈そんなちっぽけな者同士 お互いのイイとこ持ち寄って〉というフレーズは、5人が集まったことの意義を歌っているようだ。もちろん個々でも大きな影響力を持つが、それが5人集まれば5倍以上。『NHK紅白歌合戦』出場にまで至る、大きなトピックとなった。また〈子供の命を全力で 大人が守ること それが自由という名の誇りさ〉は、幼い子供の命が奪われるニュースが数多く聞かれることへの憂いや、次世代にどんな世界を残してあげられるのか、大人の責任と義務を歌っている。そしてウクライナをはじめとする世界中で未だ止むことのない紛争問題も思わせる〈No More No War 悲しみの 黒い雲が地球を覆うけど〉というフレーズ。
いつしか日本のロックは、メッセージ性が薄れていっていた。それは、日本が戦争のない平和な国で、リアリティを感じなかったからだろう。世界的に見れば、この数十年で湾岸戦争など多くの戦争が起きていたが、日本に住む多くの人にとってはどこかテレビのニュースの中の出来事のようだった。しかしインターネットが発達したことによって、海外のニュースや映像がリアルタイムで配信される時代になった現在、ウクライナ問題はより身近なものとして危機感を覚えさせた。物価高という直接的な影響を受けていることも、大きな関心事になっている要因の一つだろう。またコロナ禍という未曾有の災厄に対しても、世界の状況や各地の状況を伝えるツールとしてネットやSNSが活躍し、今や一人ひとりがニュースリポーターと言っていいほどだ。そんな中でアーティストは何を考え、何を伝えるべきか、今はそれがより問われる時代だと言える。
その問いに対する音楽人・桑田佳祐の答えが、この「時代遅れのRock’n’Roll Band」なのかもしれない。こうしたメッセージの伝え方は、どこか古くさくてダサいという人もいるのかもしれない。しかし、まるで学生時代に戻ったような雰囲気で、5人がほうきをギター代わりにして歌うMVを観た、かつてのロックキッズは何を思っただろうか。「当時夢見ていた、豊かで平和な世界を、もう一度目指してみないか?」と、“時代遅れのRock’n’Roll Band”が語りかけている。
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