3ピースバンド UlulUに初インタビュー 旅するように鮮やかなガレージロックで描く、互いの歩みを認め合う世界
楽曲ができるのは“本当の自分と向き合えた時”
ーーその「どこかへ行きたい」という気持ちは、そもそもどうして出てくるものなんでしょうか?
大滝:自分の心の根底にずっとある気持ちなんです。服を着たり、カバンを持って出かけるという動作に対して、こだわりがあるというか。もともと自己肯定感が低いので、誰かのものを取り入れながら生きていく感覚がすごく強くて、憧れの人と同じ格好をして「自分の中にあの人の魂を入れて生きていきたい!」みたいなことをよく考えてます。でも、そうやっていくうちに自分が何なのかわからなくなって、このまま生きるのは無理だなと臨界点に達した時に、衝動的に旅に出たりするんです。例えば「Terminal」はそれを抽象化して、状況だけを歌った曲ですね。あえて自分のことなんだって書かないようにしていて、みんなにも同じ気持ちがあるはずだから共有したいなって。
横山:華代ちゃんを近くで見ていると、誰かの格好とかマインドとか、全部を取り込んで憧れの人になり切ろうとするから、言うなれば精神的にトリップしている状態というか(笑)。違う人になり切ることで、本来の大滝華代ではない体験をしているんだろうなと思うんです。でも、それを長く続けるのはやっぱり無理なので、ポンって抜け出して大滝華代に戻ってくる瞬間があるんですよ。
古沢:そうやって戻ってきた瞬間に、楽曲が形になることが多いよね。いろんなものを取り込んでいく中で、自分に合うと直感的に思ったものは蓄積されているんだと思うんです。上澄みではなく、本当にそれが自分のものとしてフィットした時に、曲になって出てくるのかなって。
横山:だから結果的に、華代ちゃんの言葉で書かれているなって思える曲が残っていて。途中段階の「誰かの言葉で書いてるよね」って感じる曲は、最後まで残らないんです。
ーーとても面白いですね。
古沢:それを本人も自覚なくやっているから、一見つかみどころのない感じが歌詞に漂ってたりするのかなって。
大滝:……大丈夫なのか、私(笑)。
一同:はははは。
ーーそうやっていろんなものを取り込んでから上澄みを取り去った時に、大滝さんとしては「これが自分らしさだったんだ」って自覚できるものは何かあるんでしょうか。大滝:うーん……一つだけ言えるのは、自分はよくも悪くも嘘がつけない人間なんだっていうことですね。いろんなもので着飾っても、結局最後は素のままでいる方が心が身軽なんだと気づくので。そうやってステージに出られた時のライブはめちゃくちゃいいし、逆に演奏していてもみんなと目が合わない日は、自分の心がどこかに行ってしまってるんだなって思います。音楽をやることで、自分の心がどういう状態なのかがわかる感じです。
ーーそれがわかることで、聴き手との関係性にも影響がありそうですね。
大滝:そうかもしれないです。自分の怒りやトゲをぶつけるだけのライブは、自分にとってもよくないことなんだってわかったんです。それはコロナ禍でライブができなくなってから初めて気がついたんですけど、せっかく自分は音楽をやっているんだから、少しでも誰かに楽しいと思ってもらえたり、温かい気持ちになってもらえたら嬉しいなっていう想いでライブをするように変わりました。
古沢:今までみたいにカウンター精神だけでやるんじゃなくて、自分がandymoriのような音楽を聴いて感じてきたことを、UlulUの音楽でも感じてもらいたいって思えたのが大きいかもしれないですね。
ーーその気持ちはアルバムにも大いに表れているし、冒頭で言っていた「愛をテーマに歌っている」という話にも直結すると思いました。旅するように歌っているから大きな景色も見えるんですけど、最終的にはどの曲も「あなたと私の歌」に収斂されていることが肝だと思っていて。それが愛というテーマに繋がっている気がするんですけど、いかがですか。
大滝:確かにそうですね。自分が作る曲の中には絶対に相手がいると思います。自分には人から認められたいという気持ちが強くあるんですけど、それだけでは人と繋がることはできないじゃないですか。そういう黒くてズタズタした感情ーー根底にあるムカつく気持ちや肯定感の低さを、なんとかプラスにしようと広げていって、ようやく誰かと繋がれた瞬間に愛になるんだと思っていて。それが音楽やロックで歌いたいことなんですよね。
横山:認めてほしいと言ってるけど、それと同じくらい、華代ちゃん自身もものすごい愛の力で相手を受け止めている気がするんです。歌詞を見ていても自分のことを伝えるのと同時に、相手を思い切り肯定する包容力があるというか。その気持ちが常に一緒にある感じがしていて。
ーーまさに1曲目「せかいを」の歌詞そのものだなと思いました。自分には自分の世界、相手には相手の世界があって、さまざまな気持ちを抱えながらも自然にそれが交わっていく瞬間こそ、大滝さんが歌う愛なんだろうなって。
大滝:完全に的中してます。初ライブでやった曲なので、もう7〜8年前の曲なんですけど、この言葉が自分の全てなんですよ。私がいて、あなたがいて、お互いの世界がある中で頑張っていこうねって。それぞれが認め合えるギブ&テイクな世界になってほしいなって思います。
ーー〈安全に安心してまで/重い荷物は背負いたくない〉(「指定席」)とも歌っているから、きっと無理やりなことは好きじゃないですよね?
大滝:そうですね。「〇〇しなさい」って言われるのが嫌でバンドをやってるので、自分のやりたいことも相手のこともちゃんと尊重したい。最初はそういうことを全然考えられなくて、その場の感情に任せてライブすることがロックンロールだと思い込んでいた時期もあったんですけど、そういうマイナスな気持ちだけじゃダメだとわかったから、今があるんだと思います。
ーー大滝さんがそういう心境をちゃんと歌にできたからこそ、さまざまな境遇の人の次なる一歩を肯定するアルバムになりましたよね。
大滝:よかったです。今日はめっちゃ自己肯定感が上がったので、また曲を作れる気がします(笑)。でも本当は雑念なしで、それぞれ自由に何かを思い浮かべながら聴いてもらえるのが一番いいなと思っています。名曲だと言われるのは、それができる曲のことだと思うので。
■リリース情報
UlulU 1stアルバム『UlulU』
LABEL:NEWFOLK
2022年5月25日(水)リリース
ダウンロード/ストリーミングはこちら
<収録曲>
01. せかいを
02. 3分間だけ愛されたい
03. このドアを閉めるまで
04. イルミナント
05. 愛の讃歌
06. Terminal
07. 君と過ごした夏
08. ドライブスルー
09. 隠居生活
10. 指定席
11. 風
12. 孤独を運ぶ鳥
・Twitter:https://twitter.com/UlulU_official?s=20&t=yOzXpVEaAQ2XVQEMge9DRg
・Instagram:https://www.instagram.com/ululutravel/?hl=ja