ハルカミライ、4人らしさをありのまま鳴らせた理由 2度の武道館を経て追求する“真のオリジナリティ”

ハルカミライからメジャー4枚目となるニューアルバム『生きるとは鼻くそくらいの希望を持つことだ』が届けられた。初めてメンバー4人全員が作詞作曲に参加した今作では、着実にスケールを広げてきた彼らのとびきり自由な歌と演奏を楽しむことができる。だが、各々の個性を全開にしつつも、どこか憂いや切なさをまとった歌詞やグッドメロディという“ハルカミライ印”が揺らぐことはない。2度の日本武道館公演を成功させ、ロックバンドとして一段とステップアップした彼らは、今作を携えてどこへ向かうのか。4人のソングライティングを通して、ハルカミライの現在地に迫る。(編集部)
関大地がハルカミライとして初めて作った“地元”の歌
──今作はメンバー全員が作詞作曲に携わったとのことですが、それはどうしてだったのでしょうか?
須藤俊(以下、須藤):遊び心からですね。2022年に結成10周年EP『Symbol 2』を出して、次はどんな面白いことができるかなと考えたときに、全員が作詞作曲に絡んだら面白いかなと思いました。
──関︎さん、小松︎さんは曲を作ることになってどう感じましたか?
関大地(以下、関):面白そうだなと思いました。結構ノリノリで作りました。
小松謙太(以下、小松):俺もいいなと思いました。「クソでもいい」って言われていたので、気楽に作れました。
関:遊びのつもりがいつの間にか本気になっていたって感じですね。

──理想的な形ですね。ではせっかくなので、まずは関︎さんと小松︎さんが作った曲について聞かせてください。関さんが作詞作曲を手掛けたのは「陽光」(編曲は須藤)。故郷への思いを綴った優しい楽曲です。すごく素敵な楽曲ですよね。
橋本学(以下、橋本):すごく評判いいよね、この曲。
関:うれしいです。
──作詞作曲は初めて?
関:いや、高校生のときに作ったことがあります。
須藤:そのときの曲名は?
関:うわ、何だっけ。マジで忘れちゃった……インタビュー中に思い出したら言います!
──「陽光」はどういったところから作り始めたのでしょうか?
関:“綺麗なギターのアルペジオに激しいドラムがついている”みたいな曲がいいなと思って、そのイメージで作り始めました。DTMを使って、まずは歌のない音源を完成させて。メロディを悩んでいたら、「大地の好きなポエトリーにしてみたら?」と言われて、この形になりました。
──歌詞の世界観はどのように?
関:俺がハルカミライの曲として初めて作る曲なので、堅苦しいことを歌ってもな……と思って。これまで自分に関わってきてくれた友達とかが聴いてくれたときに響いてくれたらいいなと思って、自分のことを書きました。
──他の皆さんはこの曲を初めて聴いたとき、どう思いましたか?
小松:大地っぽくていいなと思いました。大地が好きな曲の雰囲気を感じました。
須藤:俺は(編曲者として)一緒に作っていたのでコメントするのは難しいですが、最初に楽器だけの音を受け取ったときに思ったのは「意外と難しいな」でしたね。ポエトリーを入れるんだったら、もうちょっと楽器はシンプルでもいいのかなと思って、少し簡単にしました。でも一番思ったのは「本当に曲を作ってきたんだ」ってことですかね。短くしちゃいましたけど、最初4分くらいの曲を作ってきてくれて。「こんなにがっつり持ってくるんだ」って驚きました。
橋本:俺はメロディがいいなと思いました。特にCメロ。〈高架下〉から始まるところはすごく好きなメロディで。高校生のときにはやっていたとはいえ、数年ぶりの曲作りでブランクもあるのにすげえなと思いました。
関:ありがとうございます!
橋本:ただ最初にもらったもので、バカ高いキーのところが一つあって(笑)。「学さん、これどうですか?」って言われたんで「これは出ねえよ」って言いました(笑)。
──音源としてここまでポエトリーが入っているのはハルカミライにとって初めてだと思うのですが、ボーカリストとしてはいかがでしたか?
橋本:もともと、ここは電話の設定じゃなかったんですよ。でも俺は電話の設定にしたらやりやすいかもと思って、電話っぽく歌い直したらハマりました。大地のやりたいものと、俺のやりやすさがうまく混ざったなと思います。
──演奏する上で意識したことがあれば教えてください。
須藤:ベースはフレーズ以外ほとんどダウンピッキングです。そうすることでノリが出せていると思います。もしコピーする人がいたら、ダウンピッキングで弾いてみてほしいですね。
小松:ドラムでは、ハイハットとスネアの音が特徴的で。結構鋭い音になっていると思います。
──優しい曲なのに、音は鋭いんですね。
関:ベースもドラムも「激しめにお願いします」って言ったんですよ。この曲はギターがわりとシンプルな分、他の音は鋭くしたくて。

──そうか、そもそも激しいドラムに綺麗なギターのアルペジオが乗っているような曲を作りたかったんですもんね。
関:そうです、そうです。ギターはそれこそアルペジオを独特な音にしたくて、クリーンのアルペジオにめっちゃコーラスをかけています。この残響感が気に入っています。
須藤:歌詞とタイトルは俺と大地で一緒に考えたんですよ。「なんか気の利いたタイトルがいいよね」って話をしていて。大地は長野県出身で、地元について歌っていることもあるので、長野県のりんごの名前を調べてみたんです。その中に「陽光」があって。〈満点の陽〉という歌詞もあるし、長野だしぴったりだねということでこれにしました。
──ぴったりですね。関さん、実際にご自身で作った曲がこうして完成して、いかがですか?
関:いい曲です!
──私もそう思います。
関:また機会があれば曲を作ってみたいなと思いました。
小松謙太、勢いに乗りながらも「自分っぽさが出せた」
──では続いて小松さんが作詞を手がけた「K・O・M・A・T・S・U」(作曲は橋本と須藤、編曲は須藤)。ハードコアチューンですが、この曲はどのようにできたのでしょうか?
小松:僕のキャラ的に“勢い部門“の曲を作ろうという考えがまずあって。そこから歌詞を考えていきました。もともとはもっと長めに歌詞があったんですよ。「K・O・M・A・T・S・U」を頭文字にした歌詞だったんですが、編曲しているうちにこの長さになりました。
──作曲は橋本さんと須藤さんですが、オケはどのように?
須藤:確か、歌詞と曲は同時進行で作っていたんですよね。パワーコードのギターのフレーズがあったから、そこから「元気系の曲が小松にはたぶん合うよな」と思って、進めていきました。
小松:で、オケをもらって、そこに歌詞を当てていって……。
須藤:……なんですけど、ハマっているのが1カ所くらいしかなくて。
──えっ、どういう状態だったのでしょうか?
須藤:コードに乗ってなかったよね?
小松:うん。
須藤:よく言えばポエトリーみたいな……メロディがなかった(笑)。
小松:はい、クオリティとしてはかなり低い状態でした(笑)。
須藤:まぁ、でも「クソでもいい」って言ったから(笑)。
小松:自分としてはパズルみたいにメロディをはめていったつもりだったんですけど、訳わかんないメロになっちゃって。歌詞もわたして、整えてもらいました。

──演奏してみていかがですか?
小松:ライブでやるの楽しみだなって思いました。
──この曲でメインボーカルを務めているのは小松さんですよね?
小松:はい!
──ライブではどのようなパフォーマンスになるのでしょうか?
橋本:俺は突っ立ってます(笑)。
須藤:まぁ、短いんでどうにかなると思います(笑)。でも〈大丈夫間違いねえ〉は大地が、〈あざす!〉は俺が歌っていて。
橋本:〈トドメの一撃〉は俺が歌っているんで。
小松:そうなんですよ、一応みんな出番があるんです。

──ライブでの披露、楽しみにしています。初めての作詞曲が完成してみていかがですか?
小松:勉強になることがたくさんありましたね。次また曲を作ることがあれば、この経験を活かして作りたいです。
──言葉選び含めて、すごく小松さんらしい歌詞だなと感じました。
小松:ですよね? 自分っぽさが出せたなと自分でも思うんですよ。それがどうしてなのかは……ライブでこの曲をやりながら見つけていこうと思います。
須藤:小松はギターも弾けるんで、次は作曲にもチャレンジだね!