香取慎吾、先の見えない時代を音楽で照らす 本気の“遊び”から生まれる無限の可能性

 もちろん、そんな東京だからこそ受ける刺激もたくさんある。「Catharsis(feat. WONK)」では巻き込まれる価値観の渋滞さえも愛しいと歌い、「今夜最高ね」は楽しさに酔って汗だくになっても笑い合う。階段を駆け上がるように軽やかに奏でられるメロディにも、思わず体をスイングしたくなる。そうした眩しい時間があるからこそ、生きるのがこわくなる夜もあるという、綺麗事を抜きにしたリアルを歌う「ひとりきりのふたり(feat. ヒグチアイ)」へ。

 光が当たれば、影ができる。そのコントラストが激しいのが、東京という街なのかもしれない。だからこそ、エンタメがあり、アイドルが必要なのだ。香取自身も東京タワーにパワーをもらっているように。そして、多くのNAKAMAにとってそんな存在であり続けたいんだと訴えるように「シンゴペーション(feat. Gentle Forest Jazz Band)」が始まる。キラキラとして、心を弾ませてくれる時間。香取がジャズの魅力に触れるきっかけとなったミュージカル『オーシャンズ11』(2014年)を思い出させる「Mack the Knife」へと続くのも心地よい。

 
 
 
 
 
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 盛り上がる気持ちはそのままに、ゆっくりとその時間を楽しむ「Slow Jam」。そして誕生日パーティーに流す定番曲になってほしいとも語られた「Happy BBB (feat. 田島貴男(Original Love))」と、それぞれのシチュエーションが思い浮かぶ楽曲があるのも、余裕を感じさせる曲順だ。

 そして、美空ひばりの名曲をカバーした「東京タワー(feat. 新しい学校のリーダーズ)」で時代を超えたエンタメの力を再確認したところで、ステージの大団円を感じさせる「道しるべ」で着地する。先の見えない時代だからこそ、楽しい音楽で道を照らし続けるよと、歌ってくれるようだ。

 「ああ、いい時間を過ごすことができた」と、全11曲を聴き終えた後にはそんなショーを満喫したような気分にさせてくれる『東京SNG』。同時に、香取にとってアルバム制作は、自身がほしい曲を求める結果なのかもしれないと思った。インタビューで、日ごろ音楽を常に流し続けていると話していた香取(※1)。あの東京タワーを見上げずにはいられない夜に、こんな音楽があってくれたら。グラスを傾けたくなる夜に、じっくり楽しめるジャズがあったら。大事な人の誕生日を祝うときに、新しいバースデーソングがあってくれたら……。

 冒頭で紹介した香取の「こんな感じでやっていくんだな」という言葉を思い返すと、香取が音楽を求める限りその引き出しは無限に広がっていくのだろうと心が弾む。人が“遊ぶ”ことに飽きないように、パーフェクトビジネスアイドルが本気で“遊び”続けるとどうなるのか。その先に、まだ見ぬ新しい音楽たちが生まれていくのだと思うと、それだけで心が弾む。

 『東京SNG』のリリースに先駆けて、香取のYouTubeチャンネルでは『20200101』の収録曲「Trap」「FUTURE WORLD(feat.BiSH)」のMVも公開された。楽曲ごとにまるで油絵の具でキャンバスを塗り重ねていくように、全く違う顔を見せてくれる香取慎吾というソロアーティストの可能性を、より多くの人に知ってもらえたら嬉しい限りだ。

香取慎吾「Trap」Music Video
香取慎吾「FUTURE WORLD(feat.BiSH)」 Music Video

※1:https://realsound.jp/2022/04/post-1006913.html

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