Mrs. GREEN APPLEは前人未到の次元へ 華やかな絶景が次々に生まれた初のスタジアムツアー

ミセス、初のスタジアムツアーレポ

 Mrs. GREEN APPLEの『ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~』、7月21日の横浜スタジアム公演。オープニングムービー放映後、ステージの2階部分に登場した大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)がポーズをキメると、とんでもなく大きな歓声が上がった。歓声の熱量から、ライブを楽しみにしていた観客の想いが伝わってくる。ミセスにとって初めてのスタジアムツアーではあるが、ライブのクオリティについては全く心配してないし、むしろ「今日も素敵なものを見せてくれるはず」という信頼しかない。そして思った通り、彼らはライブスタートの瞬間からスタジアムを完全に掌握していた。観客の熱狂も、リッチな演出も、彼らの手の中にある。

 3曲目「ANTENNA」のラストで両手を大きく広げた大森が、手を振り下ろす仕草に合わせてバンドが音を鳴らしたのち、大森のターンとともに次の曲「ロマンチシズム」へ突入するシーンなんて、ポップスターとして来るところまで来ている感じがある。ダブルアンコールにまで及んだライブのエンディング、「ケセラセラ」のアウトロ(ライブだけで聴けるアディショナルアレンジである)をバンドが華やかに鳴らす中、スキャットしまくる大森の背後で花火がバンバン上がっていたのも、最高のシーンとして記憶している。

 神戸・横浜で4日間にわたって開催されたライブは、忘れ難い夏の思い出として来場者一人ひとりの心に刻まれたことだろう。サポートメンバーの森夏彦(Ba)、神田リョウ(Dr)、兼松衆(Key/Gt)含め、全員で燃焼するように鳴らしきった「アポロドロス」のアウトロ、藤澤の奏でるフレーズにジェット機のエンジン音が重なったのは野外ライブならでは。また、「青と夏」「ライラック」「橙」「点描の唄」と続いたブロックは、ライトスティック/ライトバンドの光や、季節感を際立たせる映像&SEも相まって、かけがえのない時間を演出してくれた。

大森元貴

 メンバーは、そんなライブを観客と一緒に楽しみつつ、目の前の光景を有り難いものとして噛み締めている様子だ。今までと同様、観客を“大衆”として大雑把に捉えることはせず、一人ひとりに届けているのだということを、大森は「4万人が同じ場所に集まるなんて、普通のことじゃないですから。当たり前になることはないけども、一人ひとりに感謝の気持ちを伝えたいです。ありがとうございます」という言葉で伝える。その上で「意外にも我々は、“一人ひとりに感謝を”という曲をインディーズ時代にリリースしているわけですね。それを高らかに歌いたいと思います」と「我逢人」へ繋げていたのも印象的だった。

若井滉斗

 「我逢人」は2015年リリースのミニアルバム『Progressive』に収録されているが、Mrs. GREEN APPLEは、デビューよりも前から『ゼンジン未到と○○』というタイトルの自主企画ライブを開催している。初回は、2014年7月に渋谷LUSHで開催された『ゼンジン未到とコンフリクト~前奏編~』。キャパ200人台のライブハウスから始まった“ゼンジン”シリーズが、いよいよスタジアムツアーにまで発展、というのも今回のツアーにおける重大なトピックだった。

藤澤涼架

 6曲目に演奏された「CONFLICT」は「我逢人」と同じ『Progressive』収録曲で、“ゼンジン”シリーズで披露される頻度の高い曲。会場がZeppになろうと野外になろうと、“ゼンジン”の名のついた公演ではミセスの楽曲の源泉となる感情=葛藤に言及した曲を歌うこと、そうして原点を確かめることはバンドにとって大きな意味があったはずだ。そんな曲をスタジアムで鳴らす現在の3人は、やはり感極まっている様子だ。慈愛に満ちた表情を浮かべる藤澤。全身を使ってギターを掻き鳴らす若井。大森は晴れ晴れとした表情で、胸をトントンと叩きながら、〈僕らの抱いたこの夢は/誰のものでも無く/「私」のものだ〉というフレーズを歌っている。演奏直後のMCでは、大森&若井から泣いてたんじゃないかとツッコまれた藤澤が、「スタジアムで『CONFLICT』をやってると思ったら、ちょっと……」と言葉を詰まらせていた。

 ドーム公演『Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 “Atlantis”』を成功させ、各種年間チャートを席巻し、『NHK紅白歌合戦』初出演を果たした2023年を終えてもなお、活動ペースを落とすどころか加速させっぱなしのMrs. GREEN APPLE。「我々、先日新曲をリリースしました。どれだよって話ですよね(笑)」というMCがもはやジョークにならないレベルだが、多忙な日々、怒涛のクリエイションが、バンドを前人未到の次元へと押し上げていることが伝わってくるライブでもあった。

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