二宮和也『○○と二宮と』レビュー:初のカバーアルバム、歌声の魅力を存分に味わえる作品に

 その一方で、Mrs. GREEN APPLE「Attitude」のカバーが鮮烈だ。喉を狭めに使ってみたり、力強く歌ってみたりと、一曲の中で多様な表情の歌声を響かせている。この曲は逆に「ニノってこんなこともできるんだ」という発見のある一曲になっている。隠れていた引き出しが開かれた瞬間と言えるかもしれない。

 6曲目キヨサク(MONGOL800)「想うた 〜愛する人を想う〜」カバーは、何気ない会話から始まり歌へと自然に入っていく構成が面白い。アットホームなライブ感覚があり、曲全体の素朴なアレンジも相まって、リラックスして聴くことができる。〈距離があっても 今の時代は すぐにつながる いつでもどこでも〉といった歌詞も、今この時代に歌うことに意義があるものだと感じる。

 このようにアルバム中盤は二宮の歌声や言葉を際立たせるアレンジが目立つ中、一転して、日食なつこ「廊下を走るな」のカバーでは壮大なサウンドスケープを描くアレンジが目を引く。大勢が足を踏み鳴らす音と、迫力あるハンドクラップを軸とした音作りは迫力十分。そして最後を締めくくるのはV6「HONEY BEAT」だ。近年J-POPシーンで注目を集める敏腕アレンジャーのトオミヨウによる、聴き手にも二宮自身にも寄り添うような優しいアレンジでアルバムは幕を閉じる。

 嵐の活動休止後、長らく人前で歌う姿を見せてこなかった二宮が、久しぶりに歌声を届けた今作。相次ぐ主演映画の公開やドラマ『マイファミリー』(TBS系)での演技が話題となり、俳優としてのイメージが強い二宮だが、歌手として評価する声も少なくない。今回のアルバムはそんな歌手としての二宮和也の魅力を存分に味わえる内容だ。今後ソロでの音楽活動にも期待したくなる一作である。

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