水樹奈々、ライブとファンへの愛 『LIVE RUNNER 2020 → 2022』『LIVE HOME 2022』2つの公演を通して届けた思い
水樹奈々が、Blu-ray&DVD『NANA MIZUKI LIVE HOME × RUNNER』を12月21日にリリースした。同作は、2022年に開催した3年ぶりのツアー『LIVE HOME 2022』と2022年1月に開催した841日ぶりの有観客ライブ『LIVE RUNNER 2020 → 2022』という2つのライブを収録したもの。そのリリースに際し、今回リアルサウンドでは水樹奈々にインタビュー。共にコロナ禍でのライブが自由に開催できない期間を経てのライブになった公演は、自身の軌跡を示すもの、ファンへの感謝を示すものとなった。それぞれのライブについてセットリストや演出などに込めた思いを聞いた。(編集部)
これからも走り続けていくという決意表明
――841日ぶりの有観客ライブ『LIVE RUNNER 2020 → 2022』と3年ぶりのツアー『LIVE HOME 2022』の2本立てとは、ここまで重要なライブがパッケージされるのも珍しいですよね。
水樹奈々(以下、水樹):これまでも水樹奈々のライブパッケージは、2つのライブがミックスされる超ボリューム版が定番だったんですが、特に今回はコロナ禍でライブができない日々が続いていて。ようやく皆様にお会いできたライブと3年ぶりのツアーという、どちらも待ちに待った爆発力のあるステージがパッケージされているので、これまで以上に熱量の高いものになったと思います。
――コロナ禍を経ての2022年の歩みが、ある意味この1作に集約されているといっても過言ではないのではないかと。
水樹:まさに1月の『LIVE RUNNER 2020 → 2022』で感じた想いが、7月にリリースしたアルバム『DELIGHTED REVIVER』に落とし込まれて、それを携えての『LIVE HOME 2022』になっているので、全てが繋がっているんですよね。この2つのライブを経て“まだまだ私たちの旅は続いていく”という未来に向けての希望を表すように、ジャケットのビジュアルも『LIVE HOME 2022』の舞台セットと同じくアメリカ西部をモチーフにしました。
――なるほど。『LIVE HOME 2022』から地続きで、また次の旅が始まるということですね。ちなみに『LIVE RUNNER 2020 → 2022』は、2020年に予定していたデビュー20周年記念ツアーのタイトルやコンセプトを引き継いだものだそうですが、そもそも何故20周年記念ツアーを『RUNNER』と名付けたんでしょう?
水樹:もともとはアルバム『CANNONBALL RUNNING』(2019年12月リリース)を携えてのツアーだったので、そこから“RUN”という言葉を取っていて。さらに20周年という節目を迎え、私の走ってきた道のりを皆さんに体感してもらいつつ、これからも走り続けていくという自分の決意表明を込めて『RUNNER』というタイトルを付けました。なので、セットリストもアルバムの曲を軸に置きつつ、20年間の歩みを皆さんに感じていただけるような代表曲がラインナップされていて、その構成は『LIVE RUNNER 2020 → 2022』でもほとんど変わっていないんですよ。私のツアーは日替わり曲が多く、この公演では17公演で50曲くらい用意していたので、それをどう2日間に落とし込むか? というところに頭を悩ませました(笑)。
――単なるアルバムツアーではなく、20周年を記念して水樹奈々らしい攻撃的なアッパーチューンがふんだんに盛り込まれたライブというのは、奇しくも841日ぶりの有観客ライブにもピッタリの内容ですもんね。
水樹:そうですね。それは本当に偶然が重なった結果でした。20年の間に生まれたどの曲が欠けても今の水樹奈々はいない。その大事な曲たちを今一度噛みしめながら皆さんに届けるというところで、どの曲をチョイスするのか? というのは、最初のセットリスト会議の時点ですごく審議しましたね。結果、ライブ定番曲や節目に歌ってきた曲たちが多くラインナップされました。レコーディングしたきり眠ったままになっていた『CANNONBALL RUNNING』の楽曲をようやく皆さんに届けられるということで、その曲たちとのバランスを見ながら構成も熟考して。楽曲ってCDに収録されて完成ではなく、みんなと一緒にライブで成長していくものだと思っているので、公園デビューじゃないですけど(笑)、やっとみんなに認知されて自由になる日が来た! という喜びが爆発しました。――個人的には「innocent starter」での歌で魅せる力と、「TRANSMIGRATION」で感じたロック魂が特に印象的でした。
水樹:「innocent starter」は初めて自分がヒロインの1人を演じた作品(『魔法少女リリカルなのは』)のオープニングテーマであり、初めてオリコンのトップ10にもランクインした、とても思い出深い曲なので、自分の歩みを語るときに絶対に外せない1曲で。「TRANSMIGRATION」も1stアルバム(2001年リリース『supersonic girl』)の収録曲で、この曲から水樹らしい歌謡ロックのスタイルが始まった、大きなターニングポイントの1曲なんですよ。今回、本編では空中を飛ぶわけでもなく、ロボットやクジラなどの大きな乗り物に乗ることもなく(笑)、シンプルに歌と音楽を届けることに注力したので、より歌がフィーチャーされたのかもしれません。
――節目になる曲が組み込まれているだけに、20年の歩みに立脚する“心”が伝わるライブになっていましたよね。ただ「Red Breeze」では史上最大量の火薬を使った花火という、20周年ならではの演出が凄まじくて!
水樹:そうなんですよ(笑)! 20周年って、やっぱりお祭りじゃないですか。お祭りといえば花火っていうストレートな発想と、水樹のライブといえば「ETERNAL BLAZE」を筆頭に炎が印象的に使われることが多いので、“今までの炎の集大成を見せたいです! 奈々といえば七色なので、炎がいろんな色になったらいいなぁ”って演出家さんにお願いしたんです(笑)。
――そのオーダーが見事に実現されていましたが、あれだけ派手な花火はレア中のレアですよ。
水樹:目の前が煙で真っ白になりましたからね(笑)! ステージ上はめちゃくちゃ熱いし、火の粉は飛んでくるし、火薬の匂いもすごいし……。あんなに空気の悪いところで歌うのは、だいぶチャレンジャーだったなと思います(笑)。
――オーデイエンスは声が出せないからと“ヘイヘイ!”とか“シャッス!”という音声がボタン一つで出るペンライトも画期的でしたね。
水樹:鳴り物は普段は禁止なのですが、こういうときだからこそペンライトを使って何かできないかなと、私からスタッフさんに提案したんです。MCのときとかに掛け合いができたら嬉しいなって。
――いや、絶対嬉しいと思います。そういったファンへの“愛”というものが、このライブ1本を通して強く押し出されているようにも感じました。本編のラストは「ALL FOR LOVE」、パッケージに収録されている2日目に歌われたダブルアンコールの「深愛」と、いずれも“愛”の歌で締めくくるのも元からの予定だったんでしょうか?
水樹:そうです! 20周年を記念したライブだったので、皆さんへの感謝の気持ちを伝えるステージにしたかったんですよね。『CANNONBALL RUNNING』というアルバム自体、20年走り続けることができたのは応援してくださる皆さんがいてくださったからこそという感謝の気持ちを噛み締めながら楽曲をセレクトして制作を進めていったので、自然と“愛”をテーマにした曲が揃っていったんです。その曲たちを主軸に置いて構成したので、ライブも自然と“愛”がテーマになりましたし、コロナ禍を経ての久しぶりの有観客ということで、さらに人と人との繋がりや人の温もりの大切さを伝えたいという気持ちが湧いてきて。それがさらに大きな“愛”になって皆さんに届けられたのかなと思います。