超特急、9人の絆を永遠に刻んだ夜「またどこかで続きをやろう」 揺るがぬ世界観と進化のツアー『Joker』
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昨年12月20日に開催された大阪城ホール公演を皮切りにスタートした『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2024-2025 “Joker”』。全国4カ所のアリーナを巡ったこのツアーは、2022年8月から始まった“9人の超特急”の魅力をあらためて各地で示したものだった。“新体制”という言葉は、もはや完全に不要なのだろう。揺るぎないものをすでに掴み、進化への意欲も燃え盛らせている今の彼らは、前向きなエネルギーの塊だ。足を負傷していたアロハの完全復帰のステージとなった1月28日、29日の横浜アリーナ公演は、発熱を伴う帯状疱疹のためタカシがお休み。想定外の出来事と向き合いながらも、彼らは力を合わせながら輝いていた。ツアーファイナル、29日の模様をレポートする。
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ハードボイルド風味のムービーとリンクしたメンバー各々の登場で早速ドキドキさせてくれたオープニング。そして「Who is the Joker?」という問いかけの文字がスクリーンに浮かび上がり、1曲目「POKER FACE」がスタートする。メインダンサーのカイ、リョウガ、タクヤ、ユーキ、マサヒロ、アロハ、ハル、そしてバックボーカルのシューヤという8対1の編成が、ステージをドラマチックな空間と化していく。タカシは病気療養中なので前日に続いて欠席。ボーカルをシューヤがひとりで担っていたが、全力の歌声が曲を躍動させていた。メインダンサーのメンバーたちによるラップパートも交えながら多彩なコンビネーションのパフォーマンスを示した「Re-Booster」。それぞれのダンスソロが炸裂した「No.1」……超特急の魅力にはさまざまな形があるが、“かっこいい!”が存分に発揮された3曲だった。
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最初の小休止での自己紹介ののち、タカシから預かった手紙を読み上げたシューヤ。「8号車のみんな、タカシやで! 今日はツアーファイナル。U-NEXTから観てるで!」――タカシの声と人懐っこい表情が思い浮かぶメッセージだった。タカシになりきって自己紹介の代役を務めたカイ。「タカシはいないんですが、この8人で最高のライブを作り上げていきたいです!」と宣言したリョウガ。そして客席の各エリアと交わすコール&レスポンスを経て、歌とダンスはさらに熱量を高めていった。
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「Scene-1」「Scene-2」「Scene-3」「Scene-4」「Scene-5」という各章に分かれていたライブ本編。「On & On」からスタートした「Scene-1」は、エネルギッシュなダンスチューンが中心の構成だった。「UNKNOWN...」と「Fantasista」も届けられたが、大人の色香を漂わせる曲が似合う超特急となったことをあらためて実感。そして「Scene-2」では、「Fantasy Love Train」「Love Song」「クリスマス・イブ」といったあたたなテイストのラブソングが連発された。2曲のマッシュアップによる「Steal a Kiss ⇄ Kiss Me Baby」は、「Steal a Kiss」「Kiss Me Baby」ふたつの世界を目まぐるしく行き来する展開がスリリング。音源でもわくわくさせてくれたマッシュアップは、ライブでも最高にかっこよかった。
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「Scene-3」は、8号車(ファンの呼称)と一緒に作り上げる曲を連発。花道の先端にあるセンターステージでパフォーマンスを繰り広げたユーキ、シューヤ、アロハ、トロッコに乗り込んでスタンド席を一周したカイ、リョウガ、タクヤ、マサヒロ、ハル……二手に分かれて盛り上げた「星屑のダンスフロア」、両腕をクロスさせる通称“バッテンダンス”が明るい熱気を生んだ「Burn!」、8号車の元気なコールが加わった「Shake baby」。ライブ会場でメンバーと一緒に踊ったり歓声を上げたりすることで楽しさが倍増する曲を、超特急はたくさん持っている。
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そして「みなさま、お待たせしました!」とリョウガが言い、“近況トーク”のコーナーが始まった。「ぴったり10年前、ここ、横浜アリーナで成人式だった」(カイ)、「地元に帰った時に懐かしいワードが出たんだけど。アンベス(安全ベストの略、光を反射する素材のベスト)って知ってます? 登下校の時に着ていました」(マサヒロ)……というような話が出たのち、話題の中心となったのはタクヤ。昨晩、彼のお弁当が行方不明となる重大事件が発生したのだという。各々のアリバイが検証されたなかで浮上した容疑者はアロハだった。メンバー同士のテンポのよいやりとりが楽しい。そんな和やかなMCタイムを経て「Scene-3」は再開された。8人を乗せたセンターステージが上昇し、吹き上がった大量の泡が照明を浴びてキラキラ光った「AwA AwA」。随所で冴えわたるメンバーの変顔はもはや振り付けの一部と言っても過言ではないと実感させられた「ジュブナイラー」……明るく盛り上がれる2連発だった。
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「Scene-4」は、スーツスタイルの衣装でのパフォーマンスが繰り広げられた。ステージをシリアスなムードで塗り替えた「Spice」、エネルギッシュなビートを全員が華麗に乗りこなしていた「Typhoon」、何本もの火柱が上がるなかで怒涛の展開を遂げた「Countdown」――そして雪崩れ込んだ「Scene-5」は、衣装を着替えた8人のミステリアスな佇まいが目を引いた。
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フードを被って表情を隠す場面も交えながらも、曲に刻まれた物語が生々しく表現された「Beasty Spider」、そして壮大な展開を遂げ続けた「JOKER FACE」には息を呑んだ。大量の水がステージに降り注ぐ“雨”の演出によって8人はずぶ濡れ。〈Who is the Joker?〉と問いかけた直後に響いた歌声〈I am a Joke〉が曲を締めくくった時、不穏なスポットライトを浴びたのはユーキだった。
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ステージにひとりだけ残ったユーキは、傘を手にしながらダンス。身体の動きと浮かべる表情は、追い詰められた精神状態を滲ませていた。彼がカードを引き裂いたのは、何を示していたのか? そしてエンドロールがスクリーンに流れて本編は終了……と思いきや続きがあったのは、ツアーファイナルの29日だけだったらしい。時間が巻き戻る映像が流れたのち、謎の男性がステージに登場した。最後に仮面を外して現れた正体はハル。浮かべていたあの笑みの意味も気になる。おそらく8号車それぞれの解釈があるのだと思う。スクリーンに「The End」という文字が浮かび上がった瞬間、大きな拍手が客席の全エリアから沸き起こった。
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