Raychell(RAISE A SUILEN)×菊田大介(Elements Garden)対談 『バンドリ!』史上異例の“RASサウンド”が出来上がるまで

Raychell×エレガ菊田大介特別対談

 『バンドリ!』プロジェクトから生まれたPastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド!、Afterglowのバックバンド(THE THIRD(仮))として登場し、2018年7月からバンド名を改めて活動をスタートしたRAISE A SUILEN。楽器未経験者で多くを構成するPoppin'PartyやRoseliaとは異なり、ソロシンガーとして活動するRaychell(Vo/Ba)、SHAZNAなどのバンドで腕を振るう夏芽(Dr)、楽器経験者の倉知玲鳳(Syn/Cho)と小原莉子(Gt/Cho)、インターナショナルスクール出身で英語が堪能な紡木吏佐(DJ/Rap)で結成されたRASは、『バンドリ!』の中でも当初から本格派バンドとして強い存在感を放っていた。

 そんな彼女たちの音楽性は、エレクトロニック・ダンス・ミュージックとロックを融合した攻撃的なサウンドと力強い歌詞が特徴的であり、一度ステージに上がれば豪快なサウンドスケープで観る者を圧倒。近年ではロックフェスの常連ガールズバンドとして、『バンドリ!』から離れた場所にもその名を轟かせている。

 そんな彼女たちの楽曲を手がけるのは、『バンドリ!』全体の音楽面を担う作曲家集団・Elements Gardenだ。リアルサウンドでは、「R·I·O·T」(編曲)や「EXPOSE 'Burn out!!!'」(作曲・編曲)といったRASお馴染みの楽曲を多数手掛けているコンポーザー 菊田大介とRaychellの対談を企画。楽曲やライブを軸に、RAISE A SUILENの歩みを振り返ってもらった。(編集部)

(RASの)攻撃的なサウンドは、おそらくほかのバンドではできなかった(菊田)

【公式ライブ映像】RAISE A SUILEN「R·I·O·T」/THE THIRD(仮) 2nd ライブ

ーー菊田さんは楽曲制作やアレンジで初期からRAISE A SUILEN(以下、RAS)に携わってきましたが、当初はどういった方向性を意識していたんですか?

菊田大介(以下、菊田):最初に話を聞いたとき、上松(範康/Elements Garden主宰)から「リアルバンドを含めて、今の『バンドリ!』にはない新しいサウンドのバンドを入れる」という話が出ていて。そのテーマがEDMやエレクトロニカ、ピコリーモみたいなラウドロック系でした。RASはRoseliaのような煌びやかで荘厳なイメージではなく、電子音を主体としたサウンド感にしたいと。僕自身、EDM方面の制作経験はあったものの、エレクトロニカやピコリーモに関してはあまり取り組んだことがなくて、その二つの要素を合わせていく作業は挑戦でした。

Raychell:そういう始まり方だったんですね。

菊田:そうなんです。手探りな部分が多くて、ブシロードのスタッフの方からもいろいろアドバイスをいただきながら、試行錯誤を重ねていきました。チーム全体としてある程度ロードマップはあったと思いますが、デビュー曲の「R・I・O・T」を作ったときはRASがライブをやっていなかったので、ゼロからイメージを膨らませて作っていった記憶があります。

ーー確かにほかのリアルバンドと比較しても、EDM色が強いラウドロックというのは大きな武器であり、差別化する上でも強力な個性になりますよね。

菊田:ああいった攻撃的なサウンドは、おそらくほかのバンドではできなかったと思います。

Raychell:なるほど。こういうお話を今まで聞いたことがなかったので、いろいろ伺えて面白いです。

菊田:Raychellさんとはレコーディングスタジオで少し会話することがあっても、こうやって改めて対談することは初めてなんですよ。僕もすごく新鮮です。

ーー特にRASは、ほかのバンドのようにキャラクター設定などを決めてから立ち上げたわけでなく、リアルバンドからスタートしているので、そもそも異質の存在だったわけで。ライブを重ねていくことで見えてくるものも多かったのかなと思うんです。

菊田:そもそも最初は、THE THIRD(仮)としてバックバンドからスタートしているわけですし。それこそ、(RAISE A SUILENという)バンド名の由来がね。

Raychell:御簾を上げて、表舞台に立つ。

菊田:そう、裏方から表舞台に来たぞという。みなさん経験豊富ということもあるので演奏力の素晴らしい人たちが揃っていますよね。テクニカルなことにも対応できるから、演奏で圧倒される感じを強く打ち出せば、自然とほかのリアルバンドとは違う見せ方ができるのかなと。

ーーでは、作曲面においてほかのバンドとの差別化で意識していることはありますか?

菊田:初期曲のメロディを聴いて思うのは、Raychellさんの歌唱力の高さを活かしたレンジの広さかな。歌において多彩な表現ができることを僕らも把握していたので、最初からだいぶ無茶させてしまいました(笑)。

Raychell:(笑)。

菊田: RASは「Raychellさんだったら、ここまでいっちゃおう!」みたいな、作り手側の期待をどの曲でも常に感じますね。

Raychell:いやいやいや。

菊田:そこは信頼あってこそです!

Raychell:ありがとうございます。ちなみに、RASのライブを観て「こういう曲を作ろう」と思ったものはあるんですか?

【公式】RAISE A SUILEN「EXPOSE ‘Burn out!!!’」ライブFull映像【Poppin'Party×SILENT SIREN 「NO GIRL NO CRY」DAY2】

菊田:「EXPOSE 'Burn out!!!'」はまさにそうで、赤坂(マイナビBLITZ赤坂)でのライブ(『THE THIRD(仮)2nd ライブ』)が終わったあとに作ったんです。ちょうどシングル『A DECLARATION OF ×××』のカップリングで作曲から編曲まで手がけてほしいという依頼をいただいていたのですが、そのライブで紡木(吏佐)さんが加入することが発表され、正式にRAISE A SUILENがスタートすることになって。その前にレコーディングした「A DECLARATION OF ×××」を聴いた時に彼女は英語に堪能であると知って、DJだけは勿体ないなと思ったんです。

Raychell:なるほど。

菊田:当時は、悪い言い方をすると「演奏が上手いだけのバンド」になってしまうことを懸念していたんです。もうひとつエンタメ性が欲しいと感じていたタイミングで、紡木さんが加入することになった。彼女はしっかり歌えるし、ノリもいいから英語を使ってマイクパフォーマンスをしたら面白いんじゃないかなっていう、未来が見えたんです。これは絶対バンドの強みになると思って、ラップを入れてみようと。カップリングは表題曲と比べると自由にやれるところもあったから、いい意味で実験ができたのかもしれません。

Raychell:そのおかげで今のRASのスタイルがあるわけですね。彼女にラップをさせてみようと思ってくれて、本当にありがとうございました(笑)。たぶん観ていただいたライブで、ハロハピ(ハロー、ハッピーワールド!)の「せかいのっびのびトレジャー!」を(小原)莉子ちゃんと(倉知)玲鳳ちゃんと吏佐の3人で歌っていたので、それもラップのイメージに繋がったのかな。

菊田:そうか、そのパフォーマンスを観たからかもしれない。RASには紡木さんが歌わない曲もありますが、「劣等上等」(ギガP)カバーみたいにRaychellさんと紡木さんの2人で歌うことによって成り立つ曲もあるわけで、それによって幅も広がりました。そもそも彼女自身がDJだけに収まるようなキャラでもないと思いますし、歌ってもらえてよかったと思います。

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