高野寛×櫻坂46 小池美波、世代を跨いだ“YMO&高橋幸宏”対談 時代を超えて愛される音楽の魅力
「YMOでやってきたことを積極的に自分なりに発展させている」(高野)
ーー小池さんも、2018年にNHKで放送された『イエローマジックショー2』に出演され、細野さんとコントを繰り広げていましたよね?
小池:はい(笑)。高橋幸宏さんとはコントではご一緒させていただいていないのですが、楽屋でご挨拶させていただいて。もうその時は自分の「大好きです」という気持ちを伝えることでいっぱいいっぱいでした(笑)。お話をいろいろさせていただいたわけではないのですが、空気感がすごく穏やかで優しい方でしたし、一緒に写真を撮らせていただくこともできて感無量でした。
ーー細野さんはどんな印象でした?
小池:すごく気さくで面白い方でした。緊張していた私に「(YMOの)何の曲が好きなの?」と優しく声をかけてくださり、まるでYMOのファンの方とお話ししているような気持ちにさせてもらいました。
高野:小池さんくらいの年代の女性でYMOを「好き」と言ってくれる人はレアだと思うので(笑)、幸宏さんも細野さんも相当嬉しかったんだと思いますよ。
ーー小池さんはYMOに影響されてバンドを組んでいた時期もあるんですよね?
小池:はい。きっかけは全てYMOさんで、本当はドラムがやりたかったんですけど、お友達でドラムをやっている子がいたので自分はエレキギター担当になって独学で練習していました。全然上達しなくて、人前で披露するまでいかなかったんですけど(笑)。
高野:シンセサイザーじゃなくてギターを手に取ったんですね。
小池:そうなんです(笑)。でも、うちになぜかキーボードがあったので、「ライディーン」の映像を真似てみたりしたこともありました。
ーーでは、このたびリリースされる幸宏さんのCDボックス『IT’S GONNA WORK OUT ~ LIVE 82-84』についてお聞かせください。DISC 1 & 2「YUKIHIRO TAKAHASHI TOUR 1982 WHAT, ME WORRY?」は、高橋幸宏さんのソロ初ツアーの模様を収めたもので、細野さんや坂本さん、他にも豪華ゲストが多数登場します。
高野:僕も初めて耳にするライブ音源だったのですが、とにかく生々しかったですね。リミックス・リマスターを施しただけあって音像もくっきりしていますし、サポートメンバーの顔ぶれも超豪華。楽曲自体は馴染みのあるものばかりですが、いつもとは違う気迫を感じさせるところもあって。幸宏さんの歌も心なしかシャウト気味に聴こえるところもあり、客席の黄色い声援も含めて聴いていてかなり興奮しました。
ーー幸宏さんの通算4枚目となるソロ作『WHAT, ME WORRY?』の楽曲はもちろんですが、『音楽殺人』や『ニウロマンティック~ロマン神経症~』の楽曲も演奏していて、初期のベスト盤としても楽しめますよね。
高野:確かにそうですね。僕は土屋昌巳さんがギターで参加しているライブ音源を今までそんなに耳にしていなかったので、特に前半の3曲くらいはその気迫に圧倒されました。『tIME and pLACE』に参加しているビル・ネルソンのギターアプローチとはまた全然違いますよね。ついギタリスト目線で聴いちゃうんですけど、「土屋さんすごいな」と。
ーー小池さんは、今回のライブ音源を聴いてどんな感想をお持ちになりましたか?
小池:私はこれまでYMOさんの中で演奏している高橋幸宏さんしかほとんど聴いてこなくて、今回初めてソロ作をまとめて聴かせていただいたのですが、高橋幸宏さんのソロ曲は全体的に疾走感もあって爽やかな印象がありました。それに、高橋幸宏さんの歌声がYMOさんの時よりもたくさん聴けたのも嬉しかったです。
聴いていると、やっぱりいつの時代なのか分からなくなるというか。「最近のライブなのかな?」と思って調べてみたら、もうずっと前のライブだったということを知って、まずそのことに驚きました。会場にいるお客さんたちのことを羨ましく思いましたね。「なんで私はこの時代に生まれてなかったのかな……?」って。全ての楽曲にリアルタイムで出会いたかったなと。
ーーライブでは、YMOの楽曲「KEY」と「CUE」をセルフカバーしています。
小池:YMOさんのライブ音源は、どれ一つとして同じ内容のものがないという印象があります。この高橋幸宏さんのライブ音源で聴けるYMOさんの楽曲も、これまで聴いたことのないアレンジだったので楽しかったです。
高野:「KEY」と「CUE」は中期YMOの代表作であり、それぞれ細野さん、幸宏さんの楽曲ですが、お二人の個性が際立っていますよね。特に「CUE」はアルバム『BGM』(1981年)に入っているレコーディング音源はすごく密室的というか、アルバムのトーンに合わせて暗い仕上がりになっていますが、ライブではかなりフィジカルな面が加わってきて、小池さんがおっしゃったように全く別物として楽しむことができますね。
ーー幸宏さんのソロ作全体に関してはどんな印象をお持ちですか?
高野:例えば細野さんや坂本さんは、あえてYMOではやっていないこと、やらなかったことをソロ作で自由にやっている印象がありますが、幸宏さんはYMOでやっていること、やってきたことを積極的に自分なりに発展させてソロ作に反映させているように思います。つまり、3人の中ではもっともYMOに近いサウンドを奏でているのが幸宏さんなんですよね。YMOファンにとって、もっとも親しみやすいのは幸宏さんのソロなのではないかなと。
ーー個人的にYMOにはビートルズを感じる部分が多々あるのですが、『WHAT, ME WORRY?』の中でビートルズの「IT’S ALL TOO MUCH」(ジョージ・ハリスン作)をカバーしているのが、とても納得いくんですよね。
高野:幸宏さんご自身も、ビートルズについてはよく話しています。「教授と細野さんがジョンとポールだとしたら、僕はジョージとリンゴの立場だ」って。実際にジョージとリンゴのファンみたいですし。ジョンやポールに比べてジョージはそんなにたくさん曲を書いていないけど、そのどれもが名曲なんです。ジョージの「ダークホース」な存在感に共感している部分はあるんじゃないかなと。
それに、幸宏さんってポップセンスがすごくありますよね。YMOのメインボーカリストであり、ドラマーでありながら歌とメロディを愛していて、そこにヨーロッパの映画音楽的なエッセンスを加えているのが特徴だなと。