加山雄三、小田和正、矢沢永吉……ライブにおける最年長記録を塗り替えるレジェンドたち 半世紀以上も輝き続ける理由とは?
加山雄三、小田和正、矢沢永吉(年齢順)は、3人とも実に50年以上に渡り第一線で活躍しているアーティストと言える。半世紀以上に渡って歌い、曲を作り続けてきた最大の理由は本人たちのバイタリティに他ならないが、それ以外の要因について、考察してみたい。
加山雄三は、俳優、タレント、ミュージシャン/シンガーソングライター、画家と様々な顔を持ち、そのフットワークの軽さが、活動の幅をどんどん広げていった。例えば、2013年に宮城県仙台市で行われた野外ロックフェス『ARABAKI ROCK ROCK FEST. 2013』に出演したことをきっかけに、ロックバンド THE King ALL STARS(メンバーは加山の他に、キヨサク、佐藤タイジ、古市コータロー、ウエノコウジ、タブゾンビ、スチャダラパーほか)を結成するなど、その紳士的な性格と音楽に対する旺盛な好奇心から、世代を超えた交友も多い。甲本ヒロトや奥田民生なども加山に楽曲提供している。また、ライブ活動の有終の美を飾る『NHK紅白歌合戦』には、本年で18回目の出場となり、そのうち3回で司会も務めている。
1970年にオフコースとしてデビューした小田和正は、1989年からソロ活動を本格化。一度聴いたら忘れられない頭上にスコーンと抜けるような澄んだハイトーン、流麗でしなやかなメロディラインで数々のヒット作を世に送り出した。なかでも1991年に発売された『Oh! Yeah!/ラブ・ストーリーは突然に』は、オリコンシングルチャートで第1位を獲得し、258万枚を売り上げてダブルミリオンとなっている。以降、多数の曲がドラマやCMなどに起用され、小田の歌声と楽曲は、幅広い世代に浸透していった。1970~80年代に活躍したアーティストの当時のヒット曲がCMなどに使用されリバイバル的にヒットすることはあるが、小田の場合は旧/新曲、両方ともヒットにつながるという稀有なヒットメイカーとしての地位を確立している。
矢沢永吉は、1975年のソロデビュー以降、己の中での“ロック”という美学を貫き続けている。例えば、1978年、資生堂のCMソングに起用された「時間よ止まれ」が大ヒットした際、ライブを大事にしたいという理由から音楽番組にほとんど出演しなかった。テレビへの出演は当時の矢沢にとっては美学に反することだったのである。矢沢の美学は“矢沢らしいかそうじゃないか”という選択肢の歴史だ。近年ではCM出演時の演出など、その選択の基準に一貫した美学が感じられる。また、この美学をファンと共有するために、オフィシャルHP上で、変遷する時代や音楽シーンの中で、次々と出てくる新しいルールのアナウンスを徹底して繰り返した。この美学の継続と共有が「矢沢永吉」というブランドになり、唯一無二の存在になったのだ。
加山雄三、小田和正、矢沢永吉。この3人に共通することは、フォロワーと呼ばれるようなアーティストが出てきていないこと。つまり、誰も真似できないことをやり続けてきたということである。継続は力なりという言葉があるが、この3人にとって継続は、ただの力を超えて個性と存在感につながった。そしてそれは、聴き手をはじめ、彼らの後輩たちを含む様々なアーティストのエネルギーにもなっている。
存在自体が目標になるーーそんな“最高齢”“最年長”アーティストの背中があるからこそ、私たちもまた新たな一歩を踏み出そうと思うことができるのだ。本原稿では、加山雄三、小田和正、矢沢永吉にスポットを当てたが、他にもこんな風に思わせる現役ベテランアーティストはたくさんいる。今の日本の音楽シーンの礎を作った彼らの音楽に、この年末年始、触れてみるのはいかがだろうか。
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