4s4ki、アルバム『Killer in Neverland』に込めた自己肯定への願い 仮想空間を通じて向き合った過去の自分
曲順が示唆するアルバムのストーリー性
ーー「ring ring, you kill me」は今までにないやり方で歌詞を書いたということですが。
4s4ki:これは完全に自分のエピソードではなくて。Instagramで恋バナをファンに募って書いた楽曲なんです。
ーーそういうやり方をやってみて、どうでした?
4s4ki:面白かったですね。私、恋愛ソングみたいなものを書くのが年々苦手になってきて。気恥ずかしいというか。だからフィクションで作りたいなと思って「ネタ募集します」ってInstagramで呼びかけて。やってみて面白かったのが、ファンの年齢層が男女問わずすごく広いから、いろんな世代の人の恋バナを聞けたんですよね。たぶんリアルじゃなかなかできないけど、でも年齢によって違うっていうわけでもなくて、みんなそれぞれいろんな意見があるのが面白くて。もともとは誰かの面白いエピソードを一つ選んで曲にしようと思ってたんですけど、いろんな人の意見をごちゃごちゃにしてできた楽曲ですね。
ーー「Freedom Kingdom feat. Swervy」はどんなふうに作っていったんでしょう?
4s4ki:私、もともとInstagramでSwervyを知って一方的にファンだったんですよ。ビジュアルとかファッションとかがすごく好きで。楽曲を聴いたら「すごいカッコいい!」って思って、スタッフにも聴かせて、スタッフからお願いしてもらって。そしたら、向こうもすんなりOKしてくれて。そのあとにDMを送ったら、わざわざ韓国語を日本語に訳して返事を送ってきてくれたんです。支配からの解放っていうテーマを伝えてリリックを書いてもらったんですけど、一発OKでしたね。
ーーPuppetやZheaniもそうですけど、インスタで繋がってDMでやりとりして曲ができるって、いいですよね。
4s4ki:今の時代にマッチしたやり方だなって思いますね。私、やっぱりインターネットに慣れ親しんできたので。そういう自分だからこそ、こうやって海外の人たちとインターネットを通じて曲を作るっていうのができるんだなと思ってますね。
ーー「Cross out」についてはどうでしょうか。これは10代の頃に作っていた曲のリメイクということですが、まず、なぜ昔の曲を入れようと考えたんでしょうか。
4s4ki:この楽曲自体は、いつかはリリースしたいってずっと思ってたんですよ。というのも、私はもともとプロデューサー志向で、誰かに楽曲を提供する側になりたくて。この曲は初めて自分が歌う楽曲として作ったものだったので、すごく大事にしていたんです。タイミング的に、今回のアルバムにぴったりだったというか。バランスもちょうどいいし、コンセプトにもぴったりハマるので。大事にしてた楽曲をこのタイミングでリリースしようという感じでしたね。
ーーこの曲と、ラストに「SUCK MY LIFE3」という過去の曲のピアノ弾き語りバージョンがあることで、過去の自分と向き合うというテーマがより前面に出ている感じがしました。「SUCK MY LIFE3」を最後に置くということにも意図や狙いがあるんじゃないかと感じたんですが、そのあたりはどうでしょうか。
4s4ki:アルバムとしては、11曲目の「BOUNCE DANCE」で本編が終了してる気持ちなんですよ。映画のような物語としては、1曲目の「電脳郷」が電脳世界に入る入口で、「BOUNCE DANCE」までが仮想世界の話。最後はみんなハッピーで終わろうみたいな感じで。12曲目の「SUCK MY LIFE3」はエンドロールなんですよ。1曲目から11曲目までは1人称視点で、電脳世界、仮想世界に魂があって物語が進んでいくんです。でも、12曲目だけ違っていて。
ーーだから鳴っている音も全然違う。
4s4ki:そうですね。だから一番生々しいっていう。で、魂がずっと仮想世界にある間も、肉体は現実世界に置き去り状態になっている設定で。その間に100年くらい時間が経ってるようなイメージなんです。100年くらい経ったら、肉体は現実世界で死んでいるわけじゃないですか。だから、12曲目はバッドエンドで。仮想世界に逃げた人、楽しく終わった人は、現実世界では肉体が死んでいることに気づかない。最後、その肉体の死体とともに現実世界が終わっていく様をエンドロールで映しているのが「SUCK MY LIFE3」ですね。仮想世界に逃げること、現実逃避を決して全肯定しているわけではないっていう。
ーー「BOUNCE DANCE」に関してはどうでしょう? この曲はアルバムの中でも一番抜けがよくてポップな曲という感じですが。
4s4ki:楽曲としてはタイアップ(テレビ東京とデジタルアニメスタジオ「Qzil.la」による新プロジェクト「KASHIKA」)があったので、そのテーマを汲み取って、ポップに仕上げようっていう気持ちを持って作った曲です。このアルバムを通して聴くと、ポジション的に11曲目に「BOUNCE DANCE」を置けばハッピーエンドな終わり方ができる並びにちょうどなったんですね。私の中では、当初はこの楽曲はタイアップのお仕事としてテーマがあって、割り切って作ったものだったんですよ。明るくてポップで、踊れるような楽曲なんですけど、私としては、他の曲のように自分の心境を曝け出すように書いているわけではなくて。でも、このアルバムの11曲目に入れることによって、すごくしっくりきて好きになった。“作られた明るさ”が合ってるんですよね。この後に来る「SUCK MY LIFE3」と合わせて、“そこが虚像かも知れないよ?”っていうのを示している。それが裏テーマですね。
先駆者がいないところを開拓している感覚
ーー今回のアルバムのアートワークについても聞かせてください。ジャケットのビジュアルにはどういうアイデアがあったんでしょうか。
4s4ki:もともと、自分の顔にメタル的なグラフィックの装飾をしたいっていうのはあって。今回のアルバムの、人間の肉体が仮想世界に取り込まれていく様みたいなものとすごくマッチしているし。可愛く、ファンシーでもあり、でもちょっと禍々しくて気持ち悪い。電脳世界に閉じ込められている感じもするし、出来上がってみて、アルバムの世界観とめちゃめちゃマッチしているなって思いました。
ーーメタルっぽいロゴだけど、色合いは爽やかだし、4s4kiさんの音楽性とビジュアルのセンスって、どこか結びついているような感じもします。
4s4ki:自分のやっている音楽性は、一つのジャンルではないと思っているので。ハードな楽曲でもポップなメロディを乗せることを大事にしてるし。ポップセンスを失いたくないんですよ。ただ、ポップで可愛すぎるのも違うし、ハードなスタイルにポップさを混ぜるのが自分らしいなって思っていて。とにかく、カオスさをすごく大事にしているんです。今回のジャケもそうですし、今までのジャケとかも共通して、カオティックな表現が好きなんですよね。ーー僕は、これを聴いて「ハイパーポップ」というところにはもう括れないなって感じました。もちろんジャンルは聴いた人が位置づけるものなので、いろんな解釈があって然るべきだと思うんですけど。僕としては「なんだろう、これ?」っていうのが聴いた後の正直な印象として一番大きい気がしました。
4s4ki:ありがとうございます。それはすごく嬉しいです。私、いろんな人に「なんだ、これ?」って思われたいんですよ。私はこのアーティストになりたい、みたいな憧れの人がいるわけでもないし、今回のアルバムもハイパーポップを意識したわけでもないし、一つのジャンルに収まろうというのもなくて。先駆者がいないところを開拓している感覚があるので。それってすごく難しい道だけど、一番自由だと思うから。そこからもしかしたら一つのジャンルが生まれるかもしれないし、常に「なんだこれ?」って思われていたいから、そういうアルバムにしたいという思いはありましたね。
■リリース情報
4s4ki『Killer in Neverland』
2022年8月24日(水)リリース
<収録曲>(全形態共通)※w/参加アーティスト
1.電脳郷
2.LOG OUT w/maeshima soshi
3.先制の剣 w/gu^2
4.ring ring, you kill me w/maeshima soshi
5.Cross out
6.paranoia
7.傍観者
8.into the darkness
9.Freedom Kingdom feat. Swervy w/Masayoshi Iimori
10.sweet dream
11.BOUNCE DANCE w/maeshima soshi
12.SUCK MY LIFE3
・初回限定盤
2CD+BD ¥8,888(税込)
①BONUS ALBUM 『Heaven or Hell』
<収録曲>
1.新世界
2.孤独のメリーゴーラウンド
3.space coaster
4.胎内
5.砂漠
6.ブラックホール
7.地獄電話
8.Punish
9.KILL MY SELF, I tried
10.0h G0D!!
11.ハツカネズミ
12.go to glory
②LIVE Blu-ray 『4s4ki - Live in Parallel World 2022』
<収録曲>
1.melt
2.Punish
3.FAIRYTALE feat. Zheani
4.ALICE feat. Smrtdeath
5.I LOVE ME
6.gemstone feat. Puppet
7.砂漠
8.moonlake
9.クロニクル
10.Sugar Junky
11.space coaster
12.35.5
13.OBON
14.STAR PLAYER
・通常盤
1CD ¥2,644(税込)