香取慎吾、混沌とした時代に“アイドル”をする意義 「止まってしまうと思った時もあった」

香取慎吾、アイドルとしての矜持

 草なぎ剛、稲垣吾郎との新しい地図のほか、俳優・音楽・バラエティ・アート・ファッションと多岐にわたってソロ活動を展開する香取慎吾。芸能デビューしてから30年以上、これまで様々な挑戦を重ねてきた香取だが、活動の中心にあるのはファンの存在とアイドルとしての矜持だ。

 香取は、本インタビューで「アイドルをやめる理由がない」と語る。“アイドル”という肩書きは、それから受ける恩恵がある一方で「アイドルのイメージを払拭したい」といった発言を見かけることも少なくないが、香取曰く「アイドルほどずるいものはないし、すごく楽しいものはない」という。ジャズミュージックに接近した2ndアルバム『東京SNG』の発売を控える香取に、今アイドルとして活動、発信する意義について話を聞いた(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】

常に変わりたい、変化し続けたい

香取慎吾

ーー『東京SNG』でなぜジャズに接近したのか? というところからうかがいたいです。

香取慎吾(以下、香取):大前提として、常に変わりたい、変化し続けたい人みたいなんですよね、僕が。前作の『20200101』ではその時一番“今”の音を作る人たちとご一緒して、デジタルな感じが強かったので、まずはそこから新しい場所に踏み出したいなと思いました。で、次にどこに行こう? となる中で、周りのスタッフのアイデアとかも参考にしつつ、今回はジャズに挑戦することにしました。

ーージャズという大きなテーマがある中で、個々の楽曲にはかなり多様性がありますよね。アルバムを作るにあたって、設計図のようなものはあらかじめ見えていましたか? それとも、一つひとつの楽曲を作っていく中で徐々にアルバムとしての形ができていったのでしょうか。

香取:前作もそうだったんですけど、アルバムを作る時にはそれをどうやってステージでやるかが頭にあって、そのイメージを持って全体の構成を考えています。今回もリリース後に明治座でライブ(『香取慎吾 二〇二二年 四月特別公演 東京SNG』)をやるんですけど、そのステージを想像しながら「最初は『東京SNG』のスイングジャズがいいな」とか「終わりはやっぱり『道しるべ』かな」とか……。

ーーなるほど。アルバムの印象としてまさに「1つのショー」になっているように感じたので、その作り方を聞いて納得がいきました。

香取:ステージとしての全体像みたいなものは意識してます。ただ、楽曲の幅が広い分、いざ自分で歌うとなると結構切り替えも必要だなとは思っているんですけど……「シンゴペーション」と「Slow Jam」を同じテンションで歌うのもちょっと違うじゃないですか(笑)。

ーー確かに(笑)。そのくらいバラエティに富んでいる、とも言えますね。

香取:はい。そういう作品としての流れを楽しんでもらいたいので、曲と曲の間の長さ、たとえばちょっと突っ込んで次の曲が始まるとかまでこだわって決めています。配信だと調整が難しい部分もあるようなんですけど、アルバムを最初から最後まで通して聴いてもらうためにやれることは全部やっていますね。1曲でも飛ばしてほしくないというか、曲の並びによって本当は趣味じゃない曲も好きになってくれるんじゃないか、というようなことを考えて曲順を決めています。

ーー『東京SNG』はそんな曲順の妙を感じられる部分が多いと思います。「Catharsis (feat. WONK)」「今夜最高ね」で気持ちが高まった後に、「ひとりきりのふたり (feat. ヒグチアイ)」がスッと入ってくる流れだったり。

香取:そうですね。「ひとりきりのふたり」は、自分にとってすごく好きな曲になりました。

ーーアルバムの印象をより深みのあるものにしている曲ですね。

香取:もともとは「前作はスローな曲がなかったし、今回は明るい曲の間にしっとりした曲も置いておこう」くらいのつもりだったんですけど、そんな軽く扱えない好きな曲になっちゃったんですよね。メッセージがいい意味で強くなったので、どこに配置するかが難しかったですね。置き所を何度も変えたのはこの曲だけかも。

ーーそうなんですね。

香取:「この場所は違う」「ここに入れると次の曲に行けない」って何度も調整しました。最終的にはいいところに収まったかなと思ってます。

ーー作品全体としては「そうはいっても前向きに行こうぜ」というトーンが強い印象を受けましたが、「ひとりきりのふたり」の〈生きるのが怖いかい〉から始まる内省的な雰囲気は今の時代に染み入るメッセージだなと思いました。

香取:これまで香取慎吾としてあまり表に出していなかったことをこの曲に入れたかったんですよね。それによってもっとファンの皆さんと深くつながれるんじゃないかと思ったので。ヒグチアイさんはこの曲で初めてご一緒したんですけど、きっと彼女ならこの気持ちを音楽で浄化してくれるんじゃないかなって……実際そういう曲になってよかったです。

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