3ピースバンド UlulUに初インタビュー 旅するように鮮やかなガレージロックで描く、互いの歩みを認め合う世界

3ピースバンド UlulU、初インタビュー

 UlulUによる1stアルバム『UlulU』は、2022年屈指の傑作ロックアルバムだ。ザクザクとかき鳴らされるガレージ直系なギターサウンドを軸に、景色や感情に色づけしていくようなメロディアスなバンドアンサンブル。そこに、大らかで純真な大滝華代(Vo/Gt)のボーカルが加わる時、3ピースロックバンドというオーセンティックな編成ながら、彼女たちにしか描けない独創的な音世界が目の前に広がっていく。これまでも「夕方のサマーランド」「旅に行こうよ」などでそのオリジナリティを発揮してきたが、今作では「Terminal」「イルミナント」といったミドルテンポの楽曲でセンスが爆発。「このドアを閉めるまで」「指定席」「風」など、外の世界に一歩踏み出すことを肯定する歌詞も素晴らしい。そんな名曲揃いの1stアルバムを紐解くべく、大滝、古沢りえ(Ba/Cho)、横山奈於(Dr/Per)にインタビュー。3人での取材は初めてということで、ルーツや結成のいきさつから、旅に出るように曲を書く大滝の脳内世界に至るまで、たっぷり話を聞いた。(編集部)

UlulU『風』

幼い頃から楽器に触れてきた3人が持つ、共通のルーツ

ーー素晴らしい1stアルバムだと思います。

一同:ありがとうございます!

ーー大きな世界の中における、小さな生活や愛について歌うガレージロックだなと感じたんですけど、皆さんはUlulUをどういうバンドだと思っていますか。

大滝華代(以下、大滝):生活している中で思ったことをそのまま曲にしているので、愛をテーマに歌っているところもありますね。

横山奈於(以下、横山):華代ちゃんが生きている上で大事にしているもの、普段のラフな姿そのものが曲にも反映されている気がします。

古沢りえ(以下、古沢):いつも話している言葉をそのまま使ってたりするから、歌詞としては不思議な響きになっているかもしれないですね。

UlulU 『夕方のサマーランド』

ーー3人の音楽的なルーツというと、どういうものが浮かびますか?

大滝:幼い頃からクラシックをやっていて、小学校1年生から6年生までバイオリンを、高校3年生までピアノをやっていたんです。サボりながらだったんですけど(笑)、そのレッスンの送り迎えで母親が運転する車中でFm yokohamaのラジオが流れていて、ABBAとかCarpentersをよく聴いていた記憶があります。私は両方を頑張ることができない性格なので、ピアノの練習で「最高!」と思えた時はバイオリンの先生に怒られたり、その逆もあったりで。高校生になってからは親に反抗してロックバンドを聴き始めたんですが、家族共用のパソコンでX JAPANを聴いていた時はゾッとしてました(笑)。その頃から「ギターってかっこいい」と思って始めたのが、今につながるきっかけです。

ーークラシックをやっていた大滝さんにとって、ギターを鳴らす感覚はどういうものだったんですか。

大滝:「音楽ってこんなにデカい音でやっていいんだ」と思いましたね。クラシックだと、すでにある曲を楽譜通りに弾く感覚が強かったけど、バンドだと自分で作って自由に表現できるんだ、それならやってみようかなと思って始めましたね。

ーー古沢さん、横山さんはいかがですか?

古沢:小さい頃、叔父の車に乗っていると宇多田ヒカルがよく流れていて、私もすごく好きになりました。小学校高学年ではクラスの男の子たちの影響でBUMP OF CHICKENを聴いたり、中学校に入ると、ゆらゆら帝国とか銀杏BOYZを聴くようになって。そのあたりが一番の軸だと思うんですけど、私も小学校で合唱団とか、金管楽器メインの吹奏楽部に入って活動していたので、バンドで演奏する時も強弱についてはよく意識します。ベースを始めたのは、もともと合唱でアルトだったり、トロンボーンを吹いたりしていたので、自然と低音の楽器に手が伸びたんだと思います。

横山:私は保育園の卒園文集で、将来やりたいことに「ドラム」って書いていたらしくて。自分では全く覚えてないんですけど、母親がThe Beatlesとか音楽好きだったこともあって「娘にやらせてみよう!」と思ったみたいで(笑)、小学校4年生ぐらいでドラムを始めてレッスンにも通ったんですけど、その時はあまり身が入らなかったんです。でも10代になってandymoriなどを好きになったりしたことをきっかけに、またバンドに惹かれていって。高校では「フォークソング部に入るぞ!」という直感で、もう1回ドラムをやることにしました。やっぱり小さい頃からリズム楽器に惹かれていたんだと思いますね。

ーー3人とも子供の頃から楽器に触れていたという共通点があるんですね。andymoriの名前が出てきて、すごく納得できるルーツだなと思いました。

古沢:andymoriは3人とも通ってきたバンドですね。好きなポイントはみんな違うと思いますけど。

横山:どのアルバムかにもよりますけど、私は高校生の頃に聴いて、歌詞が自分にヒットした部分が大きかったです。

大滝:(小山田)壮平さんも、きっと日々のしがらみとかいろんなエネルギーが爆発した時に曲を作ってるのかなって。だから景色とか、そこで見て感じたものがそのままパッケージされている気がして、そこにシンパシーを感じるんです。解散前のラブシャ(『SWEET LOVE SHOWER』)とか、武道館のラストライブも観に行ったんですけど、「それでも夜は星を連れて」がすごく好きでした。憶測でしかないですけど、飲みに行った帰りに奥さんのことを想って書いた曲なんじゃないかなって。完全に心を許している人に対しての愛はすごく大きいと思うし、こんな愛の形は他にないんじゃないかっていう曲を壮平さんはいくつも歌っているから、めちゃくちゃ尊敬しています。

古沢:私も高校生の頃に聴いて、その時に欲しかった言葉をちゃんと歌ってくれていたことがまず大きかったと思います。あとはベースのフレーズがかなり動くところとか、コード感のノスタルジックさが気持ちよくて聴いていましたね。展開が少ない曲は飽きてしまう時があるので、UlulUでも平坦な曲を作っていると「これでいいのかな?」って思っちゃうんですけど、それもandymoriを聴いていたからかもしれないです。

ーーそんな3人はどのように出会ってUlulUを結成するんですか?

大滝:私の高校には軽音楽部がもともとあったんですけど、先輩方が粗相したことが理由で廃部になってしまったみたいで。それで、入学してすぐに軽音楽部に入りたい子たちと署名活動をしたんですね。そしたら担任の先生に呼び出されて「本当に無理だと思うから」と、かなり冷めた感じで言われてしまい、バンドは学校の外でやろうと思ったんです。当時は毛皮のマリーズと死ぬまで生きるもんズというバンドが好きで、新宿red clothやJAMあたりのライブハウスに入り浸っていたんですが、そこで繋がった友達と組んだ3ピースバンドでドラムボーカルを、それとは別にグラムロック・バンドでベースをやっていました。あと、私1人で弾き語りもやってたんですけど、それをバンドバージョンにした“大滝カヨバンド”という形態もあって。その時すでに古沢とは繋がってたよね?

古沢:そうだったね。私は高校で軽音部でしたけど、学校の外でもライブしたいねって話していた時に、近くの高校のバンドがよく新宿JAMでライブをしていたので、その友達の繋がりで私もJAMに出るようになって。そこ経由で3人が出会いました。

横山:JAMのブッキングの方がつなげてくれたんです。その方も弾き語りでライブをやっていたんですけど、「下北沢THREEでライブやるから観に来て」と言われて行ったら、ちょうどその日に華代ちゃんが弾き語りで出演していて。そのライブがめっちゃよくて、「あの子がすごくよかったです」と言ったら、そのブッキングの方が「同い年だから紹介するよ」と言ってくれて、初めて挨拶しました。そこから1カ月後には一緒にバンドを組んでライブすることになっていたので、結構なスピード感だったんですけど。

大滝:その時ちょうどドラムを探していたんですよ。そしたら同い年の女の子が演奏を褒めてくれて、しかもドラムをやってたということだったので、このタイミングを逃してはいけないと思ってすぐ「一緒にやろうよ!」って誘いました。即決でした。

横山:弾き語りですでに完成されている気がしたし、私自身、人前に立つのがあまり好きじゃなかったこともあって大学ではドラムをやめていたので、一緒にやろうって誘われた時はちょっと日和ってました。今は月日の流れで普通にできるようになりましたけど(笑)。

古沢:それで2015年にUlulUを結成して、1年くらいかけて初音源をリリースしたんですよね。

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