『窓辺にて』の稲垣吾郎になぜ惹かれるのか 3つのポイントに映し出された役との共通点

 長く働いていると、そのご褒美となるような縁に出会えるときがある。例えば、これまでやってきた様々なことが繋がって実現する思い入れ深い仕事のように。俳優・稲垣吾郎にとって映画『窓辺にて』はそんな作品なのではないだろうか。与えられた役を演じる以上に、自分自身の魂を乗せて表現することができた作品という印象を得た。

 『窓辺にて』は、今泉力哉のオリジナル脚本・監督の映画だ。2人の縁が繋がったのは、2018年の東京国際映画祭のコンペティション部門にて、今泉監督の『愛がなんだ』と稲垣が主演を務めた『半世界』が同時選出されたこと。それをきっかけに“稲垣吾郎を主人公にした映画”という企画が立ち上がっていったのだという。

 そもそも主人公に稲垣を想定して当て書きをしたのだから、稲垣の印象を投影したキャラクターが出来上がるのは当然かと思われる。だが、当の本人から「パブリックイメージではなく、本当の僕」とまで言わしめることができる作品はなかなかない。たしかに『窓辺にて』を観ていると、これは稲垣吾郎そのものなのではないかと思えるくらい、自然な稲垣の姿を見ることができる。なかには、思わず彼の心が溢れ出したのではないかという瞬間も。「人に絶対バレてないという部分。その感情をわかってらした」(※1)とまで言わずにいられなかったほど、“本当の稲垣吾郎”を映し出した市川茂巳という役。改めて本作から透けて見えた稲垣の魅力について振り返りたい。(以降、映画本編の内容が含まれるのでご注意を)

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