zonji、武将の“檄”から生まれたアニメ『キングダム』OPテーマ制作秘話 「何かを諦めかけている人を応援できたら」

zonji、『キングダム』OP曲制作秘話

人間の声にフォーカスした『キングダム』オープニング・テーマ

zonji / "geki"【Lyric Video】

ーーでは、ニューシングル『geki』について。表題曲「geki」はアニメ『キングダム』オープニング・テーマ。大きいタイアップですよね。

阿部:『キングダム』は二人とも以前から読んでいて。武将が万の家来の前で言葉をかけるシーンが出てくるんですけど、文字で書いて渡すよりも、生の声で伝えるほうが力になることは絶対にあると思うんですよ。「geki」も人間の声にフォーカスしていて。作中にも“檄”を飛ばす場面が何度も出てくるし、今の時代は生の声が貴重なものになっているので、その温度感はしっかり込めたいと思ってましたね。

ーーコロナ禍以降、確かに“生の声”の意味が変わってきてますよね。

阿部:そうですよね。歌詞のなかで〈燃やせ〉というフレーズを何度も使ってるんですが、このご時世のなかで何かを諦めかけている人を応援できたらいいなという気持ちもあって。

野澤:かなり泥臭い作風の楽曲なので、R&B系のジャンル感とのバランスを取るのが難しくて。何曲か作ったなかで、「これならいけそうだな」というのが「geki」だったんですよ。

阿部:「geki」にたどり着くまでに3曲か4曲くらい作りましたね。なんといっても『キングダム』のオープニング曲なので、たくさんの人が聴いてくれるし、絶対にいい曲にしたくて。サウンドに関しては、足音や行進の音、首飾りが鳴る音だったり、人間らしい音もかなり入っていて。世界観を表現するためのテクニックも使ってますね。

野澤:ギターに関しては、あえて今時やらないようなハモリのフレーズを入れていて。ギタリストとしてはすごく楽しかったし(笑)、楽曲の泥臭さにも合っているんじゃないかなと。

ーーYouTubeのコメントには様々な声が寄せられていて。すごい反響ですよね。

阿部:ありがたいですね。普段はあまりSNSを見ないんですけど、DMをくれる人もいて。

野澤:賛否の“否”の部分にもあえて注目していて。(否定的なコメントは)比率的には少ないんですけど、しっかり尖った曲を作れたからこそ、いろんな意見があるんじゃないかなと。

ーーいわゆるアニソンとはかなりテイストが違いますからね。

阿部:自分ではアニソンというところも意識して作ったつもりなんですけどね。今流行っているアニソンを二人で聴いて、傾向をチェックして。

野澤:うん。曲の感想のなかに「聴けば聴くほどよくなる、スルメ曲」みたいな意見もあって。うれしいです。

ーー〈燃やせ今この声が響く限り〉など、まっすぐで力強い歌詞も印象的でした。

阿部:1番は(主題歌として)オンエアされるので、しっかり『キングダム』の世界に寄り添いながら、意識的にストレートに書いていて。2番は自分自身の気持ちをかなり反映しているんですよ。

ーー実際の経験をもとにしている?

阿部:はい。大学を卒業した後、就職して営業をやっていたことがあって。会社の先輩が僕がやっていたバンドを知っていて、「会社をやめて、音楽をやったほうがいい」と言ってくれたんです。会社を辞めるときも、食事に連れていってくれて、「いまからがスタートだ。がんばれよ」って励ましてくれたんです。その言葉がずっと自分のなかに残っているし、あれは“檄”だったなって。そのあともいろんなことがありましたけど、「少なくても一人は応援してくれる人がいる」ということが心の支えになってましたね。

ーー2曲目「ichizu」は濃密かつエモーショナルなラブソング。タイトル通り、一途な思いをテーマにした楽曲ですね。

阿部:じつはこの曲も『キングダム』からインスパイアを受けて制作した曲なんです。一途に誰かを思っているときは、どうしても相手に期待してしまうし、それが叶わなかったときは破滅への道を辿ることもある。そうじゃなくて自分のこともしっかり考えてほしいというか。

ーー〈あからさまな誘い腰が〉もそうですが、言葉遣いもインパクトがあって。

阿部:〈誘い腰〉という言葉は実際には存在しないんですけど、『キングダム』のあるシーンを見ていて思いついたんですよ。

野澤:この曲もトラックをやり取りしながら制作したんですけど、ギターを入れたのはかなり前なんです。そのあとで構成や歌詞も少し変わって、「こんなふうに進化したのか」という驚きがありました。

ーーそして3曲目の「sachiare」は以前、配信シングルとして発表された楽曲。この曲を改めて収録したのはどうしてなんですか?

阿部:「sachiare」は有力なプレイリストに入れてもらったり、この曲をきっかけにしてたくさんの方からお話をいただいたり、いろんな縁につながったんですよ。僕にとってもターニングポイントになった曲だし、今回のシングルにも入れたいと思って。テーマとしては超ストレートで、僕の故郷と、ばあちゃんのことを歌っているんです。曲を作ったときは「意味わかるかな?」と思うくらい自分のことを書いているんですけど、何かを始めるときの活力になるような歌でもあるのかなと。

野澤:阿部の故郷の情景が描かれているのは知らなかったんですが、曲を聴いたときに“離れてしまった男女”が思い浮かんで。ギターのアレンジも、そのイメージをもとに作っていきました。

阿部:反響があったこともすごくうれしくて。配信したときのジャケットは、僕が通っていた小学校の写真なんですよ。愛媛なんですけど、後ろのほうに段々畑が見えて。“晴れの国”と言われてる、いいところですよ(笑)。

ーーシングルに収められた3曲もそうですし、これまで配信されている楽曲もメロディがしっかり練られていて。メロディの良さもzonjiの魅力ですよね。

阿部:ありがとうございます。実際、そこはすごく意識していて。これは僕の考え方なんですけど、まずは広く聴かれる音楽を目指さないと意味がないと思っているんです。zonjiの楽曲に関しても、多くの人に聴いてもらえるものを目指していて。メロディもできるだけキャッチーにしたいと思っていますね。もともとJ-POPや歌謡曲も好きなんですよ。山下達郎さん、久保田利伸さん、ORIGINAL LOVEとか。

ーーブラックミュージックのテイストを含んだポップスですね。

阿部:そうですね。そういう音楽が好きなんだと思いますね、以前から。

野澤:僕もJ-POPはずっと聴いていて。ミスチル(Mr.Children)、スピッツの世代だし、ポップなものは基本にあると思います。

ーー最後に将来的なビジョンについて聞かせてもらえますか?

阿部:そうですね……。いろいろあるんですけど、『FUJI ROCK FESTIVAL』に出たいです。

野澤:出たいね(笑)。

阿部:大きいフェスで歌うのって、気持ちよさそうじゃないですか(笑)。そのためにも良い曲を出し続けて、どんどんアップデートしていきたいなと。zonjiは「全てのムードを音楽に」というスローガンを掲げていて。いろいろなシーンや思いに寄り添える曲を作っていきたいし、そのためにはいろんな場所に行って、インプットすることが必要だと思うんですよね。それを楽曲とグラフィックで表現していくのがzonjiなのかなと。

野澤:うん。あとは長く、楽しく音楽を続けていきたいです(笑)。

シングル『geki』

■リリース情報
シングル『geki』
2022年9月7日(水)リリース
¥1,100(税込)

<トラックリスト>
1.geki
2.ichizu
3.sachiare

zonji 公式Twitter
https://twitter.com/zonji_info

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる