水樹奈々、ライブとファンへの愛 『LIVE RUNNER 2020 → 2022』『LIVE HOME 2022』2つの公演を通して届けた思い
笑顔になれる時間を届けたい
――間違いないですね。そして夏には“自分たちのホームグラウンドであるツアーに帰ってきた”という想いを込め、『LIVE HOME 2022』と名付けられた5都市10公演にわたるツアーを開催されましたが、そのイメージをセットや衣装で具現化するビジュアルモチーフとしてなぜアメリカ西部を選ばれたんでしょう?
水樹:いろんな経験をし、長い道のりをたどって家路につくというイメージから浮かんだのが、先の見えない険しい道が続いていく荒野だったんです。焼けつくような太陽にジリジリ照りつけられ、予想もしないハリケーンが来そうな過酷な場所……と考えたときに、あのアメリカ西部から南部の赤土の似合う砂漠地帯をモチーフにして舞台セットを作りたいなと。――やっぱり“険しさ”というのは一つのポイントだったんですか?
水樹:はい! 3年ぶりのツアー開催に至るまで、みんな本当にいろんな想いをして、いろんな壁を乗り越えてきた……、その紆余曲折だったり険しい道のりを、一目で表現できるものにしたかったんです。まっすぐな一本道を快適にドライブするのではなく、自分の足で一歩一歩歩いていくバックパッカーのイメージですね。
――オープニング映像も、まさしくそんな情景でしたよね。そんなアメリカのワイルドな空気感に合わせてか、パッケージされたツアー最終日の映像を観ても、サウンドが非常に生々しいように感じました。ロックンロールだったりジャズだったりと、人力で出す音を重視されていたのかなと。
水樹:セットのイメージに合わせて、ゴリッと骨太なロックサウンドが際立ったものをオープニングに持ってこようという意識はありました。開幕のMC明けにも「ROMANCERS’ NEO」のような、アコースティックギターが印象的な荒野が似合う曲を配置したり、デジタル音ではなくバンドサウンドを前面に出そうという意図もあったり。その上で重視したのが『LIVE HOME 2022』という名の久しぶりのツアーなので、来てくださったみなさんに“帰ってきた! これよ、これ!”っと感じてもらうこと。実家の味や匂いみたいなものが瞬時に感じられて、自分たちのホームなんだ!”と安心してもらえるセットリストにしたかったんです。そこで「New Sensation」や「SUPER GENERATION」といったライブ定番曲からスタートし、自然とライブスイッチがオンになったところでギアを入れていく構成にしています。
――なるほど。直前の7月にリリースしたアルバム『DELIGHTED REVIVER』を携えたツアーではあるけれど、新曲ではなく、あえて馴染みのある曲で始めようと。
水樹:はい。『DELIGHTED REVIVER』は、コロナ禍で停滞してしまったエンターテインメントを盛り上げていきたい!という想いで作っていて。中には「ダブルシャッフル」のように、1曲で空気をガラッと変えてしまうような、トリッキーな曲も。セットリストのどこに置くかでステージの流れが全く変わってしまうので、バランスよく組み立てるのがとても難しかったです。ちなみに「ダブルシャッフル」を今回のセトリに配置した時、カードゲーム用語であることと、今回の舞台セットからラスベガスのイメージが浮かんで。ラスベガスといえばカジノ。ルーレットという歌詞も出てくる「MARIA&JOKER」に繋いで、ショーアップできたらと思いました。
――ラスベガスはアメリカ南西部の街ですもんね。しかも、そこから水樹さんが怪盗に扮する映像を挟んでは、キャデラックならぬ“Nanallac”まで登場するという“ザ・アメリカ”っぷり。
水樹:カジノからお宝を盗み出し凱旋パレードのように帰ってきて、そこからダンスコーナーに突入すると、まるでラスベガスのショーのようなカッコいい構成にできるんじゃないかと(笑)。そして憧れのアメ車は一人で乗るのではなく、沢山の女の子たちと箱乗りしたかったんです! いつも大型の乗り物はライブ後半戦に登場し、一人で乗るのですが、今回は『HOME』がテーマということで人と人との繋がりや、仲間の良さを改めて感じていただけるものにしたくてダンサーチームとみんなで乗りました。
――そして大人の色気もたっぷりのダンスコーナーのあとは、各公演でゲスト声優さんを招いてのショートムービー『HELLO HAPPY HOME ~今日はパパの誕生日~』も上映されましたが、これがかなりのカオスで。あれは台本ってあったんですか?
水樹:一応ありました! 公演地ごとにゲストをお迎えして、計5名の声優の皆さんにお願いしていました。なので、それぞれの方に合わせた台本があったんです。ただ、そこにアドリブを盛り込んでいく形にしていたので、物凄いことに(笑)! 笑わずにアフレコするのが大変でした。ファイナルの名古屋公演を担当してくださった堀内賢雄さんは、テストから飛ばしていて、それがかなり面白いことになっていたので、テストテイクが使われている部分もあります(笑)。 仙台公演の日髙のり子さんには、さまざまなアニメ作品の名セリフを頂いたり、埼玉公演の杉田(智和)くんにはいつも通りのびのびやってもらって(笑)。器用で多才で個性あふれる方々ばかりなので、私は皆さんについて行く形でやらせていただきました。
――パッケージには全公演分の映像が特典として収録されていますが、当日のMCの時点で「映像化の際には絶対全公演入れる!」とおっしゃっていましたもんね。
水樹:だってもったいないですもん! 皆さんの素晴らしい声と演技が満載ですし、会場で一度観ただけでは元ネタがわからなかったという方もいらっしゃったので、ぜひじっくり観て味わっていただきたいです!
――その後は“ザ・水樹奈々”な楽曲でアッパーに攻め立てつつも、「全力DREAMER」で本編を締めくくり、「HOME」や「No Limit」と一種の応援ソングを並べたアンコールからは、ポジティブなメッセージを強く感じました。
水樹:ありがとうございます。約2年間、ネガティブなニュースが続いていたので、どうしても気持ちが塞ぎ込んだり、ストレスが多くなったり、不安な気持ちを常に抱えながら過ごす時間が続いていたと思うんです。それを少しでも払拭できるようなステージにしたくて、時に強く背中を押したり、黙って寄り添ったり、抱きしめたり、手を繋いで共に歩いたり……いろんな形でみなさんの心を癒しつつエネルギーを注げるような曲を自然と選んでいました。とにかく『DELIGHTED REVIVER』というアルバム自体がポジティブな構成になっているので、それをライブの軸に置いたとき、前に向かって一歩踏み出せる力が湧いてくるような爽快でエネルギッシュなステージにしたいと強く思って。笑顔になれる時間を届けたいし、少しでもみんなの力になりたい。自分が音楽を届けるにあたってテーマにしてきたものを改めて感じて、それをストレートに表すステージにしました。
――実際そういった曲って、ご自身の作詞が多いですもんね。
水樹:自分が伝えたい言葉や音楽が、そういったポジティブなものであることが多いんです。なので今回、テーマに沿って構成していったら“あ、私が作詞した曲がたくさん並んでいるな”って。
――ツアーと同名のアルバム曲「HOME」なんて本当に心温まる曲で、頑張れよと突き放すのではなく、一緒に歩んでいこうよと励まされているような気がして。水樹さんの歌うメッセージの核心って、やはり、そういうことなのかなと。
水樹:みんなそれぞれペースが違うので、いきなり“よし、行くぞ!”ってトップスピードで走っても、いやいや、そこまで頑張れません! ってなることもあるじゃないですか(笑)。心が疲れているとエンジンがかかるのにも時間がかかるので、そんなときでも“ちょっとだけ立ち上がってみようかな”とか“明日はちょっと動けるかもしれない”と思っていただけるような寄り添い方をしたかったんです。
――841日ぶりの有観客ライブに3年ぶりのツアーという予想外の経験を経て、アーティストとしてのスタンスに、さらなる変化はありましたか?
水樹:これまでもライブステージは聖域だと考えていたのですが、その想いがより強くなりました。毎回“これが最後かもしれない”という特別な心境で、より気持ちを引き締めてステージに立ちたいですし、だからこそ悔いのないように毎回演出やセットリストも凝っていきたいなって。だからといってガチガチに固めすぎるのではなく、大切な人の前だからこそ見せられるラフな部分もあると良いなと。構えずにホッとできる場所であり、最高に弾けられる場所でもある、そんなみんながいつでも帰れる“HOME”を、これからも作っていきたいです。
――さっそく来年1月には、さいたまスーパーアリーナでバースデーライブ『LIVE HEROES 2023』が決定していますが、これまで水樹さんが演じてこられた歴代のヒーローやヒロインが集結する2デイズになるそうですね。
水樹:誕生日当日の1月21日は“LIGHTNING MODE”、翌22日は“BLADE MODE”と銘打って、セットリストもガラリと変わる2デイズになる予定です。これまで様々なヒーローやヒロインが登場する作品に寄り添う曲を作らせていただいているので、フタを開けてみたら水樹の代表曲がたくさんラインナップされていて。ある意味ベストライブのような形になりそうなので、初めて水樹奈々のライブを観に行こうかなという方にも、気軽に参加していただけるのではと思います。
――つまり、水樹奈々初心者でも楽しめるライブになる?
水樹:はい! ただ、エネルギー量のすごい曲ばかりなので、大変暑苦しいことになっています(笑)。参戦してくださる皆さんも体力が必要になってくるのは間違いありませんので、ぜひ万全な体調で遊びに来ていただけたらと思います!
■リリース情報
『NANA MIZUKI LIVE HOME × RUNNER』
発売:2022年12月21日(水)
Blu-ray
盤種:Blu-ray(4枚組)
価格:¥10,890(税込)
初回特典:SPECIAL BOX
DVD
盤種:DVD(6枚組)
価格:¥10,890(税込)
■ライブ情報
『NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023』
2023年1月21日(土)
[開場]16:00/[開演]18:00
-LIGHTNING MODE-
2023年1月22日(日)
[開場]15:00/[開演]17:00
-BLADE MODE-
会場:【埼玉】さいたまスーパーアリーナ
『NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023』特設サイトhttps://www.mizukinana.jp/special/2023_liveheroes/
水樹奈々 オフィシャルサイト
https://www.mizukinana.jp/